June 22, 2020 / 9:20 AM / a month ago

コラム:不透明感強まる日米の政治情勢、株式市場にも「濃霧」

[東京 22日 ロイター] - 日米のマーケットに「政局」という雲が広がり始め、不透明感が強くなりつつある。米国ではミネソタ州における黒人男性の死亡事件を機に、トランプ大統領の支持率鈍化が鮮明になり、一部では株価の上値を抑える要因として意識され出した。

6月22日、日米のマーケットに「政局」という雲が広がり始め、不透明感が強くなりつつある。写真は5月25日、安倍首相記者会見の中継を映す都内の街頭モニター(2020年 ロイター/Issei Kato)

日本では安倍晋三内閣が支持率低下の窮地を脱する切り札として、今秋に衆院を解散するとの観測が永田町で浮上してきた。東京市場では解散を織り込んだ動きは見えないものの、「解散なら株買い」のセオリーと新型コロナウイルスの第2波襲来リスクのどちらが優勢になるのか見極めが難しい情勢となっている。

<米株にトランプ劣勢の重し>

19日のNY市場で、ダウ.DJIは前日比208ドル安の2万5871ドルで引けた。コロナの感染再拡大への懸念が株価下落の要因と市場では指摘されていたが、実はもう1つ、重要な要素が影響していたという。それはトランプ米大統領の支持率が低迷し、先行するバイデン前米副大統領との差が開き出し、再選の可能性が低下しているとの観測だ。

直近のロイター/イプソスによる世論調査では、大統領選挙でのバイデン民主党候補への支持が48%、共和党のトランプ大統領は35%。13ポイントの差は今年の調査で最大だった。他の世論調査でも、バイデン氏のリードが広がる傾向となっている。

ミネソタ州で黒人男性が死亡した事件をきっかけに、人種差別反対の抗議運動が広がったが、トランプ大統領が冷淡に反応し、これまで共和党を支持してきた階層の一部が、民主党支持に変化しているという専門家の分析結果も出ている。

米市場関係者の間では、トランプ大統領の再選確率が低下していけば「企業利益優先」の政策が変更され、株式市場にはマイナスという見方がじわじわと広がっているという。ただ、11月の投票日まで時間があり、トランプ陣営が「十分に逆転できる」と述べている通り、バイデン当選と決め打ちして、株売り/債券買いに走る参加者はいない。

とは言え、トランプ劣勢の思惑が「梅雨空」のように雨雲が株式市場を覆い、米株の上値追いを鈍らせている。

実際、20日にオクラホマ州タルサで開いたトランプ大統領の選挙集会で空席が目立つ結果になったことは、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」のユーザーやKポップファンの間で、最初から出席しないつもりの申し込み手続きをする動きが広がったことが影響したとは言え、トランプ劣勢のイメージをマーケット参加者に一段と強めることになったとみられる。

22日からの米株式市場で、感染再拡大を理由にした株売りが目立つ場面が繰り返されるようなら、その背後には大統領選でのトランプ苦戦観測の広がりがあると見た方がいいだろう。

<解散風とコロナ再拡大リスク>

一方の東京市場では、米株の上値の重さを反映し、日本株もなかなか買い優勢にならないとの声が多いものの、その主な要因は「コロナ感染の再拡大」と割り切ってみている参加者が多い。11月の米大統領選を主要な材料にするのは「9月以降からではないか」(国内証券関係者)との声が典型的だ。

まして国内政局の「変化の予兆」をかぎ取って、材料視しようという市場の「猛者」は影をひそめてしまったようだ。だが、安倍晋三内閣の支持率低下による政権基盤の揺らぎは、これまでよりも目立ってきた。河井克行前法相と妻の案里参院議員の逮捕は、安倍首相と自民党本部が注力した案里参院議員の選挙における公職選挙法違反(買収)が容疑事実だけに、東京地検特捜部の捜査の行方次第では、さらに政権への打撃が大きくなりかねない状況となっている。

そこで浮上してきたのが、今年9月ごろの衆院解散説だ。窮地からの脱出を図るために衆院を解散するのは、首相が持っている最大の政治権力の行使だ。安倍首相に最も近い自民党の甘利明税制調査会長は18日、時事通信のインタビューで、今秋にも安倍首相が衆院解散・総選挙に踏み切る可能性があるとの見解を示した。

また、安倍首相自身も橋下徹・元大阪市長と20日夜にインターネット番組に出演し「今は解散は全く頭の片隅にもないが、政策を前に進めるために必要とあらば、ちゅうちょなく国民の声を聞きたい」と述べた。

解散から衆院選までは「株買い」というのが、株式市場ではセオリー化されている。政権と与党は衆院選勝利のために経済刺激策を選挙公約に掲げることが多く、先回りして買うという参加者が多くなるためだ。

今回も2020年度第2次補正予算に10兆円という巨額の予備費が盛り込まれており、仮に今秋の解散を決断した場合、10兆円を財源に再び国民に給付金を配るという選択も可能になる。

ただ、今のところ、東京市場で「解散風」に反応している参加者はほとんどいないようだ。感染拡大の第2波が8月から9月に襲来しないとは言えないし、日経平均.N225は2万2000円台を維持しているものの、4─6月期国内総生産(GDP)は前期比・年率マイナス20%台という大幅な減少を多くのエコノミストが予想。7月以降に急反転するという見通しは、世界の主要国の現状を見ると「超楽観的」と言われかねない。

経済が回復しないまま解散して、批判票が野党に流れれば、与党の議席減が避けられず、そのシナリオ実現の可能性が濃厚なケースでは、連立与党の公明党からも慎重論が出てくる可能性があるだろう。「変数が多くてとても、解散を材料として織り込めない」というのが、市場参加者の本音のようだ。

ただ、来年9月には安倍首相の自民党総裁の任期が終了し、10月には衆院議員の4年間の任期も満了となる。1976年12月に三木武夫首相は任期満了で衆院選を行ったが、単独過半数割れの惨敗を喫した。「追い込まれ選挙」は与党に不利との記憶が、永田町に刻み込まれることになった。

共同通信によると、菅義偉官房長官は22日の記者会見で、与野党幹部から衆院解散に関する発言が相次ぐ中、通常国会が17日に閉会した後に解散の雰囲気を感じるかどうかを問われ「全く感じない」と述べた。

今後、日本でも「政局動向」が市場の波乱要因になる可能性がある。大手の銀行・証券各社が永田町情報をキャッチしようと「奮闘」した過去がよみがえるのかどうか。不透明な政治情勢が市場のかく乱要因になるかもしれない。

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編集:内田慎一

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