October 30, 2015 / 10:14 AM / 4 years ago

コラム:新興国減速とリンクする原油下落、日銀見通しの先行き不透明に

[東京 30日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は30日の会見で、2%物価目標の達成時期を半年先送りして2016年度後半とした。その大きな要因として原油下落を挙げたが、原油下落は中国に代表される新興国の景気減速が大きな作用を果たしている。

 10月30日、日銀の黒田東彦総裁(写真)は、2%物価目標の達成時期を半年先送りして2016年度後半とした。その大きな要因として原油下落を挙げたが、原油下落は中国に代表される新興国の景気減速が大きな作用を果たしている(2015年 ロイター/Thomas Peter)

日銀は新興国経済が早晩、回復するとの前提に立っているが、その可能性は不透明だ。米欧日の中銀は、新興国経済の世界経済に対するシェアが40%にまで拡大していることを軽視しているようにみえる。

<CPI押し下げた原油下落>

黒田総裁は、展望リポートで示した物価の見通しの下方修正や、2%の物価目標達成時期の先送りの大きな要因として、原油価格下落の影響を挙げた。緩やかに上昇するとの前提とは裏腹に、上下動を繰り返しながら低水準で推移していることが影響したとの分析だ。

その影響が前年比で出なくなる時期から、物価は明確に上がり出すという見通しを黒田総裁は繰り返したが、原油価格が想定通りに緩やかに上昇しない展開になれば、日銀の物価の想定は、大幅な修正を余儀なくされるだろう。

<原油動向に大きな影響与える中国経済>

原油価格は、需要サイドと供給サイドの両面から影響を受けるが、米シェールガスの生産調整や石油輸出国機構(OPEC)の減産は、一部で予想されたようには進まず、最近では供給サイドの影響で、需給がタイトになる可能性は後退したとみられている。

一方、需要サイドでは「大口需要家」である中国の資源輸入量が減少傾向を続け、こちらの面からも、値上げが表面化する可能性は後退している。

最も重要なことは、新興国の要である中国経済に反転の兆しが見えないことだ。中国共産党の5中全会では、人口問題の重要性を意識して、「2人っ子」政策への転換が打ち出されたが、中国経済減速の「元凶」とみられる過剰設備と過剰生産を調整しようとする政策は、表立って打ち出されていない。

積み上がる在庫の圧力に抗しきれない企業が増加し続ければ、どこかの段階で企業倒産が目立ってくる時期が来るだろう。

中国の製造業を中心とした調整が継続している間は、貿易統計で示される輸入の前年比マイナスが続くことになる。

<比重高まる新興国経済>

黒田総裁は先進国の回復基調が新興国に波及していけば、新興国経済も反転していくとの楽観的な見通しを示したが、中国の輸出が前年比プラス幅を拡大させ、輸入が前年比プラスに転換するまでには、かなり長い時間がかかる可能性がある。

また、この日の会見で黒田総裁も説明していたように、中国と貿易などで密接な関係にあるアジア諸国の景気が足元で減速しており、そのルートでも日本経済は大きな影響を受ける。

国際通貨基金(IMF)などのデータによると、世界経済に占める新興国経済の割合は、2000年の20%から2014年には39%まで拡大している。

先進国が緩やかに回復しても、そのプラス効果が新興国に波及するまでには、1990年代と比べ、かなりのタイムラグが生じることになっても不思議ではない。

<ECBも懸念する新興国の動向>

原油価格と中国を含めた新興国経済の推移は連動しており、中国経済の復調時期が先送りされるようなら、日銀の物価目標2%の達成時期も後ずれを余儀なくされると考える。

実際、この1カ月間に欧州中銀(ECB)のドラギ総裁が12月の追加緩和を強く示唆し、中国人民銀が追加緩和に踏み切ったのも、中国を含む新興国経済と世界経済の先行きに懸念を持ったからだ。

このまま推移すれば、来年1月の展望リポート発表時にGDP(国内総生産)とCPIの見通しが引き下げられる可能性も低くないと予想する。

BOJウオッチャーの中には、賃金の動向を重視する声が増えているが、来年の賃金の基調は春闘の結果が判明する4月以降まで待たなければならない。

しかし、海外経済の動向によっては、その前に物価の基調に大きな変動が及んでいるシナリオの現実性も十分に見ておく必要があるだろう。

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