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コラム

コラム:20兆円超の巨額補正と日銀YCC、株価と物価押し上げは可能か

[東京 24日 ロイター] - 24日の日本株上昇をみると、内外の投資家は中国恒大集団のリスクよりも自民党総裁選・衆院選と続く政治イベントへの期待が大きいということが分かる。ただ、衆院選直後に反落するか続伸するかは、その後に控える2021年度補正予算案の編成とその効果に対する期待値によって変動するとみる。

 9月24日の日本株上昇をみると、内外の投資家は中国恒大集団のリスクよりも自民党総裁選・衆院選と続く政治イベントへの期待が大きいということが分かる。都内で8月撮影(2021年 ロイター/Ivan Alvarado)

20兆円から30兆円とみられる補正予算の効果が「副反応」なしに出るには、長期金利の上昇抑制が不可欠の要素になるが、そこは日銀がイールドカーブコントロール政策(YCC)によって長期金利をゼロ%に抑制するため、市場から国債を大量に購入することで達成可能だ。とすれば、主要7カ国(G7)の中で最も低い成長率とゼロ%近辺で推移する消費者物価(CPI)を押し上げることは可能なのか──。筆者は、厚い氷にひびが入るように変化が生じるとみている。

<日本株、恒大危機より政治イベント期待>

24日の日経平均は、恒大債務危機への懸念が後退して一時、前日比600円を超える上昇となって3万0200円台を回復した。背景には、今月29日の自民党総裁選や11月とみられている衆院選を前に「選挙前は株高」というこれまでのパターンを熟知した参加者の買い戻しがある。

特に海外勢が日本株パッシングから買いに転じたのは、米連邦準備理事会(FRB)が米連邦公開市場委員会(FOMC)で示した情報によって今年11月にテーパリング(量的緩和の段階的縮小)を決めるとの観測が高まって、短期的には日本株投資が有利と判断したためとみられている。言い換えれば、日本株が余剰マネーの「受け皿」になっている。

<期待の継続、巨額補正の編成次第>

ただ、これだけでは11月7日ないし14日が有力視されている衆院選が終了すれば、利益確定売りがまとまって出て、反落する可能性が高まる。だが、一部の海外投資家などが注目するのはその先だ。巨額補正予算案の編成と執行が、衆院選後に控えており、それを見込めば「日経平均は3万2000円台までの上昇は見込める」(国内証券関係者)という強気の声も、少数派ではなくなりつつある。

内閣府の試算によると、2021年4─6月期はGDPベースで供給が需要を4.0%上回る。実額ベースで需要不足は約22兆円。

総裁選に立候補している河野太郎行革担当相は、この22兆円の需給ギャップは問題と指摘。岸田文雄前政調会長は総裁選告示前の段階で、大規模な補正予算の必要性に言及し、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行も積極的な財政出動に何回も触れており、だれが当選しても大規模な補正予算が組まれる公算が大きい。

最終的な予算規模は流動的だが、20兆円台の規模になる可能性がかなりあり、財源は赤字国債発行で対応されることも確実だ。

<YCC、財政拡張と低金利両立のキー>

もし、長期金利が上昇するようなら、20兆円の財政資金活用の効果が大幅に減殺されることになる。実際、数兆円単位で累次に国債が発行されれば、長期金利が急上昇するのは避けられない。しかし、日銀が採用しているYCCの下では、金利が上がり出せば、日銀が購入量を増やすので圧力は低下する。購入量は無制限になっているので、日銀に立ち向かう市場参加者は出てこない──と予想される。

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための各種規制で、対面型サービスを中心に一部の大企業から中小・零細企業まで財務状況の悪化に直面しているところも少なくない。公的なサポートが必須の状況で、YCCは金利上昇という「副反応」なしに財政を拡張できる手段と言える。

<合理的支出増、GDP押し上げへ>

この大型補正が成立し執行されると、経済成長率は上がり、つれて物価は上昇し出すのだろうか。20年度の1─3次補正予算のように未執行部分が兆円単位で残るようでは十分な効果は期待できない。まず、執行が確実にできる分野を見定めることが必要だ。

その上で生産性向上に不可欠なDX(デジタルトランスフォーメーション)関連の設備投資を誘発できる支援に重点配分することが欠かせない。

また、所得水準が低い階層への直接給付によって、消費を下支えする効果を導きだすべきだ。

こうした刺激効果を組み合わせれば、コロナ規制による需要抑制で積み上がった貯蓄(日銀は約20兆円の強制貯蓄と試算)が、物やサービスの消費に使われ出す動きを見せ、それを財政支出が後押しすると期待される。

経済協力開発機構(OECD)の世界経済見通しによると、21年、22年とも日本は2.5%、2.1%とG7の中で最低水準に甘んじている。これを3%方向に引き上げるのは、巨額補正の執行と新首相の強いリーダーシップによるメッセージ効果で不可能ではなくなると考える。

<需要増確認なら、企業の値上げも>

最後に残るのは、難問の物価だが、消費に回復力が出てきたと企業経営者が感じれば、小売価格を引き上げる展開も予想される。なぜなら、国際的な商品価格の上昇で国内企業はどこも大幅なコスト増に直面し、その吸収や転嫁に頭を痛めているからだ。

牛丼チェーン「松屋」が28日午後2時から牛めし並盛を320円から380円に値上げするのは、典型的なパターンの1つではないか。

受取額が増えない年金生活者にとって、CPIの上昇は「節約」を強いる要因になるが、富裕層が強制貯蓄の一部を消費に回し、財政資金の市中流入の効果も加わって消費が上向きになれば、CPIがプラス1%方向への上昇を始める可能性は、相応にあると筆者は指摘したい。

ただ、それが持続性を持ちうるのかどうかは、中長期的な日本経済の成長力アップの行方にかかっている。

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