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コラム:日銀に振り回されたドル/円、今後はドル金利の動向が重要=佐々木融氏

[東京 23日] - 1月18日に日銀は当社の予想通り、イールドカーブコントロール政策(YCC)を含めた現行政策の維持を決定した。日銀の金融政策に対する追加や変更への期待感の高まりから、先々週は円独歩高の動きだった。

 1月18日に日銀は当社の予想通り、現行政策の維持を決定した。日銀の金融政策に対する追加や変更への期待感の高まりから、先々週は円独歩高の動きだった。だが、先週に入ると徐々に期待感が後退し、日銀金融政策決定会合前の2日間でみても、主要通貨の中で円はユーロに次いで弱い通貨となっていた。写真はイメージ。2017年6月撮影(2023年 ロイター/Thomas White)

だが、先週に入ると徐々に期待感が後退し、日銀金融政策決定会合前の2日間でみても、主要通貨の中で円はユーロに次いで弱い通貨となっていた。

そして、18日以降の3日間では円独歩安となり、2番目に弱かった豪ドルに対しても0.8%程度下落した。結局、先週1週間を通じても円は独歩安となった。一方、強かったのは英ポンド、ニュージーランドドル、スウェーデン・クローナなどだった。

昨年12月20日の日銀によるYCC修正以降の1カ月間、日本国債市場や円相場は世界の注目を集めた。この間を通じてみると、主要通貨の中で円は独歩高、米ドルは最弱通貨となっており、その結果、ドル/円相場は137円台から一時は127円台まで約10円下落した。過去2年間、円は最弱通貨の1つ、米ドルは最強通貨の1つとなっていたことから、過去1カ月間は過去2年間の動きの一部巻き戻しであったとも言える。

<重要性増す日米10年スワップ金利差>

日米10年国債金利差とドル/円の相関関係は崩れてしまっているので、依然として相関を保っている日米10年スワップ金利差でみると、12月の日銀YCC修正前の時点から先週金曜日までの1カ月間で、日米10年スワップ金利差は20bp縮小した。

もう少し詳細にみると、12月20日のYCC修正から昨年末までに、金利差はむしろ拡大してしまっている。10年円スワップ金利は23bp上昇したが、10年ドルスワップ金利も29bp上昇した。大幅な円高にはなったが、日米金利差は日銀のYCC修正から想定されている方向とは逆に拡大してしまっていた。

また、1月18日の金融政策決定会合後、NYまでの動きをみると、10年円スワップ金利は9bp低下したが、10年ドルスワップ金利は17bpも低下したため、日米金利差は縮小した。それでも1円弱の円安となった。

<YCCの行方と米金利の動向>

ここから日銀のYCC政策がどのように変化するかはもちろんドル/円相場には重要だが、実際の日米金利差にとって重要なのは米金利の動きであり、日銀の金融政策変更で日本の長期金利が上昇するから日米金利差が縮小して円高になるとは、ストレートには言えそうにない。

今後も日本の長期金利が一段と上昇したら、日本の投資家のリパトリエーション(資金の本国還流)に対する思惑が強まり、米長期金利も大きく上昇するだろう。従って、12月20日以降の動きと同様、日米金利差は拡大してしまう可能性すらあると考えられる。

当社は日銀が今年半ばまでにYCCの10年金利変動幅を上下100bpまで拡大し、事実上YCCを撤廃すると予想している。その結果、日本国債の10年金利は0.75%─0.85%まで上昇すると予想している。

ちなみ10年円スワップ金利は足元でも0.75%程度の水準にあり、既にYCC撤廃を織り込んでいるとも考えられるが、もちろん、実際にYCCが撤廃されれば、スワップ金利はさらなる金利上昇を織り込んで上昇する可能性が高い。

仮に50bp上昇し、10年ドルスワップ金利が動かなければ、ドル/円は8円程度円高になる計算だ。しかし、実際には10年ドルスワップ金利も上昇してしまい、計算通りの動きとはならないだろう。

ここで日米10年金利差とドル/円関係について分析してみると、長期的には一定ではない。例えば、ドル/円相場が160円台まで上昇した1990年4月頃も、逆にドル/円相場が80円近辺だった2011年2月頃も、日米10スワップ金利差は現状と同水準だった。

<3月決定会合まで注目度高まる米金利動向>

2月10日頃に予定されている、次期日銀総裁・副総裁候補の発表後、候補者による国会でのヒアリングが行われるだろうが、現在の金融政策を踏襲するという言葉以外は期待できないだろう。

そして、次の3月9─10日の金融政策決定会合までは、まだ約7週間もある。そうなると、日米金利差がドル/円に与える影響いう観点からみると、ここからしばらくは米金利の動きが重要となってくるだろう。

FF金利先物市場は来年末までに米連邦準備理事会(FRB)が200bp程度の利下げを行うことを織り込んでおり、今年に入ってからのドル売りはこうした利下げ織り込みの進ちょくに沿っているように見える。

当社の米債券ストラテジストは10年米国債金利が今年前半中に4.0%まで上昇し、年末に現状レベルまで戻ってくることを想定している。仮に予想通りの展開となり、かつドル/円相場が今年中ずっと現在の日米10年スワップ金利差との相関を保つと想定したら、ドル/円は今年前半に8円上昇して、その後に8円下落して現状レベルに戻るような計算となる。

つまり、前述した日銀によるYCCの事実上の撤廃後のインパクトは、現状レベルからではなく、米長期金利が一定程度上昇した後に発生すると考えなければならないのである。これからの7週間、米雇用統計は2回、米連邦公開市場委員会(FOMC)と米消費者物価指数(CPI)はそれぞれ1回ずつ予定されており、米金利、米ドル側に大きな変化が発生してもおかしくはない。

編集:田巻一彦

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。

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