for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

コラム:FOMCタカ派転換、リフレトレードの逆回転と円高圧力の構図=佐々木融氏

[東京 22日] - 6月16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果は、予想よりタカ派的となった。注目すべきは2023年のFOMC委員の将来の政策金利予想の中央値が、3月時点での「利上げなし」から「2回の利上げ」に変更されたことだ。

 6月16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果は、予想よりタカ派的となった。注目すべきは2023年のFOMC委員の将来の政策金利予想の中央値が、3月時点での「利上げなし」から「2回の利上げ」に変更されたことだ。2020年1月、ワシントンで撮影(2021年 ロイター/Yuri Gripas)

また、2022年の予想についても3月時点では4人だった利上げを見込むメンバーが、今回は7人に増えた。さらにパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、いつテーパリングを開始するかについても議論を開始したことを明らかにした。

J.P.モルガンは、テーパリングが2022年第1四半期に開始され、利上げは2023年から始まるとの予想を変更しないが、今回のFOMCは出口に向けて進み始めたことを隠さずに伝え始めたという点で、大きな方針転換だと言えそうだ。

<FOMC後にドルと円が独歩高>

この結果、株価も下落しているが、為替市場でも大きめの動きが見られ始めている。FOMC後、これまでの数日間の主要通貨及び主要新興国通貨の騰落率をみると、円と米ドルが独歩高となっている。円と米ドルの強さはほぼ拮抗(きっこう)しているため、ドル/円相場はFOMC直前とほぼ同じ110円ちょうど前後での上下動となっている一方、豪ドル/米ドル相場は半年ぶり、ユーロ/米ドル相場は2カ月半ぶり、英ポンド/米ドル相場は1カ月半ぶりの水準まで下落している。

また、クロス円相場も軒並み下落し、21日のアジア時間帯には豪ドル/円相場は3カ月半ぶり、ユーロ/円相場は2カ月ぶり、英ポンド/円相場は6週間ぶりの水準まで下落し、円高が進んでいる。

<リフレトレードで売られたドル>

FOMCがタカ派的になって米ドルが強くなるのは直感的に分かりやすいが、なぜ円まで強くなるのだろうか。それを理解するためには、これまでの米ドルと円の動きを振り返る必要がある。

世界の金融市場が新型コロナウイルス感染拡大のショックから回復し始めた昨年5月以降の為替相場の動きをみると、米ドルと円は両通貨とも全体的な下落基調が続き、主要通貨、主要新興国通貨の中で、この1年間強の期間に米ドルと円に対して下落したのは、トルコ・リラ、アルゼンチン・ペソぐらいだった。米ドルも円もともに名目実効レートで約10%程度下落していた。

つまり、世界の投資家は、世界経済が新型コロナウイルス感染拡大による大打撃から、ほぼ同時にかつ急速に立ち直ることを見越して、「リフレトレード」と称して米ドルをファイナンス通貨として売り、コモディティ通貨を買う取引を進め、ポジションを積み上げてきた。

<ヘッジのドル買い/円売りも>

また、米ドルのファンダメンタルズの悪化(貿易赤字拡大・実質金利マイナス・巨額のばらまき)から、特にバイデン新政権が誕生した昨年11月ごろからは米ドルを売って欧州通貨を買う動きも活発化し、米ドルはさらに下落することとなった。

しかし、それと同時に米ドルが上昇した時のリスクをヘッジする目的もあって、米ドルを買って円を売る取引も活発化した。この2種類の取引の組み合わせは、結果的にクロス円の買いとなるため、クロス円のロングポジションも大きく積み上げられる結果となった。この結果、昨年5月以降、豪ドル/円相場は25%程度、英ポンド/円相場は20%、ユーロ/円相場も15%程度上昇していた。

<FOMC後の米長期金利低下の理由>

米長期金利と円の名目実効レートの間の逆相関関係は、比較的強いことが知られている。従って「リフレトレード」は、結果的にクロス円のロングポジションと米長期債のショートポジションの双方で活発化していた可能性がある。

そして、今回のFOMCによるタカ派転換を機に米ドルの買い戻しが発生すると、その反対側でコモディティ通貨や欧州通貨が売り戻され、一方で、対円ではこれまでヘッジ目的もあって買われていた米ドルが売り戻されることになる。つまり、クロス円のロングポジションの手仕舞いが行われ始めているということになる。

米長期金利の低下とクロス円相場の下落は、過去1年間程度の間に積み上げられた「リフレトレード」の反転、ポジションの手仕舞いということが言えるのかもしれない。

このような状況下では、米ドルが全般的に買い戻される中、円だけは米ドルに対して強くなる可能性もあり、米ドル/円相場の円高方向への下落が続くか、少なくとも上値は抑えられる可能性が高いと考えられる。

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up