January 26, 2017 / 4:54 AM / 2 years ago

コラム:トランプ氏の「国境税」と「国境調整」の違いは

[ワシントン 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米新大統領が海外移転企業からの輸入に「国境税」を課す方針を示しているのに対し、議会共和党は法人税の「国境調整」という、より複雑な措置を提案している。両者の違いと、これらの税制改革による勝ち組と負け組を検証した。

 1月25日、トランプ米新大統領が海外移転企業からの輸入に「国境税」を課す方針を示しているのに対し、議会共和党は法人税の「国境調整」という、より複雑な措置を提案している。写真は、メキシコから米国へと歩いて渡る人。カリフォルニア州で撮影(2017年 ロイター/Mike Blake)

●トランプ氏の提案とは

トランプ氏は、メキシコなど諸外国で製品を製造する企業を批判し、米国に輸出する製品に最大35%の関税を課すと脅している。これとは別に、標準的な法人税率を現在の35%から15%に引き下げるとも述べている。

●下院共和党案との違い

トランプ案の主な標的は、国内で製造していない米企業だが、対象をどこまで広げるかは明確でない。これに対し、ライアン下院議長(共和党)を筆頭とする議員らは、より幅広い税制改革に国境調整を盛り込みたい意向。標準的な法人税率の20%への引き下げと、企業が利益を出した場所で課税する制度への移行も提案している。

提案では、米国で使用、あるいは販売する輸入部品や最終財を税控除の対象から外す一方、輸出で得た収入は課税対象の所得から除外する。企業が節税のため、異なる法域間で製品を移動させたり、本社を海外に移転するインセンティブ(誘因)を減らすのが狙いだ。

現在、米企業が外国で稼いだ利益は国内で課税される(多くの場合、海外でも課税される)が、米国に利益を還流させなければ課税されない。輸出による収入と輸入コストはいずれも、米国での納税義務に算入されている。

トランプ氏は米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューで国境調整は複雑すぎるとの考えを示したが、その後、議会共和党議員らと協議すると述べた。

●本当にそれほど複雑なのか

ある意味では確かに複雑だ。企業は減税によるメリットと輸入品の税控除廃止によるコストを天秤にかけ、課税対策を見直す必要が生じる。国境調整が世界貿易機関(WTO)の規則に抵触するか否かを巡っても議論がある。WTOは付加価値税(VAT)のような間接税について国境調整を認めているが、さまざまな輸出補助金と同じく、所得税のような直接税の国境調整は禁じられる可能性がある。

定義上、国境調整税はVATとは認められない。賃金に関する経費が税控除の対象ではないからだ。米国の税制では、国内製品にはこの税控除が適用されるため、企業はこの点も考慮して対策を練る必要が生じる。

●勝ち組と負け組

トランプ氏と共和党議員は共に、国内の製造業を支援したいと述べている。トランプ氏の単刀直入な方法は、ほぼ確実にWTOの規則に抵触するだけでなく、貿易の流れを大幅に損ないかねない。他国が報復関税を掛ければなおさらだ。

国境調整なら、二重課税を撤廃することによって米国内で製造する企業に平等な競争環境が提供できるというのが、この方式の提唱者の言い分だ。輸出についてVATを免除する一方で輸入に課税している国は他にも数多くある。トランプ案に比べて報復措置を招くリスクも小さい。

しかし、各社にとっての便益とコストは五分五分ではない。輸入した衣料品や電子製品などを売る小売業者は、国境調整によりコストが増えると主張している。確かに、企業によっては実質的に利益より売上高に近い部分に課税する形になるため、法人税率の引き下げによる恩恵をコストが上回りそうだ。輸入部品に頼る自動車などの産業も悪影響を受ける可能性がある。石油輸入にも税が適用されるため、ガソリン価格も上がりそうだ。

半面、米航空機大手ボーイング(BA.N)など輸出規模の大きい企業は恩恵の方が大きくなるだろう。純粋に国内で事業展開している米企業は、法人税率の引き下げによって素直に恩恵を受ける。

●共和党は財政支出を懸念

共和党議員による国境調整案の核心には、財政問題がある。法人税率を引き下げれば税収は減る。ライアン議長のような財政保守派は、他の財源を確保せずに減税するのを嫌がっている。タックス・ファウンデーションによると、国境調整は今後10年間で1兆ドル以上の連邦税収を生み、財政赤字の縮小に寄与しそうだ。

これに対し、トランプ氏が提案する国境税による新たな税収は推計が難しい。貿易そのものが縮小する恐れがあるからだ。ただ、トランプ氏が「米国第一」主義を強調しているため、共和党議員らもこれまでほど声高に財政赤字の危険性を語ろうとしなくなるだろう。

●他に案はあるか

ホワイトハウスと議会が意見の一致を見ない場合でも、ライアン議長らは代替的な財源探しをあきらめないかもしれない。英国で試みられた銀行業に対する課税が一つの選択肢。

いずれにせよ、トランプ氏が一方的に国境税を課すのは難しく、議会の合意が必要になる。国境調整の例から分かる通り、トランプ氏が望むような単純な解決策はなさそうだ。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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