July 30, 2019 / 11:10 AM / in 3 months

コラム:米利下げ期待が生む低業績/株高、日銀に時間的余裕も

[東京 30日 ロイター] - 米中摩擦による中国経済減速の逆風が、日本の製造業の業績を下押ししている。しかし、市場は「アク抜け」とみて減益企業の株価を押し上げている。背景には米連邦準備理事会(FRB)の利下げ継続を見込んだ世界的な株高見通しがありそうだ。「低業績/株高」という新しいパターンが継続するなら、日銀が懸念する円高や物価モメンタムの失速は当面回避され、日銀の政策判断に時間的余裕を与えることになりそうだ。

 7月30日、米中摩擦による中国経済減速の逆風が、日本の製造業の業績を下押ししている。写真はパウエル米FRB議長、ワシントンで10日撮影(2019年 ロイター/Erin Scott)

<三菱電、ファナック、日本電産株が上昇>

三菱電機(6503.T)が30日に発表した2019年4─6月期(国際会計基準)決算では、営業利益が前年比10.8%減の549億円にとどまった。中国の景気減速や日欧の緩やかな景気回復テンポの下で、産業メカトロニクス、電子デバイスの両部門が減益になった。

また、30日に発表されたファナック(6954.T)の2020年3月期の連結営業利益予想は、前回の757億円から713億円に下方修正された。

このほか4─6月期決算の営業利益で、日産自動車(7201.T)が前年比98.5%減、富士通(6702.T)が同95.7%減、日本電産(6594.T)が同38.8%減と製造業の落ち込みが目立っている。

中国経済の減速に端を発し、世界貿易の縮小傾向を反映した減益決算の製造業が目立っている。

しかし、株価は別の動きを示している。 ファナックは31日の市場で一時、4%高。三菱電機は3%台、日本電産は2%台の上昇となり、減益決算が株高につながっているケースが少なくない。

複数の市場関係者によると、懸念されている中国経済は、今年後半には回復するとの期待感が市場では根強く、全般に下期の業績回復を見込んだ値動きが展開されているという。

だが、その株買いの背景にあるのは、中国経済の回復期待だけではない。トランプ米大統領が火付け役になった米利下げ期待が存在する。

<中国減速懸念、強まるほど高まる米利下げ期待>

トランプ大統領は26日、米中通商協議に関し、来年11月の米大統領選まで合意しない可能性があるとの見解を表明。中国が米民主党候補の勝利を望み、交渉を遅らせている可能性があると言及した。

本来なら米中通商協議の長期化は、中国経済の減速が長引き、日本企業だけなく、米欧企業の業績にも重石となり、世界的な株価下押し要因として意識されるはずだ。

しかし、米株式市場を中心に、中国リスクが高まるほど、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待が高まり、逆に株高期待が醸成されやすくなるという。

ある邦銀関係者は「減益の国内企業株に買いが入るのは、米利下げ期待を通じた世界的な株高期待感があり、日本企業にも、その恩恵の一端が及んでいる」と話す。

また、その効果としてのリスクオン心理の広がりで、ドル安/円高に向かいにくい流れもできており「夏場の円高」説が繰り返し市場で広がっても、足元の市場で円高が進む兆しはなく、それも日本株を下支えしている。

こうした現象をみると、企業の利益水準と株価に関し、新しい均衡が生まれつつあるとの仮説が想定できる。米利下げによる過剰流動性相場の現出で、減益決算を発表した企業でも、株高現象につながるという見方だ。

とすれば、業績悪化─株安─企業心理の悪化というマイナスのスパイラルが働かず、製造業の業績悪化が明らかになっても株安に直結せず、株式市場発の物価下押しメカニズムが生まれにくくなると言えるのではないか。

つまり、世界経済回復のモメンタムが弱くても、物価のモメンタム失速につながらない可能性があるということだ。

<日銀シナリオ、予想外のリスクも>

31日の会見で、黒田東彦・日銀総裁は、物価上昇のモメンタムが実際に損なわれる前の段階、つまり「おそれが高まった場合に、躊躇なく追加緩和の検討に入る」と表明。緩和への姿勢をこれまでよりも「やや一歩」前進させたと説明した。

黒田総裁は、緩和への姿勢を強めることで、米欧中銀の緩和攻勢に当面、対応できると判断したとみられる。具体的には述べていないものの、最も懸念される円高は、8月から9月にかけては回避できると予測したのではないか。

私は今回の日銀の物価モメンタムに関連した「表現強化」だけでなく、米利下げを起点にした国内低業績企業の株高傾向も、日銀が警戒するデフレ方向へのスパイラルを回避する大きな要因になると考える。

結果的には、米欧が9月に金融緩和政策を展開しても円高が進まず、日銀が追随緩和を決断しなくてもいいような情勢になっている可能性もあると予想する。

このシナリオにとって大きな脅威は、今は見えない方角から突然、リスクオフにつながる衝撃が及んでくることだ。そのケースでは、直ちに緩和を決断せざるを得なくなるだろう。

黒田総裁もこの日の会見で、海外経済に大きなリスクがあるとの見解を何回も表明していた。それが中国なのか、中東なのか──。不透明な霧が晴れないまま、世界の市場は31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での決定を待つことになる。

●背景となるニュース

・日銀総裁会見詳報11=緩和に向けてかなり前向きになったと言える - 共同通信

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