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コラム

コラム:コロナ第4波本格化なら景気二番底も、PCRパスポートで活路

[東京 1日 ロイター] - 政府が新型コロナウイルスの感染拡大抑止に手を焼いている。緊急事態宣言の解除から1カ月でまん延防止等重点措置(まん防)の発令に直面した大阪府のように、飲食店への営業時間短縮要請だけでは感染の波を抑え込むのが困難なことが明白になった。この拡大傾向が全国に波及し、感染拡大の第4波が本格的に到来すれば、サービス産業の雇用悪化をトリガーに日本経済が「二番底」に落ち込みかねない。

 4月1日、政府が新型コロナウイルスの感染拡大抑止に手を焼いている。都内の公園で3月31日撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

コロナワクチンの接種ペースが上がらない中で、日本経済が危機に落ち込まない切り札は、PCR検査の大幅拡大とそれに連動した「PCRパスポート」の創設だ。PCR陰性の人々の制限を大幅に緩和し、対面型産業の落ち込みを回避するべきだ。今のままの飲食店時短を軸にした対策では、今年後半になって主要7カ国(G7)の中で日本の非製造業だけが落ち込みを続けていることになりかねない。

<大阪の誤算>

政府にとって、大阪府が3月1日に緊急事態宣言を解除してから1カ月でまん防発令に至ったことは「予想外」だったのではないか。感染者の減少傾向を見つつ、どこかの時点で「GoTo」イベントを復活させ、観光や飲食などの分野を立て直すという目論見は完全に狂ってしまった。

菅義偉首相がリーダーシップを発揮して23日に決定した飲食・宿泊事業者などを念頭に置いた金融支援などの対策では、政府系金融機関の日本政策投資銀行や商工中金が単独で事業者に融資できるように規制を撤廃したり、劣後ローンの金利や優先株の配当水準を引き下げることなどを決定。資金繰りに窮した関係企業にとっては「干天の慈雨」になるはずだった。

しかし、1日当たりのコロナ感染者が全国で2800人を超える拡大となり、まん防発令に至った現在、多くの感染症専門家は「第4波」の到来と分析している。もし、まん防発令の対象が拡大し、さらに3回目の緊急事態宣言の発令に直面すれば、対面型ビジネスを中心にした日本の非製造業は、経営が悪化する企業が連鎖的に増加する公算が大きい。この分野は多くの雇用を抱えている産業でもあり、一段と雇用環境が悪化しかねない。

日銀が1日に発表した3月短観では、大企業製造業の業況判断ⅮIがプラス5と2019年9月以来の水準に回復。非製造業もマイナス1と前回から4ポイント改善した。しかし、コロナの第4波が本格的に到来し、大型連休のころに感染者が急増する事態になれば、非製造業は再びⅮIが悪化するリスクがある。

<東京都の陽性率1.3%の衝撃>

感染者増━行動規制の強化━感染者減━規制の緩和━感染者増というサイクルを昨年春から繰り返してきたように思えてならない。社会的距離の保持やマスク着用、飲食店の時短という既存の「対策」では、感染の波の繰り返しを抑止することはできないのではないか。

筆者がその思いを強くしたのが、3月30日に厚生労働省が発表した新型コロナウイルスの抗体検査の結果を見てからだった。5都府県で昨年12月に検査したが、東京都では陽性率が1.35%だった。約1400万人の東京都の人口から換算すると、約18万人の陽性者がいたと推計できる。同時期の東京都での陽性者の数は約5万人だったので、実際の陽性者は3.6倍の規模で存在していたことになる。

この捕捉されていない陽性者の存在を把握しないまま、飲食店の時短やマスク着用などで対応しても、抜本的な解決にはつながらず、ワクチンの普及までは流行の波が繰り返し到来する。正常な経済活動に戻れないまま、輸出依存の「一本足打法」を続けていると、日本経済の疲弊がさらに進み、内需が決定的な打撃を受ける事態を招くことになりかねない。

<PCRパスポートに経済的効果>

そこで、ヒントになるのが日本航空(JAL)が導入した国内線を利用するJALマイレージバンク日本地区会員を対象に、2000円でPCR検査が受けられるサービスの提供だ。PCR陰性者は安心して搭乗できるというところが注目点だろう。

これを日本経済全体に応用し、PCR検査を安価で受けられるように国が支援。陰性者に証明書を出して、国内なら安心してどこにでも行けるシステムを構築すれば、移動制限をかける必要はなくなる。

また、陰性証明をデジタル化し、店頭にあるチェッカーで確認できるようにすれば、飲食店への一律の時短要請なしに「安全」な店の営業が可能になる。つまり希望する国民全てにPCR検査を受けることができるような体制を整備し、そのデータを電子化するシステムを構築すれば「PCRパスポート」システムは稼働可能になる。

実現には多くのハードルが存在するだろう。しかし、ゴールの見えない「忍耐」を国民に強いて「厭戦(えんせん)気分」がまん延し、挙げ句に景気後退で失業者が増大するよりは、新しい方策にトライする方が格段に有効な政策対応であると指摘したい。

困難なハードルがあれば、それを克服していくリーダーシップを発揮していくのが一国のリーダーと言える。まん防発令から緊急事態宣言の再々発令へと行かないうちに、菅首相には新しい対応策にチャレンジしてほしい。

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編集:山川薫

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