June 19, 2014 / 4:37 AM / 4 years ago

コラム:イエレン議長が示す「急がない出口戦略」、ドル105円の壁 

田巻 一彦

[東京 19日 ロイター] - イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が18日の会見で発したメッセージの中で、2つのことが注目された。

直近の強めの物価指標を「ノイズ」と指摘したことであり、もう1つは住宅ローン担保証券(MBS)売却の公算は小さいと言ったことだ。仮に利上げしてもFRBの資産規模は維持されたまま、かなりゆっくりしたスピードの調整が続きそうで、それはドル高/円安があまり進まないことを予想させると指摘したい。

<高めのCPIはノイズ>

最近の消費者物価指数(CPI)は、やや高めになっているとイエレン議長は率直に認めたものの「われわれが目にしているデータにはノイズが多い」と指摘。この部分を根拠にタカ派的な政策アプローチに進むことはない、という強いメッセージを投げかけた。市場が安心したのも、この部分に対する反応が大きかったと考える。

FEDウォッチャーの三菱東京UFJ銀行・シニアマーケットエコノミスト、鈴木敏之氏は「タカ派のメンバーの議論をイエレン議長が、うまくコントロールしていることを印象づけたコメントだった」と述べている。

ただ、 今後の利上げ時期に関し、イエレン議長は「フェデラル・ファンド(FF)金利の道筋に関するFOMC予想は、経済見通しに左右される」とも指摘。

経済がFOMCの想定以上に強まり「雇用とインフレがFOMC目標へと一層迅速に収れんしていけば、FF金利の引き上げ時期も現在の予想以上に早まる公算が大きく、そのスピードも加速するだろう」と述べ、失業率が6%割れに向け、急低下するなら対応するスタンスも明確にし、セントラルバンカーらしくバランスも取っている。

<資産残高維持プラスゆっくりな利上げ>

このようなメッセージとともに、イエレン議長はさらに重要で示唆に富んだ発言をした。「バーナンキ前議長は、2011年のわれわれの原則と対照的に、住宅ローン担保証券(MBS)の売却はありそうにないと示唆しており、それは今も変わっていない」と述べ、MBSは売却できそうもないとの方針を明確にした。

さらに「利上げ後しばらくの間FRBが非常に大規模なバランスシートを維持するとしても、短期金利水準をコントロールできる手段を有していることにも自信がある」と語った。

ここから類推できることは、今回の出口戦略では、FRBが膨らんだ資産残高を維持しながら、ゆっくりとしたテンポで利上げしていくという「政策パッケージ」のイメージではないだろうか。

出口政策の手段としてイエレン議長も示しているターム物預金ファシリティーなどを駆使してFRBの資産を「凍結保存」してマネーの流出を防止し、FFレートをゆっくりと上げていく政策だ。

<上がりづらい米長期金利、ドル/円に105円の壁>

今までに実行したことのない「チャレンジング」な政策であるため、市場がどのように反応するのか不透明な部分が多いものの、緩和効果が長期にわたって市場に残存する「新型」の政策パッケージというイメージが市場に広がれば、米株は比較的堅調に推移する公算が大きいと予想する。

他方、米長期金利は上がりにくくなるだろう。FFレートの上昇テンポが極めてゆっくりである上に、そのゴールである中立金利も、従来の4%からかなり低下する可能性があるためだ。

今回、FOMCメンバーが予想する長期のFFレート(中心値)は4%から3.75%に低下した。この予想が将来、さらに低下して行く可能性はかなりあると考える。

この結果、ドル/円JPY=EBSの先行きも、外為市場関係者の多数が予想しているよりは、天井が低くなる(円安が進まない)ということになるのではないか。年末に110円という予想は、実現性がかなり低下している。私は100─105円のレンジを上抜けるパワーは大幅に減退していると考える。

<大幅原油高なら、日本当局にも難題>

さて、ここまで述べてきた見通しに大きなリスクがあるとすれば、想定外の原油高という事態だろう。イラク情勢が混迷の度を増し、地政学リスクが中東全体に拡大し、原油価格が1バレル当たり150ドルを突破するようになった場合、物価上昇圧力が大幅に増大するだろう。

この事態に直面すると、米国よりも深刻さが増すのは日本だ。物価は日銀が想定した道筋よりも上振れする可能性が出てくる一方、企業収益が圧迫され、株価は下がる可能性がある。物価は上がるが、企業マインドは低下し、それが他のセクターにも波及していく場合、政府・日銀はどう対応するべきなのか。

大幅な原油高のリスクシナリオは、日本の政策当局に難題を突き付けそうだ。

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