October 18, 2019 / 9:21 AM / a month ago

コラム:G20内で浮上する財政政策シフト、日本が先頭に立つ展開も

[東京 18日 ロイター] - G20(20カ国・地域)内では、マクロ政策の比重を金融政策から財政政策へシフトさせようとする気配が色濃くなってきた。国際通貨基金(IMF)は財政政策の活用に言及し、欧州の要人からは「次の危機」では財政が主役との声が相次いでいる。「金融から財政」へのシフトが世界の潮流になりそうな中で、台風19号の被害に直面した日本が、その流れの先頭に立つ可能性も出てきた。

10月18日、G20(20カ国・地域)内では、マクロ政策の比重を金融政策から財政政策へシフトさせようとする気配が色濃くなってきた。写真は9月、首相官邸で記者会見する安倍晋三首相(2019年 ロイター/Issei Kato)

ただ、財政出動を繰り返しても、債務残高が積み上がるばかりで、潜在成長率の引き上げにつながらなかった「苦い経験」もある日本にとって、効率的な公的投資をコントロールできる「司令塔」の強化が何より重要だ。

<IMFが指摘した財政政策の効用>

17日から始まるG20財務相・中央銀行総裁会議を前に、IMFが重要なメッセージを出した。多くの市場関係者が、2019年の世界経済成長率3.0%という数字に注目した「世界経済見通し」。

その中でIMFは「金融政策が唯一の選択肢というわけではない」と指摘し、ドイツ、オランダ両国を名指しして財政政策の効用を強調。景気がさらに悪化した場合は、国際協調の下で「財政面の対応が要請されるかもしれない」と予想した。

こうした中で、イングランド銀行のカーニー総裁は16日、世界経済が「流動性のわな」に陥りつつあり、財政出動の役割が一段と高まっていると強調。今月末に退任する欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は12日、ユーロ圏で財政政策がより活発に利用されれば「ECBの政策調整は加速する」と述べ、財政政策により比重を置くべきだと強調した。

金融政策から財政政策へのシフトが意識され出した背景には、2つの大きな理由があると思う。1つ目は、今回の世界的な景気後退懸念の背景に、米中貿易戦争が存在することだ。米中激突で貿易量が減少し、G20内では製造業を中心に生産に下押し圧力がかかっている。人為的な原因による需要減少に対し、金融政策効果の波及ルートは、いかにも「迂遠」だ。財政で需要を付けた方が、直接的な効果を期待できる。

2つ目は、各国中銀の相次ぐ金融緩和で、金利の絶対水準が大幅に低下。目ぼしい金利を得るために、過剰なリスクを世界の投資家が取り始めていることがある。

オーストラリア準備銀行(RBA)のロウ総裁は17日、低金利のもたらす効果が「新たな資産への投資奨励というより、望んでいない既存資産の価格上昇につながる」と低金利の弊害に言及した。

非常にデフォルメして言えば、これ以上の金融政策偏重は、効果が薄いのに副作用が大き過ぎるとの意見が台頭してきたということではないか。

<財政拡張でも短期的痛みなし、日本の構造>

日本では、国債や借入金を合計した「国の借金」の残高が今年3月末で1103兆円となり、財政拡張の余地がほとんどないとの専門家の声が少なくない。

だが、今月12日に上陸した台風19号の被害で、合わせて90カ所を超す河川氾濫が起き、政府や専門家の当初の想定をはるかに上回る被害が発生してしまった。政府は当面、19年度予算で計上されている5000億円の予備費を活用して復旧作業に当たるが、河川の修復だけでも巨額の工事費が見込まれ、19年度補正予算の編成は必至とみられている。

民間エコノミストの中には、2兆円程度の補正予算規模になりそうだとの予想も出ているが、それで収まるかどうか不透明な部分が多い。

また、今後は地球温暖化によって、今回の台風を上回るスーパー台風が毎年、日本周辺に接近してくるとの専門家の予測もあり、自民党内にはスーパー堤防の新設を含む治水事業の大幅な強化を目指す動きもある。「国土強靭化」を旗印にした予算獲得競争が激しさを増す近未来が予想できる。

また、政府は18年度中に52.5兆円の前倒し債を発行し、19年度予算に充当できるようにしてきた。その「貯金」があるため、5─10兆円規模の補正予算を編成しても、新規に赤字国債を発行せずに済む。

19年度補正予算を「超大型」に編成しても、円債市場が「ウォーニング」を発して長期金利が急上昇する懸念はほとんどない。

不幸な台風19号の被害発生とその復旧・復興対策を実行に移す過程で、日本はIMFが求める「財政シフト」の姿を世界で最も鮮明に打ち出すことになると予想する。

日銀が実行中の長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策(YCC)で長期金利はマイナスに沈んでおり、政府はその効果を十二分に享受できる。理想的なポリシーミックスを展開できる環境にある。

<不可欠な司令塔の新設>

だが、せっかくの国費投入を旧来型の技術と計画だけで推進した場合、生産性の上昇に結びつかず、効率の悪い公的資産を積み上げることにもなりかねない。

世界経済の先端では、5Gネットワークをできるだけ早く構築し、情報を武器に付加価値を上げるシステムの構築に注力している。

日本では、その分野での省庁の所管範囲が入り組み、全体のプランを練り上げる司令塔が不在だ。短期的な復旧・復興作業の推進と同時並行的に、災害に強い国土と情報インフラの整備をともに進めるグランドプランを作成、今回の災害を機に、全く新しい社会構造へと作り変えるステップへと踏み出して欲しい。

●背景となるニュース

・景気低迷時、財政出動の役割大きい=英中銀総裁

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