July 30, 2018 / 7:34 AM / 4 months ago

コラム:貿易戦争が翻弄、新興国中銀の抱える「ジレンマ」

[ロンドン 27日 ロイター] - 新興国の中央銀行当局者が担う仕事は、決して一筋縄ではいかないものだが、ここまで手綱さばきが難しくなったのは久しぶりだ。

 7月27日、新興国の中央銀行当局者が担う仕事は、決して一筋縄ではいかないものだが、ここまで手綱さばきが難しくなったのは久しぶりだ。上海の証券会社で6月撮影(2018年 ロイター/Aly Song)

彼らが直面している課題はいまや、その数や複雑さ、そして重大さのすべてにおいて増大しつつある。世界的に貿易摩擦がエスカレートし、米国の金利と債券利回りが上昇、ドルは強く、新興国の経済成長は鈍化しており、資本流出は加速している。

成長鈍化など、こうした一部の圧力に対する自然な対応は利下げだろう。しかし、逆に、弱い自国通貨や資本逃避といった他の問題に対応するには、利上げが必要となる。

いずれの場合も、健全さを損なう重大な警戒を伴う。各新興国の中銀対応に、今年は大きく違いが見られる理由はそこにある。

市場規模が大きい新興国上位10カ国(アルゼンチン、メキシコ、ロシア、トルコ、インドネシア、インド、メキシコ、中国、ブラジル、南アフリカ)の中銀による政策金利を巡る決定を分析したところ、今年は利下げが8回、利上げが13回行われた。

状況が変化するスピードとその程度によって、新興国の中銀が直面する課題に注目が高まっているが、その好例はアルゼンチンだろう。

アルゼンチン中央銀行は今年、利下げを2回、利上げを3回実施している。4月24日、同中銀は主要政策金利を27.25%に据え置いたが、そのわずか3日後には300ベーシスポイントも引き上げた。

中南米で2番目に大きなアルゼンチンは深刻な通貨危機に陥っており、国際通貨基金(IMF)から500億ドル(約5.5兆円)の融資枠を得ることが決まっている。政策金利を40%まで上げ、リセッション(景気後退)が予想されている。

アルゼンチンは極端なケースだが、新興市場がいかにボラタイルで予測不可能で、リスキーかを物語っている。

4月後半に危機が浮上し始めると、アルゼンチン中銀は迅速かつ積極的な行動に出るよう強いられた。同国がリセッションと高失業率の代償を支払うことになるのはほぼ間違いないだろう。

経常収支と財政の「双子の赤字」を抱えるトルコも、ひときわ目立つ存在だ。同国中銀は4月以降、政策金利を17.75%まで2倍以上に引き上げており、アルゼンチン同様、自国通貨は記録的安値に落ち込んでいる。

また、投資家と政策当局者にとっても、楽な道は存在しない。

利上げは自国通貨に対する強い売り圧力やインフレ圧力を和らげ、国内資産市場に外国資本を呼び込む一助となる。だがその一方で、こうした一連の行動は投資を直撃し、成長を抑制、失業率を上げ、経済をリセッションへと向かわせる可能性がある。

一方、借り入れコストの低下は、為替レートや、信用・投資経路を通じて低迷する成長の伸びを下支えするが、インフレを加速させたり資本流出を悪化させたりするリスクも伴う。

投資家と政策当局者にとっても、為替レートは極めて重要だ。緩やかな通貨下落は対処可能であり望ましいことも多いが、すぐさま雪だるま式に、資本逃避が誘発する大暴落に陥る可能性がある。非常に好ましくない事態だ。

米債券利回りとドルを上昇させ、世界の金融情勢をタイト化する米利上げによって、そのバランスをうまくとることが、一段と困難になっている。新興国の政府や企業は多大なドル建て債務を抱えており、債務返済の重荷は高まる一方である。

今年はこれまで、アルゼンチンの通貨ペソは対ドルで30%、トルコのリラは20%、ブラジルのレアルは10%下落している。ロシアのルーブル、インドネシアのルピア、南アフリカのランド、インドのルピー、中国の人民元も軒並み5─8%下落。一方、メキシコのペソは5%上昇している。

カストディアン(資産管理金融機関)大手の米ステート・ストリートによれば、新興国通貨は広く7%程度過小評価されており、多くの投資家に買い場を提供しているようにもみえる。

だが、2008年の世界金融危機や、2013年に米連邦準備理事会(FRB)が引き起こした「テーパー・タントラム」のような新興国の混乱を招いた過去の例から言えば、もし現在の混乱が深刻化したら、新興国通貨はさらに大きく下がる可能性がある。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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