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コラム

コラム:バイデン景気対策は個人重視、「小出し」の日本は低迷長期化も

[東京 15日 ロイター] - バイデン米次期大統領が総額1兆9000億ドル(約197兆1600億円)の経済対策の概要を公表した。新型コロナウイルスの感染拡大による米経済への打撃を軽減するため、個人に直接給付する政策を重視しているのが特徴だ。一方、足元で感染者が急増している日本では、昨年から継続された給付政策が多く、「小出し」のイメージが拭えない。

 バイデン米次期大統領が総額1兆9000億ドル(約197兆1600億円)の経済対策の概要を公表した。写真はデラウェア州ウィルミントンで8日撮影(2021年 ロイター/Kevin Lamarque)

コロナワクチンの接種でも米国に後れを取っている日本が、個人の所得支援でも「後手」に回り続ければ、マイナス成長が予想される2021年1─3月期だけでなく、4─6月期以降も個人消費の落ち込みを大きな要因として、景気浮揚が実現できない可能性が出てきたのではないか。

<米対策は家計向けに1兆ドル>

今回のバイデン景気対策では、約1兆ドル(約103兆7700億円)が家計支援に振り向けられる。具体的には、1)2020年12月に決まった1人当たり2000ドルの現金給付に1400ドルが追加される、2)失業給付の上乗せ額を週300ドルから400ドルに引き上げ、この特例措置を今年9月まで延長、3)家賃や光熱費の補助に300億ドルを充当──などとなっている。

GDPの約7割を占める個人消費の腰折れを防ぎ、景気の「二番底」落ち込みの回避を最優先にした「政治的決断」がうかがえる。バイデン氏は、この対策を迅速に実行しなければ「将来に大きな代償を払うことになる」と、14日のスピーチで述べた。

一方、日本では昨年12月に2020年度第3次補正予算案と2021年度予算案が編成されたが、12月末の東京などでの爆発的な感染拡大の前だったため、基本的にコロナ感染が次第に収束し、それに合わせて経済をどのように拡大させて行くかという点に主眼が置かれた。結果として、感染の急拡大で打撃を受ける個人への直接的な給付などの優先順位は低い。

政府は再度の緊急事態宣言の発令を決めた7日、営業時間短縮に協力する飲食店に対し、1日当たり6万円を支給することにし、それまでよりも2万円引き上げた。また、新たにコロナ患者用に病床を増やした病院には、1病床当たり450万円を支給することも決めた。

ただ、目玉になるような新たな給付は、この2つの案件以外にはほとんど見当たらず、個人向けの給付は昨年のコロナ対策で決まった項目の継続が並ぶ。持続化給付金と家賃支援給付金に関しては、申請書類の提出期限が今月15日となっており、野党などから延長の要求が出ていた。経産省は14日になって期限を2月15日まで1カ月間延長すると発表。時短で経営が悪化した飲食店などに門戸を開け続けることにした。

<飲食店アルバイトから悲鳴>

また、緊急事態宣言の対象地域を中心に午後8時までの時短を飲食店に要請した結果、多くの店でアルバイト・パートとして雇用されていた人々が解雇や賃金カットに直面。著名なラーメンチェーンのアルバイト従業員が、時短で支払われなくなった分を休業手当として支払うように求めるケースも出てきた。

西村康稔経済再生相は15日の閣議後会見で、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金では、パートやアルバイトも対象になっていると表明。賃金の8割、月額最大33万円を支援する既存のスキーム活用が可能との立場を説明した。ただ、現実に飲食店の雇用現場で、この説明がどこまで理解されているのかは不明で、政府の対応が「後手」に回っている印象を結果的に深めてしまった。

このように日本の支援策では、企業を経由して個人に支払われる「立て付け」の給付金が多く、米欧のように個人に直接給付される一時金はあまりない。米国の1兆ドル規模の家計支援策と比較すると、仮に緊急事態宣言が2月7日で終了しない場合、セーフティーネットのない「空中ブランコ」と同じような危うさをはらむと言っていいだろう。

<日本に迫る二番底の長期化懸念>

ただ、米国経済にも懸念は残る。1.9兆ドルの財源として大量の米国債が新規に発行され、市場がどのように反応するかだ。緩やかなテンポで米長期金利が1.3%程度までの上昇で収まればよいが、1.1%台から1.5%へと急激に上がり出すと、絶好調の米国株式に冷水を浴びせることになると予想する。鍵は米長期金利の動向が握ると言えるだろう。

一方、日本では緊急事態宣言の長期化で国内経済が非製造業を中心に冷え込み、好調さを取り戻しつつある輸出系の製造業のプラス分を飲み込み、「二番底」の継続という展開がワーストシナリオだろう。

先のバイデン氏の言葉を借りれば、追加的な個人や家計向けの大規模支援策を今見送ると「将来に大きな代償を払うことになる」のではないか。21年度予算案の組み替えも視野に、野党に言われる前に個人をターゲットにした大胆な刺激策を菅義偉首相は決断するべきだと主張したい。

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編集:青山敦子

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