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コラム

コラム:菅首相は対サイバー攻撃防御で指示を、DX整備の柱に

[東京 2日 ロイター] - 東京証券取引所が1日に引き起こした全株式の終日取引停止は、デジタル取引のもろさをさらけ出した。サイバー攻撃によっても資本主義の「心臓部」が大打撃を受けるリスクが大きいことを示したと言え、政府は日本取引所グループ(JPX)8697.Tと東証に対し、サイバー攻撃に対する防御力の強化を直ちに指示するべきだ。

10月2日、東京証券取引所が1日に引き起こした全株式の終日取引停止は、デジタル取引のもろさをさらけ出した。写真は9月、首相官邸で記者会見する菅首相。代表撮影(2020年 ロイター)

また、新設されるデジタル庁がマイナンバーカードによる電子行政の一元化を目指しているが、サイバー攻撃への防御を最優先し、既存のインフラを全く新しいシステムに再構築するような大胆なインフラ整備を推進する必要がある。

1日の取引停止で、東証における約3兆円の売買ができなかったばかりか、同じシステムを利用する名古屋、福岡、札幌の各証券取引所も巻き添えを食う形で取引停止に追い込まれた。

原因は相場情報を伝達するシステム機器の故障という「ハード」の不備だったが、市場関係者の中には「サイバーテロでなくて良かった」(国内証券)との声が広がっていた。

ただ、安堵してはいられない。

JPXはこれまで、社外取締役を委員長とする「リスクポリシー委員会」とCEOを委員長とする「リスク管理委員会」を設置し「未然防止の観点からリスクの認識と対応策の整備・運用を行うとともに、リスクが顕在化あるいはその恐れが生じた場合には、早期に適正な対応をとる体制を整えている」としてきた。さらに、リスクを「システム」や「事故・災害」など12のカテゴリーに分け、迅速な対応ができる体制を整えていると主張してきた。

しかし、ハードの部品の故障を見落とし、バックアップ機能も作動せず、終日の取引停止という事態に陥った。その上、同じシステムを導入した結果として、他の証取にも影響が波及する連鎖を防止できなかった。

こういう状況で、果たしてサイバー攻撃に対する防御が完璧か、非常に心配な現実が横たわっているのではないか。もし、日本の経済を麻痺させようと狙っている国や団体が存在している場合、今回のJPXと東証の対応は、大いなる「情報」とある種の「確信」を提供した可能性がある。

菅義偉首相と官邸スタッフは、早速、金融庁を通じて東証やその他の証取のサイバー攻撃防御の実態を把握し、最大限の強化策構築を指示するべきだ。これはデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を標ぼうする菅政権にとって、最優先の政策課題だろう。

必要なコストは2020年度第2次補正予算で確保した10兆円の予備費から充当し、これから編成が予想される3次補正予算案、21年度予算案でも経費を計上するべきだ。

さらに東証とつながっている中小証券のシステムがDX推進の障害になるような古いシステムであるなら、更新投資を促す新しい支援制度も創設。サイバー攻撃防御を飛躍的に高めてほしい。これは銀行システムにも同様のことが言える。金融庁は、対サイバー防御の実態を銀行に調査させ、更新投資を急がせることが喫緊の課題である。

また、今回の東証システムダウンを「奇貨」として、菅首相肝入りのデジタル庁創設に伴って推進しようとしているマイナンバーカードを軸にした電子行政の一元化でも、サイバー攻撃の防御を強く意識したシステムに一新する大胆な投資計画を立案するべきだ。

一部の専門家によると、マイナンバーカードを運用するシステムは「継ぎはぎ」が多く、運転免許証や健康保険証とリンクさせると、システム上の障害が発生しやくするという。そのようなシステムでは、サイバー攻撃を受けやすい「穴」が簡単にできてしまうため、サイバー攻撃の防御を考えた場合、多くの問題が生じやすい。

こうした現状を踏まえ、思い切って国と地方のシステムを全く新しいシステムに更新するのも、1つのオプションとして成り立つと考える。

サイバー攻撃に対する防御力があり、効率的な新しいインフラを構築するため、専門家のワーキンググループを設置して、どのようなプランが最も効率的か、早急に検討を始めるべきだ。

もし、菅首相がそのような決断を下すなら、2020年10月1日の東証システムダウンは、画期的な分岐点として将来の国民に記憶されることになるだろう。

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