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コラム

コラム:菅氏退陣表明で株高、新政権に成長回復政策不在なら長期停滞も

[東京 3日 ロイター] - 突然の菅義偉首相による事実上の退陣表明が、マーケット参加者にとっては「株買い材料」に映ったようだ。この後に控える自民党総裁選と衆院選の投票日まで、日経平均は新政権と大規模な経済対策への期待感から上昇する可能性が高いだろう。

9月3日、 突然の菅義偉首相(写真)による事実上の退陣表明が、マーケット参加者にとっては「株買い材料」に映ったようだ。首相官邸で代表撮影(2021年 ロイター)

だが、米欧と比べて見劣りする経済成長力を復元する政策が打ち出され、長期停滞トレンドを大きく変えるような政治力が発揮されないのであれば、誰が次の首相になっても長期閉塞から脱却できないだろう。成長力の回復へ何をするのか。自民党総裁選と衆院選では、その政策の競い合いを期待したい。

<新総裁期待で株買い>

菅首相が3日午前の自民党臨時役員会で同党総裁選に立候補しないことを表明。事実上、退陣することが決まった。

菅首相は8月22日の横浜市長選で自身が推していた小此木八郎候補(前国家公安委員長)が大差で敗北したあたりから、強い逆風を感じていたのではないか。いくつかの世論調査では、内閣支持率が20%台に低下し、自民党内からは菅首相の下での衆院選は敗北濃厚との声が出ていた。

そうしたムードをマーケットは敏感に感じ取り、8月20日に日経平均は2万7000円台を割り込んでいた。ところが、8月31日夜に菅首相に解散の可能性が国内メディアで報じられると、9月1日からは大幅上昇となった。

「解散・総選挙は株買い」という過去のデータが有力な材料だったが、「買い方」にも不安があったはずだ。不人気な菅首相による衆院選で自民党が大敗すれば、「もしや」と思いつつも政権を野党に引き渡す「下野」のリスクシナリオがあったからだ。

それが、菅氏の表明で新総裁による総選挙となったわけで、3日の大幅上昇は「もやもやしたムードが払しょくされた結果」(国内証券)という声の集積だろう。

<党員票の比重重いフルスペックの総裁選>

さて、ここからは新総裁が誰になるかが当面の注目点になる。すでに出馬表明している岸田文雄元政調会長が一歩リードとの見方もあるが、石破茂元幹事長、ワクチン接種を担当する河野太郎規制改革相らが立候補すれば、激戦になる可能性もある。

今回の総裁選は、議員票383票と同数が党員票にも割り当てられる「フルスペック」方式で行われる。党員票のウエートが大きいだけに、世論調査で高い人気を得てきた石破、河野両氏が出馬すれば勝利する可能性がある。

また、衆院選が間近に迫っているだけに、自身の選挙に有利な候補に投票しようという議員心理が働き、無記名投票であることも手伝って派閥の締め付けが効かなくなることも予想される。

<岸田総裁なら日経3万円台の声>

こうした中で、マーケットは誰を最も評価しいるのだろうか。筆者は、財政出動に積極的な姿勢を示した岸田氏が新総裁に当選した場合、市場は最も強く反応すると予想している。

岸田氏の派閥「宏池会」を創設した池田勇人元首相が実行した「所得倍増計画」を念頭に「令和版所得倍増」を打ち出し、経済対策の規模も30兆円台になるのではないかとみられている。市場の一部では、岸田総裁なら日経平均は3万円台に乗せるとの「トーク」も出ているようだ。

一方、石破氏や河野氏は人気が先行しているものの、経済政策に関して具体的な案を語ってはいない。特に石破氏は、アベノミクスに批判的なトーンで意見を述べていた時期もあり、金融政策に関する政策スタンスに「懸念」を持つ市場参加者もいるようだ。

<衆院選はコロナ感染動向が左右>

とはいえ、総裁選の後にはすぐ衆院選が控える。ここで自民・公明の与党が大幅に議席を減らせば、再び、政局が不安定になりかねず、不透明感が強まる展開も予想される。

衆院選の動向を握るのは、新型コロナの感染状況だと筆者は予想している。投開票日として有力視されている10月17日に感染減少の傾向が定着していれば、与党の議席が減少したとしても、足元でうわさされている60議席─100議席の大幅減少は避けられる可能性が高まるのではないか。

一方、デルタ株だけでなく他の変異株も広がり出して、感染者数や重症数が高止まりするようなら、与党に不利・野党に有利な選挙戦になっていることが予想される。自公両党が過半数を割り込む選挙結果のケースでは、株価は投開票日の翌日・月曜日に大幅反落しているかもしれない。

<貧困化止める政策必要>

短期的には以上のような展開が予想できるものの、長期的に日本経済の直面している「欠陥」や「課題」は広範囲に及んでいる。少子・高齢化による生産年齢人口の減少、DX(デジタルトランスフォーメーション)の立ち遅れ、ワクチン開発も含めた研究・開発力の貧弱さ、国際競争力のある産業の先細り─など、一刻も早く手を付けるべき項目が山積している。その結果、ドルベースでの1人当たり国民所得は世界で20番目近辺まで低下し、貧困化を止めることが喫緊の課題になっている。

岸田氏も含めた自民党総裁選の候補者が、こうした点に対して具体的な政策を提示しないのであれば、数十兆円規模の経済対策を実行に移しても、国債残高をかさ上げするだけに終わってしまうことになりかねない。

経済政策で具体性が乏しいと批判されがちな野党も、日本経済を復活させる政策を出して、与党と政策で競ってほしい。「成長なき国債累増」を続けている時間は残されていないことを真剣に自覚すべきだ。

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