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コラム

コラム:中国・欧州経済に暗雲、日本の輸出に「80兆円の壁」

[東京 15日 ロイター] - 日本経済のけん引役である輸出の先行きに不透明感が漂い出した。欧州で新型コロナウイルスの感染拡大が顕著になり、数カ月先の景気スローダウンが確実視されているほか、日本にとって最大の貿易相手国である中国経済も、資源高・コロナ感染・不動産関連の混乱などで調整局面を脱し切れていない。このままでは年間輸出額がこの20年間で3回しか突破していない「80兆円の壁」を超えることは難しそうだ。

 11月15日、日本経済のけん引役である輸出の先行きに不透明感が漂い出した。欧州で新型コロナウイルスの感染拡大が顕著になり、数カ月先の景気スローダウンが確実視されているほか、日本にとって最大の貿易相手国である中国経済も、資源高・コロナ感染・不動産関連の混乱などで調整局面を脱し切れていない。写真は北京で6日撮影(2021年 ロイター/Thomas Peter)

15日午前に発表された2021年7─9月期の国内総生産(GDP)の中で、財貨・サービス輸出は前期比マイナス2.1%と大きく落ち込んだ。世界的な半導体不足による自動車の生産・輸出減少の幅が大きく、その影響が直撃したとみられている。

ただ、直近の輸出データをみると、中国向けと欧州向けが全体の伸び率を下回っている。9月の輸出額は6兆8409億円と前年比13.0%の伸びだった。だが、中国向けは同10.3%増と全体の伸びを下回り、ドイツやフランスなど西欧10カ国向けは同1.8%増にとどまった。

<中国にのしかかる不動産減速とコロナ規制>

中国は、今年7─9月期のGDP伸び率が前年比4.9%増と今年1─3月期の同18.3%と比べると、大幅な「減速感」に見舞われている。15日に発表された10月鉱工業生産が、前年同月比プラス3.5%と前月の3.1%から加速し、10月小売売上高はプラス4.9%と9月の同4.4%から加速した。とは言え、今年初めの伸び率と比べればⅤ字回復には程遠く、調整局面から脱し切れていない。

そのことを端的に示すのが、新築住宅価格の動向だ。中国国家統計局が15日発表したデータに基づきロイターが算出した10月の主要70都市の新築住宅平均価格は、前月比0.2%下落。2015年2月以降で最大の落ち込みとなった。

また、北京市は、陸路の通関手続所がある国境地域を最近訪れた人は首都への往来を避けるよう勧告した。中国では1カ月にわたり新型コロナウイルス感染拡大が続いており、中国当局は海外からのウイルス流入を懸念。症状が確認された国内感染者は1200人を超えている。

コマツの小川啓之社長は15日朝のテレビ東京の番組に出演し、同社の建機の稼働状況を見ると、中国だけが世界の他の地域と比べて稼働状況が低いとの見解を示していた。この点も中国経済の需要が供給能力に比べて弱いことを示していると解釈できる。

筆者は、足元でのコロナ感染拡大の兆しや中国不動産開発大手、中国恒大集団の不良債権問題に端を発した中国における過剰債務問題の表面化が、中国経済の成長力をじわじわと「浸食」していくと予想する。日本からの対中輸出が勢いを回復するのは年明け以降、かなり時間が経過してからではないとみている。

<欧州でコロナ猛威の兆し>

一方、欧州ではコロナ感染が再び、猛威をふるいだしている。ロイターの集計によると、欧州は、世界の新規感染者の7日平均の半分強、死者数の約半数を占めている。ドイツで11日報告された新型コロナウイルスの新規感染者は5万0196人と、4日連続で過去最多を更新した。

感染者の急増は、ロックダウン(都市封鎖)のリスクを高めるだけでなく、日常生活やビジネスへの参加者を減らし、企業活動や消費動向に大きな影響を与え出すだろう。クリスマスを含めた年末・年始の欧州経済がスローダウンするには避けられないと言える。

また、欧州と中国は経済的な依存度が高く、両地域の経済減速は互いに悪影響を与えあい、スパイラル的に景気が下降するリスクもはらむ。

<低成長脱出へ何が必要か>

こうした中で、日本からの輸出は相応の影響を受けるだろう。さらに世界的な半導体不足の影響については、トヨタなどが12月から生産を増やす計画だが、製造業全体が半導体不足の打撃から立ち直るのは、来年1─3月期には難しく、4─6月期以降になるとの専門家の見通しもある。

日本の輸出は過去30年間、80兆円を超えたのは2007年の83.9兆円、08年の81.0兆円、18年の81.4兆円の3回しかない。今年1─6月期は前年比プラス23.2%と大きく伸びたものの39.8兆円であり、80兆円突破は微妙だ。今の日本の輸出産業にとって、80兆円という水準は「大きな壁」として立ちはだかっている。

11月に入って旅行や外食など国内の対面型サービスが、ようやく回復の動きを鮮明に見せ始めたが、果たして「リベンジ消費」と呼べるほど急回復できるのかどうかは不透明感が強い。

これまで述べたように、輸出型産業に加速感が見込めないのであれば、国内需要が底を打ったとしても、日本経済の低成長から脱却は、かなり難しそうだ。一部で財政出動規模が40兆円台に乗せると言われている政府の経済対策が、成長力のかさ上げにつながらないのであれば、将来の債務返済がさらに困難になりかねない。岸田文雄首相には、国民に対する明確な説明責任が課せられている。

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