July 27, 2020 / 6:58 AM / 13 days ago

コラム:日本の貿易赤字膨張、円安材料になるか 「実験」始まる

[東京 27日 ロイター] - 最近のドル/円JPY=EBSはすっかりボックス相場になり、市場関係者もそれに慣れきっているようだ。本質的な要因のクリアな分析はあまりないが、日米金融政策の「同質化」が大きな影響を及ぼしているのではないかと筆者はみている。ドル/円の需給状況が大きな要素として浮上する可能性があるが、足元で日本の貿易赤字膨張という大きな変化が生じている。これがどこまでの円安要因になるのか、これまでの経験則とは異なる「実験」が始まる。

7月27日、最近のドル/円はすっかりボックス相場になり、市場関係者もそれに慣れきっているようだ。都内の港湾地区で2019年5月撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

<近似する日米金融政策とボックス相場>

新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、企業の資金繰りを支援することが世界の主要中銀の最大のテーマになり、米連邦準備理事会(FRB)も日銀も信用緩和が金融政策の中で大きなウエートを占めている。

この政策の効果を最大限に発揮させることを狙い、FRBは2022年までゼロ金利政策を維持するとの方針を打ち出した。日銀はイールドカーブ・コントロール(YCC)政策で短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%に誘導。かつてのように日米間に200bpを超えるような政策金利のギャップは消滅した。

その結果、日米間の金利差に注目したマネーフローは、急速に縮小しつつあり、実際にドル/円のボックス相場化を促進する方向に動いている。

<3年連続の貿易赤字か>

そこで、一部の市場関係者に注目され出したのが、膨張し始めた日本の貿易赤字だ。6月は2688億円の赤字、1─6月は2兆2395億円の赤字となった。エコノミストの中には、日本の主力産業である自動車の輸出が今年いっぱいは回復せず、2020年の貿易赤字が4兆円から5兆円に膨らむと予想する声もある。

2019年も1兆6438億円の赤字であり、18年も赤字だった。20年の赤字が確定すれば3年連続の赤字となる。

ただ、企業が海外から受け取る第1次所得収支は2019年に20兆7202億円の黒字で、貿易赤字が4-5兆円になっても円安にはならないとの見方が少なくない。

ここからは、日米中銀の金融政策が似かより、政策金利の誘導水準があまり変わらないという「前代未聞」の現実の下で、大きな実験が始まると筆者は思う。つまり、需給が大きな要因になる中で、貿易収支の赤字によるフローが為替に影響するかどうか、という実験だ。

<稼げない日本と円安>

筆者の考えは「影響する」可能性が大きいというシナリオだ。理由は3つある。まず、確かに所得収支の黒字額は大きいが、その存在はこのところ継続してきた。そこに貿易赤字の膨張という要因が加わった。そのこと自体が円安方向に為替を動かすパワーになり得るのではないか。

2つ目は、所得収支の黒字を構成する配当・利子収入が、世界的な金利低下で先細りがみえていることだ。

3つ目は、グーグルやアップル(AAPL.O)など「GAFA」のようなポスト・コロナ下でのけん引企業が存在する米国と異なり、日本にはポストコロナのリード役を果たす企業が「ゼロ」という点だ。つまり、稼げなくなって貿易赤字国に転落し、対外債権をこの先に取り崩していく姿が見えてきている。

市場が、この3点に注目するなら、ある時点から円安が進み出す可能性がある。ただ、市場のコンセンサスは合理的に形成されるとは限らない。過去の残像が強く作用し、「貿易赤字は為替に関係ない」との声が多数派を維持し続ければ、ボックス相場が長期化する展開も出てくる。だから、筆者はこの先の展開を「実験」と呼んでいる。

<リスクは米中の偶発的衝突>

今まで考察してきた前提が、大きく崩れるシナリオが1つある。それが、米中緊張の激化による米中両軍の衝突というリスクシナリオだ。

発生の可能性は極めて小さいが、例えば、南シナ海で米中の海軍機動部隊同士が偶発的に衝突するケースや、台湾海峡における同様な展開だ。

この場合、世界の金融・資本市場は極端なリスクオフとなり、日米欧の株式市場では大幅な資金流出が発生し、同時に円高が進展する可能性がある。

このリスクシナリオが現実化しなければ、ドル/円はじわじわと円安にシフトする可能性があると現時点では予想している。

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編集:青山敦子

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