August 23, 2019 / 8:48 AM / a month ago

コラム:製造業の落ち込み、非製造業に波及なら政府・日銀の対応必至

[東京 23日 ロイター] - 米中貿易摩擦の長期化が予見され、世界的に製造業への「逆風」が鮮明になっている。日本も例外でなく、対中輸出依存度の高い企業を中心に業績への影響も目立ってきた。ただ、非製造業は堅調で、政府・日銀にとって「頼みの綱」となっている。だが、製造業の落ち込みが波及するなら、日本経済が失速状態に陥る可能性も出てきた。

 8月23日、米中貿易摩擦の長期化が予見され、世界的に製造業への「逆風」が鮮明になっている。写真左は麻生財務相、右は黒田日銀総裁、仏シャンティイで7月撮影(2019年 ロイター/Pascal Rossignol)

製造業と非製造業の綱引きの結果をどのように予想していくことになるのか、機動的財政出動を意識する政府と、「予防的」な追加緩和の可能性に言及している日銀の対応にも、大きな影響を与えそうだ。

<7月工作機械受注、対中・自動車関連落ち込む>

設備投資や輸出の動向を予想する際に重要な材料となる工作機械受注は、当初の想定を超えた低迷が続いている。日本工作機械工業会が22日に発表した7月受注総額(確報値)は前年同月比33.0%減の1012億円と、10カ月連続で前年割れした。

自動車業界向けの落ち込みで内需は同38.9%減となり、外需も中国向けが同40.2%減だったことを受けて同28.2%減と振るわなかった。

日米通商交渉で、対米自動車輸出が削減されるのではないかとの懸念がささやかれ、自動車向けの需要が落ち込んでいるほか、米中摩擦の影響で対中需要の不振が長期化しているのが特徴となっている。

日本経済が直面している「米中摩擦の跳ね返り」と「日米通商交渉のリスク」という2大要因が、工作機械受注にくっきり浮かび上がっている構図だ。

<4-6月期決算、製造業最終利益が30%減>

米中摩擦という大きなうねりの打撃は、すでに企業決算にも明確に表れ出した。2019年4─6月期の3月期決算企業の業績は、製造業と非製造業で明暗を分けた。SMBC日興証券が今月14日時点でまとめたTOPIXに採用されている企業の最終利益は、製造業が前年同期比30.4%減。非製造業は同33.2%増だった。

業種別に見ると、石油・石炭製品が同72.6%減となったほか、鉄鋼が同59.1%減、電気機器が同38.2%減、輸送用機器が同22.3%減、機械が同24.6%減とたった。米中摩擦の影響による対中需要の減少が、大きな要因になったことは間違いないだろう。

<世界貿易予測指数、7-9月期は前期比低下>

世界貿易機関(WTO)は15日、2019年7─9月期の世界貿易予測指数が前期の96.3から95.7に低下したと発表した。貿易の拡大・縮小の基準となる100を割り込んで推移しており、WTOは貿易摩擦が今後の貿易に対する下振れリスクになると指摘している。

この予測指数が示すように、米中摩擦が長期化すれば、対中ビジネス比率の高い製造業の業績は下押し圧力にさらされ、今後、業績下方修正を発表する日本企業が増加すると予想される。

SMBC日興証券のまとめによると、TOPIX採用銘柄707社の製造業のうち、すでに通期の最終利益予想を下方修正しているのは57社。上方修正は9社にすぎない。これに対し非製造業は、644社のうち15社が下方修正、19社が上方修正となっており、製造業の厳しさが出ている。

<8月ロイター短観、製造業DIが6年4カ月ぶりマイナス>

19日に発表された8月ロイター短観でも、製造業のDIはマイナス4となり、6年4カ月ぶりのマイナスに転落。非製造業はプラス12とマイナスには距離があるものの、7月から12ポイント悪化した。

政府・日銀は中国をはじめとする海外経済の減速が、日本経済に及ぼす影響について「注視」するスタンスを繰り返し説明しているが、今のところ、日本経済全体が「景気後退」に陥るとはみていない。製造業の落ち込みを非製造業が引っ張り上げ、バランスしているとの見方のようだ。

<補正予算編成、早くても来年1月の声>

安倍晋三首相は「経済・財政政策の適切かつ機動的な運営に全力を尽くす」「消費税率引き上げ後の需要変動や最新の経済状況に十分目配りしながら、適切な対応をしていく」と繰り返し発言しているものの、早期の2019年度補正予算編成を直ちに指示する構えではない。

複数の関係筋によると、現状の景気動向が継続するなら、補正予算の編成は早くても来年1月の可能性が高いとの見方が浮上。このため10月に総合景気対策をまとめる可能性は後退しているとの見方があるという。

一方、日銀も中国などの海外経済リスクを注視しつつも、景気後退リスクが迫っているとは見ておらず、非製造業を中心にした内需の盛り上がりが年後半に出てくれば、緩やかな回復の軌道を外れないだろうと見ているようだ。

<目立つ下振れリスク>

ただ、これまでの経験で内需と外需のデカップリングが長期化し、ずっと綱引きが続いたことはない。どちらかの力が増し、サヤ寄せされるだろう。では、どちらの力が強そうか。

私は、以下のような材料から、景気失速のリスクが相応にあると予想する。1つ目は米中摩擦の長期化による中国経済の低迷、2つ目はブレグジットなどによる欧州発のリスクオフの波及、3つ目は消費増税による消費の落ち込み──。

9月からの対中関税・第4弾の実施は、中国の製造業の業績をさらに落ち込ませるだろう。特に日本から中国への輸出品の多くは、最終消費地が米国であり、第4弾の影響は想定以上に日本企業の業績を落ち込ませかねない。

また、合意なきブレグジットによる混乱の発生は、リスクオフ心理を刺激し、株安・円高の流れを助長させると予想する。

消費増税前の駆け込みが小さいので、反動減も小さいという声が少なくないが、年金生活者の割合が増加している中で、耐久消費財を購入せずに「節約」だけする世帯が増えると私は予想する。

<予防的な対応はあるのか>

黒田日銀総裁は7月30日の会見で、金融政策決定会合後に公表された声明文の中で「物価上昇のモメンタムが損なわれるおそれが高まる場合」に、ちゅうちょなく追加緩和的措置を取ると表現を変えたことについて「予防的と言ってもいい」と明言した。

また、今月7日に公表された「主な意見」では、予防的な金融緩和に複数の政策委員が言及していた。

製造業と非製造業の綱引きの行方をどのように展望するのか、その点が今後の財政・金融政策の展開と大きな関連を持つことになると指摘したい。

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