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コラム

コラム:ドル高円安の裏に日米成長力格差、潮目に変化も

[東京 5日 ロイター] - 年初はドル安観測の強かったドル/円が、105円半ばと3カ月半ぶりのドル高水準で推移している。ドルの全面的な押し上げには様々な要因が絡み合っているが、端的に言えば米経済の成長力に対する市場の信認が高まった結果と言えるだろう。対円では日米間の成長力格差が強く意識されており、当面はドル高/円安がジリジリと進みそうだ。

 2月5日、年初はドル安観測の強かったドル/円が、105円半ばと3カ月半ぶりのドル高水準で推移している。ドルの全面的な押し上げには様々な要因が絡み合っているが、端的に言えば米経済の成長力に対する市場の信認が高まった結果と言えるだろう。2017年6月撮影(2021年 ロイター/Thomas White)

<米経済支える対策とワクチン>

5日朝の取引でドル/円は105.70円と3カ月半ぶりのドル高水準を記録した。105.59円付近にあった200日移動平均線を突破し、チャート上はドルの上値を強く抑える抵抗線が見えなくなり、ドル高地合いの長期化を意識する声も出始めた。

ドル高の背景にあるのは、バイデン米大統領が打ち出した1兆9000億ドルの経済対策の効果に対する期待感だ。ホワイトハウスと民主党が財政調整措置(リコンシリエーション)という手法を使い、米上院で単純過半数を得れば通過させる決断を行ったことが大きいだろう。同措置を使った手続きでは、実施できない項目も出てくるが、共和党の反対による「廃案」は免れる。

国際通貨基金(IMF)の見通しでは、米国の成長率は2020年のマイナス3.4%から21年にはプラス5.1%へとV字回復する。8.5ポイントの回復は、中国の5.8ポイントも上回る主要国・地域で最大の上昇幅となる。

遅れていた米国での新型コロナウイルスワクチン接種も、米疾病対策センター(CDC)によると、バイデン大統領の就任100日目までに1億回の接種を行うという目標は達成可能というところまできた。

コロナ禍経済の最大の弱点であった「接触型ビジネス」の落ち込みが、ワクチン普及とともに回復基調をたどれば、先行して拡大している半導体ビジネスや自動車、その他の製造業とともに、米経済のV字回復は「夢物語」でなくなるという「強気派」のムードが、マーケットで力を得てきたと言える。

<明るい期待が変えた市場センチメント>

昨年後半から今年初までは、コロナの感染拡大による低成長懸念が米市場を覆い、米財政赤字の拡大予測とリンクして「米経常赤字の膨張とドル安」というシナリオが、多くの市場関係者の「支持」を受けていたと言える。コロナ禍による経済下押しを回避するための財政大盤振る舞いは回避できないものの、残された財政赤字が米経済にのしかかるというイメージだ。

このマインドが今、大きく転換しようとしているのではないか。米経済が回復するのであれば、緩やかな米長期金利の上昇と米株高が同時に進行しても何ら問題ないし、その結果としてのドル高は許容されるというのが、NY市場などで多数を占める市場心理ではないかと指摘したい。

したがって東京市場で比較的多かったと思われる「ドル安予想」の反射的効果としての円高は進まず、ドル高/円安が想定を超えて進み出したと考える。

ドル/円の場合、米国と対照的に日本経済の弱々しい歩みとワクチン接種プロジェクトの脆弱さが相まって、日米間の成長力格差が鮮明になっていることが特徴だ。

日本政府は1月7日、2回目の緊急事態宣言の発令に追い込まれ、民間エコノミストの間では、2021年1─3月期の実質国内総生産(GDP)伸び率はマイナスに転落するとの予想が多くなっている。

もし、3月7日まで延長された緊急事態宣言が再延長となった場合、これまで持ちこたえてきた飲食店や関連する事業者、観光・宿泊分野のビジネスで倒産や廃業が相次ぐリスクも浮上しかねない。

ポストコロナを前提に編成された日本の2021年度予算案の衆院での審議はこれから本格化するが、バイデン政権の1兆9000億ドルの対策と比較すれば、個人への直接給付などで相当に見劣りする。このため日米間の経済格差は、季節が進むほどに拡大していく公算が大きいと予想する。ドル高/円安は、ゆっくりとしたペースながら進行するのではないか。

<リスクはインフレ懸念と米長期金利の急上昇>

ただ、現在の米株高・米長期金利上昇・ドル高の進行にも「アキレス腱」が存在する。それがインフレリスクの予想外の高まりを背景にした米長期金利の急上昇と米株の大幅反落、ドル安の進行という現象だ。

例えば、米国での順調なワクチン接種を反映した「接触型ビジネス」の急回復が現実化した場合、需要が急反発する一方で、コロナ禍で制約を受けた供給サイドの制約が解消されず、想定外の物価上昇を経験する可能性がある。

足元でも、世界的なコンテナの不足が発生。当初の短期間での解消観測は後退し、コンテナ不足の長期化とコスト上昇を価格に転嫁する動きも出てきた。非鉄金属や一部の農産物など商品価格の上昇も見られ、1970年代のインフレを経験した世代からは「インフレの前兆か」といった懸念もささやかれ出した。

他方、生まれてからインフレ現象を見たことがない世代が多数を占めるディーリングルームでは、インフレを懸念する声は少数派となっているようだ。ただ、市場には「先を早く読みたい」というDNAが埋め込まれており、現実に米国の消費者物価指数が2%へ向けて上がり出すと、久しぶりに「インフレ懸念」が見出しになっていないとも限らない。そこで、米長期金利が急上昇して1.5%を突破するようになれば、米株の急落は不可避だろう。

2021年のマクロ経済と市場動向は、大きく振れるリスクが内蔵されていると予想する。

●背景となるニュース 

・ 〔マーケットアイ〕外為:正午のドルは105円半ば、3カ月半ぶり高値圏で上昇一服

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編集:石田仁志

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