for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up
コラム

コラム:期待膨らむワクチン接種とシニア消費、ぬか喜びのリスクも

[東京 25日 ロイター] - 高齢者への新型コロナウイルスワクチン接種が進み、「シニア消費」拡大への期待感がジワリと広がってきた。これまでの感染への「不安感」がワクチンで払しょくされ、旅行や買い物、レジャーなどに繰り出すと予想され、今年7─9月期の国内総生産(GDP)を押し上げそうだ。ただ、シニア層は感染動向に神経質なため、足元で第5波の兆しを見せる感染動向によっては「ぬか喜び」に終わるリスクもある。

 6月25日、 高齢者への新型コロナウイルスワクチン接種が進み、「シニア消費」拡大への期待感がジワリと広がってきた。都庁で行われた集団接種会場で代表撮影(2021年 ロイター)

<ワクチンで気持ちが明るくなったの声>

政府のデータによると、6月23日現在でワクチンを1回以上打った65歳以上の高齢者は全体の51.1%。当初は達成不能と見られていた1日当たり100万回の接種回数は、6月に入って9日、15日、16日と3日間は超過達成した。菅義偉首相が「公約」した7月中の高齢者2回接種について、全市町村から「見通しが立った」との回答が政府に入っているという。ただ、これは達成できるということではなく「達成できそうだ」というニュアンスのようだ。

このワクチン接種の進展は、シニア層の心理状況に対して大きな変化をもたらしつつある。筆者が最近接した複数のシニア層の取材先は「死亡や重症化のリスクが低下するので、先行きが明るくなった」、「自重していた外出や泊りがけの旅行も計画したい気持ちになっている」と話しており、活発に行動しようという「意欲」が強まっている様子が伺えた。

<期待高まる旅行・小売業界>

実際、シニア層に人気のある東京・新宿の京王百貨店では、6月に入って入館者数が増えている。週ごとのデータを見ても、5月31日─6月6日の週を100とすると、翌週の6月7日─13日が109、翌々週の6月14日─20日が114と右肩上がりのカーブを描いている。店頭では「ワクチンを打ったので、安心して来ることができたというお客様の声を聞いている」(広報部)という。

旅行に関しても、シニア層の動きも含めて予約数が「底を打つ」傾向になってきたようだ。日本旅行では、7─9月の予約件数が前年比で40─50%増の水準になっている。ただ、コロナ禍前の19年夏との比較では「絶対水準はかなり低い」(広報部)という。「ワクチン接種の進展に期待するところは大きい。しかし、最初は遠距離ではなく、近場の宿泊から需要が出てきそうだ」とし、回復カーブは緩やかだと説明している。

映画や演劇などでもシニア層の「進出」が目立ち始めているようだが「子どもや孫の世代のワクチン接種が進んでいないので、高齢者だけが目立つことへの遠慮した気持ちも働いているようだ」(関係者)との声もある。チケット販売急増の場面はもう少し、先になるという予測も出ている。

<7-9月期はプラス成長へ>

とはいえ、米早期利上げへの警戒感が後退し、下値不安が沈静化してきた株式市場では、ワクチン効果による対面型サービスの急回復を想定した「物色」も出てきているようだ。業種別には、鉄道、映画、化粧品、カラオケ、スポーツジム関連などに注目が集まるとみられている。

マクロ的には「明るい外需」と「暗い内需」の構図で、1─3月期に続いて4─6月期の国内総生産(GDP)が前期比マイナス成長になるとの予測が多くっている。だが、ワクチン接種によるサービス消費の回復で7─9月期は明確な回復が望めそうだ。政府・日銀の経済見通しも7月以降は、内需の回復を追い風にし、上方修正される可能性が高まってきたと指摘したい。

<感染リスクに敏感なシニア層>

ただ、手放しで楽観できない要素もある。足元で見え出した感染第5波の兆しだ。東京都の感染者数は、1週間の移動平均が2週続けて前週比プラスに転じており、専門家の間でも5波の兆しではないかとの指摘が出ている。

また、先行してワクチン接種を実施し、国民全体の接種率が60%を超す英国やイスラエルで感染の再拡大がみられ、日本政府も厚生労働省や専門家を中心にデータの収集と分析に追われている。

ある調査では、65歳以上の高齢者は、それより下の世代に比べてコロナ感染に関するニュースに「神経質」であるとの結果が出ている。英国などのニュースが連日報道されるようになれば、ワクチン接種で安心という心理状態に冷や水をかけることにもなりかねない。

そこに東京などの大都市で5波の到来を思わせる感染者急増が重なれば、シニア需要の盛り上がりは、あっという間に尻すぼみになるだろう。仮に緊急事態宣言の発令となれば、消費に対するワクチン効果は、ほぼゼロに逆戻りするリスクさえある。

その意味で、政府はインドで発生したデルタ変異株の感染者発見にもっと資金と人を投入するべきだ。

今から7月、8月にかけての感染者の動向が、経済だけでなく、東京五輪・パラリンピックの開催やその後の政治状況を大きく左右することになると予想している。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up