July 16, 2020 / 6:00 AM / a month ago

コラム:コロナ発国債増発、黒田総裁はYCC対応に自信

[東京 16日 ロイター] - 日銀が14、15日に開催した金融政策決定会合は現行政策の維持を決め、マーケットの反応はほとんどなかったが、黒田東彦総裁の会見からは、新型コロナ対応のための政府の国債増発には現在の長短金利操作(YCC)の政策が最適であるとの考え方がにじみ出ていた。その一方、足元の危機対応は長期化の可能性があることをうかがわせ、来年3月末までの期限が延長されそうな情勢だ。

7月16日、日銀が14、15日に開催した金融政策決定会合は現行政策の維持を決め、マーケットの反応はほとんどなかったが、黒田東彦総裁(写真)の会見からは、新型コロナ対応のための政府の国債増発には現在の長短金利操作(YCC)の政策が最適であるとの考え方がにじみ出ていた。1月の日銀での記者会見で撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

<国債増発とYCCは「よい相性」>

黒田総裁の発言で注目されたのは、政府が国債を増発した場合の対応に対する部分だ。「政府が必要に応じて国債を増発した場合、それによって金利が上昇することがイールドカーブ・コントロールの下で防がれるということで、いわば金融政策と財政政策のポリシーミックスが自動的に実現され、それ自体、イールドカーブ・コントロールの1つの効果であると考えている」と指摘した。

新型コロナ対応で政府の財政支出が増え、国債増発になっても、金利が上がりそうになれば、YCCに基づいて日銀が国債を購入するので「大丈夫です」と太鼓判を押した格好だ。言い換えれば、今次局面における政府の財政拡張と日銀の採用しているYCCは「とても相性がいい」と黒田総裁自ら強調したとも言える。

政府は2020年度第2次補正予算で10兆円の予備費を計上。政府内には早期の第3次補正は不要との声が多い。ただ、新型コロナウイルス感染の第2波が早期に襲来した場合、感染対策や経済的打撃の対応策などで追加の財政支出が必要になる可能性はかなり高い。その場合でも、日銀がYCCに基づいて10年ゾーンの金利がゼロ%付近に落ち着くよう買い入れを行えば、市場の動揺は防ぐことができ、財政・金融のポリシーミックスは、近年になく効果を発揮できると黒田総裁は「読んでいる」に違いない。

15日の会見でも「何か、国債の信認にかかわるとか、買い入れを難しくするとは思っていない」と言い切り、自信の強さを示した。

このため米連邦準備理事会(FRB)が足元で検討を進めている金融政策の枠組みの見直しの一環としてのフォワードガイダンス(FG)強化については、日銀内での優先順位は当面、それほど高くないと推定できそうだ。

また、市場で注目されている超長期ゾーンの金利を抑え続けるのか、ある程度の上昇を容認するのか、という点も方向性を示した。黒田総裁は「新型コロナ感染症で市場の流動性が低下し、増発が見込まれる中で、低位安定が望まれる。このため積極的買い入れが適当だ」としつつ、下がり過ぎの弊害にも言及。「両論併記」として「自然体」の流れを強調する結果となった。

<危機対応、来年3月末から延長か>

一方、現行の危機対応に関連して「当面は実体経済はかなりのスピードで回復しているように見えるが、それがずっと続くわけでなく全体として緩やかで、資金繰り支援はまだかなり続ける必要があるのではないか」と指摘。CP・社債買入枠の増枠など2021年3月末までの時限措置は、延長される公算が大きいことをかなり色濃くにじませたのではないかと筆者は考える。

言い換えると、危機対応中は物価目標の2%との乖離が大きくても、企業の資金繰りの円滑化や市場の安定を最優先の政策とし、仮に企業の資金調達環境が何らかの理由で悪化するようなら、現在はBBBまでの格付けを買い入れ対象としている社債に関し、FRBにならって格下げ後も購入を継続するというような緩和度合いの強化を図ったり、CP・社債の20兆円の買い入れ枠を引き上げることも選択肢として浮上すると予想する。

問題はその先だろう。16日付日経朝刊は、トヨタ(7203.T)が最大で新車を10万円値引きすると伝えた。それだけ国内における購買力が落ちているとトヨタは判断したわけで、今後、コロナの感染第2波が本格化するようなら、財政のてこ入れなしに消費が上向くことは難しい。

雇用・所得環境の悪化が消費の減退、企業収益の悪化につながるような情勢になれば、15日の会見で黒田総裁が懸念していた企業のソルベンシー問題に発展するリスクが高まる。企業の資本劣化は、貸出の不良債権化を通じて金融機関に波及するのは、1990年代後半からの金融危機で経験済みだ。

政府・日銀は最悪のシナリオに備えた対応の検討を本格化するべきだろう。

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編集:内田慎一

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