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コラム

コラム:中国・ロシア・円安、日本経済下押しの3点セットに 補正など対応必要

[東京 15日 ロイター] - 日本経済を下押しする3つの要素が急浮上してきた。中国当局によるゼロコロナ政策の徹底はサプライチェーン(供給網)の停滞を生み、日本企業の生産に打撃となりつつある。ロシアのウクライナ侵攻は長期化の様相を示し、いよいよ半導体生産に悪影響が出ようとしている。進行する円安は日本企業のコストを増大させ、収益見通し悪化が意識され出した。「中国・ロシア・円安」の3点セットが景気を悪化させる。

 4月15日、習近平主席は13日に海南島を訪問した際に「粘り強さが勝利する」と述べ、ゼロコロナ政策の継続を強調。中国発のサプライチェーン停滞問題は長期化する可能性が高まってきた。都内で2020年6月撮影(2022年 ロイター/Issei Kato)

しかし、岸田文雄政権は当面、2022年度補正予算編成での対応ではなく、22年度予算の予備費活用でしのごうとしている。これでは景気悪化の坂道を転がり落ちるリスクが高まる。今回の景気悪化は危機であり、補正予算の早期編成で対応するべきだ。

<1─3月期の消費、大幅マイナスか>

4月以降の国内景気を展望する前に、まず、1─3月期の国内総生産(GDP)がどうなるのか簡単にみておこう。国内の消費動向をみる上で、多くのエコノミストが注目しているのが、日銀が公表している消費活動指数だ。2022年1─2月は前年10─12月期比マイナス3.8%と大幅に落ち込んでいる。

GDP全体の約6割を占める個人消費が1─3月期全体でかなりのマイナスに落ち込む可能性が高まっている。外需の大幅な伸びを示しているデータがないため、1─3月期のGDPは前期比マイナスの公算が大きくなっている。

これまで多くの国内エコノミストは、4─6月期にGDPが前期比プラスになると予想してきた。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために発令されてきたまん延防止等重点措置が解除され、消費者マインドが好転して個人消費の伸びが拡大。米景気の拡大などを背景に外需も増加するというのが想定された「絵柄」だった。

<中国のゼロコロナ、日本の製造業にも打撃>

だが、ここに来て日本経済の成長を妨げる大きな障害が姿を現してきた。1つ目が中国における厳格なコロナ規制の実施だ。いわゆる「ゼロコロナ政策」によって上海市は都市封鎖(ロックダウン)され、同市に出入りする物流を担うトラック運転手も検査で陰性が確認されるまでは移動を禁止され、高速道路には動けないトラックが渋滞する事態に発展している。

中国の3月国内自動車販売台数は前年同期比11.7%減の223万台と、3カ月ぶりに減少。財新/マークイットが1日発表した3月中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は48.1と、2020年2月以来約2年ぶりの低水準を記録し、サービス部門購買担当者景気指数(PMI)は42.0で、前月の50.2から大幅に低下した。3月の輸入は0.1%減少し、2020年8月以来の前年比マイナスとなった。

これは、日本企業から見れば、輸出と生産の減少に直結する。そればかりではない。上海港にはコンテナ船が荷揚げできず沖待ちの数が急増。中国内で生産される部品を使用する日本メーカーの中には、生産停止に陥っているケースが続出している。

習近平主席は13日に海南島を訪問した際に「粘り強さが勝利する」と述べ、ゼロコロナ政策の継続を強調。中国発のサプライチェーン停滞問題は長期化する可能性が高まってきた。自動車や機械などを中心にした日本の製造業にとって、今後、数カ月にわたり中国を起点にした供給制約に直面し、生産が目標値を大幅に下回る事態に陥る懸念が増大している。

<ウクライナ戦争の長期化懸念、半導体生産に影響>

2つ目は、ウクライナ戦争の長期化懸念と原材料不足の深刻化だ。ロシアは戦線を立て直し、ウクライナの東部2州に攻勢をかけると伝えられてきたが、その矢先、黒海艦隊の旗艦「モスクワ」が大火災を起こし、港への曳航中に沈没したと14日にロシア国営タス通信が伝えた。ロシア軍の作戦に支障が出ることは間違いなく、短期終結というロシアの目論見通りに展開しない可能性が出てきたと言えるのではないか。

小麦などの穀物生産が大幅に減少する可能性が高まっただけでなく、半導体生産に不可欠なネオンやクリプトンなどのガス、自動車生産に使用するパラジウムなどの希少金属の確保が難しくなる可能性が高まっている。ガスや金属は数カ月の在庫を各メーカーが持っているため、直ちに生産がストップするリスクは小さい。だが、ウクライナでの戦争がさらに数カ月から1年以上にも長期化すれば、広範囲な製造業で供給制約となって表れるだろう。

<円安デメリット、大企業にも波及>

3つ目は、円安の進展によるマイナス効果の拡大である。ドル/円は15日の東京市場で一時、126.56円まで円安が進み、直近の円安水準を更新した。14日に公表されたロイター企業調査では、48%の企業が120円超の円安水準で減益要因になると回答。増益要因になると回答した23%の2倍以上を占めた。

5月3、4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の利上げ決定が確実視され、6月にも0.5%の利上げがあると予測される中で、市場ではドル/円の130円突破の可能性が高まっているとささやかれ出した。

4月以降の消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)は前年比で1%台後半から2%台に乗せると見られているが、円安進展が加速すれば2%半ば程度までの上昇もあると一部のエコノミストは予想する。円安の進展と物価上昇は、1─3月の段階で足元がおぼつかなかった個人消費を一段と下押しし、生活防衛的な消費行動を強いる公算が大きい。

また、企業もコスト増大を吸収するための対応を余儀なくされ「専守防衛」的な経営に傾きそうだ。

ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は14日の会見で、円安について「日本全体からみたらデメリットばかり」と述べるとともに「これ以上続くと、日本の財政が悪い方向にいくのではと憂慮している」と語った。企業経営者の立場からの率直な危機感の表明と筆者には映った。

<岸田政権、景気への危機感見えず>

ところが、岸田政権はこの事態を「危機」とは認識していないようだ。当面、予備費の活用で対応するとの方針を示しているのが、その証拠と言える。

22年度予算では、コロナ関連の予備費が5兆円、災害対応などその他の予備費が5000億円計上されている。コロナ関連の予備費を景気浮揚のために流用することは法令上も疑義がある上に、2兆円程度を流用して合計2.5兆円を景気対策に充てても、危機的な状況には不十分だ。

現状のまま推移すれば、7月とみられる参院選前に総合景気対策の「大綱」を策定し、大きなメニューはそこで示し、具体的な補正予算編成は夏休み明けの秋に召集されるとみられる臨時国会での審議になるのではないか。

だが、9月や10月まで待っていいほど、事態は楽観できないと筆者は指摘したい。早めの対応が、結果的に財政出動の規模を抑制できると考える。

●背景となるニュース

・ 中国「ゼロコロナ政策」、粘り強さが勝利する=習国家主席

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