October 24, 2014 / 3:32 AM / 5 years ago

コラム:FRB議長が格差拡大を警告、利上げシナリオに修正も

[東京 24日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長が、米国で進行している所得格差に強い警鐘を鳴らしている。その背後には、格差拡大が中間層を没落させ、米経済の活力を奪うとの分析がありそうだ。短期的には賃金上昇を阻み、米利上げを先送りさせる作用として働くだろう。

 10月24日、米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長が、米国で進行している所得格差に強い警鐘を鳴らしている。その背後には、格差拡大が中間層を没落させ、米経済の活力を奪うとの分析がありそうだ。9月撮影(2014年 ロイター/Gary Cameron)

米利上げとドル高を前提にしたシナリオは、大幅な修正を迫られる可能性がある。

<格差拡大は賃金上昇頭打ちに波及>

イエレン議長は今月17日の講演で、所得や富の格差拡大について、非常に憂慮しているとの見解を示した。

具体的には過去数十年にわたって「富裕層の所得や富が著しく増大する一方、大半の所得層では生活水準が低迷している状態と言える。このことは明白だ」「米国民が伝統的に重きを置いてきた機会の均等に照らして、どうなのかと問うことが適切だ」と述べた。

FRBが9月に公表した調査によると、米国の所得格差は金融危機で拡大し、富は上位3%の富裕者に集中しているという。

イエレン議長は、ここまでしか具体的に指摘しなかったが、上位数パーセントの富裕者がより金持ちになるということは、20世紀以降の米国繁栄の原動力だった「中間層」が没落の道を歩んでいるということでもある。

分厚い中間層が、米経済や社会の活力の源泉だった。だが、エンジンが止まりかけている。イエレン議長は、その点にも言及し、最近の米国では起業が難しくなっており、実際にビジネスに参入しても、大半は数年で撤退を余儀なくされているとも指摘。こうした点が、米経済での成功を難しくさせている面があるとの見方を示した。

格差の拡大は、最近の賃金上昇伸び悩みにも、影響していると指摘したい。米労働省が発表している賃金は、このところ失業率が低下しているにもかかわらず、横ばい傾向を鮮明にしている。

かつてのように中間層が健在であれば、失業率の低下とともに時間当たり賃金が上がり出し、個人消費の目立った増加へとつながっていったはずだ。

言い換えれば、格差の拡大と中間層のやせ細りが、米金融政策にも大きな影を落としているということだろう。

<FRB高官から相次ぐハト派的発言>

実際、米サンフランシスコ地区連銀のウイリアムズ総裁は14日、インフレがFRBの予想を著しく下回るようなら、新たな資産買い入れの可能性も排除しないと、QE4を連想させる発言を行った。

米シカゴ地区連銀のエバンズ総裁は13日、2016年初旬まで利上げするべきではないと発言。米セントルイス地区連銀のブラード総裁は16日、インフレ期待の低下を踏まえ、資産買い入れ(QE)縮小停止の可能性に言及した。

いずれの発言も、過去に経験してきた景気回復局面における物価の上昇テンポと、直近の米国の状況にかい離がある点に注目。インフレ率やインフレ期待の低迷が継続するなら、急いで利上げせず、QE縮小も決められた通りに進めると決めつけるべきでないとの見解だ。

これらFRB高官の発言と、冒頭で紹介したイエレン議長の「格差警戒」の発言は、つながっていると見るべきだ。

FEDウオッチに定評のあるエコノミストの斎藤満氏は、所得上位数パーセントに富が集中するトレンドが継続すれば、米経済の消費エンジンは着実に弱まっていくと指摘する。「所得が高額になればなるほど消費性向は低下する。高額所得者ほど消費から投資へシフトするので、集中が高まるほど消費押し上げ効果が減殺される」と指摘する。

<米利上げ先送りなら、ドル高シナリオに修正圧力>

米市場では、着実に米利上げの時期をめぐる予想が後ずれしているようだ。元財務官で国際協力銀行の渡辺博史総裁は、利上げの時期について「2015年後半か16年など1年以上先になるというのが、米国の多くの見方だ」と22日のロイターとのインタビューで指摘した。

日米金融政策の方向性の違いに着目し、ドル/円JPY=EBSが115円程度まで上がるとのシナリオが、東京市場では今でも一部で持てはやされているが、果たしてその賞味期限はどうなのか。

米利上げを見込んだ短期的なドル高シナリオは、どこかの段階で修正を余儀なくされるだろうと予測する。

米金融政策に限らず、過去の経験を100%当てはめて未来を予測するのは、かなりリスクが高そうだ。日本経済に関しても、供給制約と潜在成長率の低さという点を考慮せずにいると、成長率や物価などの見通しを誤ってしまう危険性が増大しそうだ。

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