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コラム:トランプ政権下でどう働くか、米政府職員は戦々恐々
2017年1月24日 / 01:25 / 10ヶ月前

コラム:トランプ政権下でどう働くか、米政府職員は戦々恐々

[22日 ロイター] - もしあなたが米国政府の職員で、トランプ新大統領の政策に反対ならどうするか──。筆者にはその問いに答えられる経験がある。レーガン大統領の時代に国務省外務局に入り、オバマ大統領のときに退官した。24年間に及ぶ勤務のあいだに、何回か政権移行を経験している。一般職員で、ある大統領の任期だけに指名されて仕える政治任用官ではなかった。

 1月22日、もしあなたが米国政府の職員で、トランプ新大統領(写真)の政策に反対ならどうするか。ワシントンで20日撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)

トランプ政権最初の100日間と政府職員について、激しい議論が交わされている。メディアは当初トランプ氏が政治任用の職をすべて任命できないだろうと主張していたが、今では公務員と情報部員が「大挙して」辞職するリスクを提示している。

トランプ氏は異例だと専門家は述べ、変化は選挙の一貫で、時に選挙の核心であるという事実を無視している(カーター政権からレーガン政権、ブッシュ政権からオバマ政権といったイデオロギー的転換を目の当たりにしてきた)。それでも、今年のトランプ政権への移行は多くの人にとって、ドラマチックで、恐ろしいものですらあるようだ。

政府職員が抱いている懸念の一部は経験不足によるものだ。国務省外務局職員の平均勤続年数は12年で、政府職員全体で見ても14年を下回っている。つまり、多数の職員がオバマ氏以外の大統領の下で働いたことがなく、半数以上が民主党政権から共和党政権への移行を1度しか経験していないことを意味している。

だが、経験の程度にかかわらず、誰もが今後起きることに賛成とは限らない。実際には、どう対処すればいいのだろうか。

まずは深呼吸して、これがあなたの務めであることを思い出してほしい。政府職員は皆、公僕たることを憲法に誓う。オバマ氏やトランプ氏に対してではない。政府は米国を代表して大統領の政策を実行する。公務と呼ばれる所以だ。もしあなたが、間違った大統領候補が勝利したという理由で辞職しようと考えているなら、この仕事には向いていないかもしれない。

過去に多くの先達たちが倣ってきた戦略は、忍耐である。永遠に続く大統領、あるいは政策などない。世界で事件が勃発すれば、選挙公約など一夜にして吹っ飛んでしまうこともある。

政治任用官やイデオロギー信奉者、未経験者(そしていつも悪い人に混じって良い人も何人かいる。筆者が仕えた最高の大使は、支持政党出身ではなかった)は、予想よりも早く立ち去って、堅実な出世第一主義者が取って代わることもある。大局的な見方は役に立つ。どんな政権でも、そのすべての決断を支持したと断言できる人などいるだろうか。

居続けることは時に困難かもしれないが、少しでも楽にする方法はある。党派にあまり偏らない部署やプログラムを見つけることだ。筆者は四六時中、プロパガンダ活動をする羽目になった教育交流コーディネーターの仕事に従事した経験があるが、テクノロジーに関わる部署に異動してからは気が楽になった。

システムや政策を変えたいと考える人はいる。そうしたゴールには次のような「愛のムチ」的なリアリティーチェックが必要だ。ベストな状況下において、変化に対する自分の影響力はどの程度なのか。選挙があったからといって自分の力がレベルアップすると思うな。実際はその逆かもしれない。トランプ大統領によって政府に送り込まれる政治任用官は、大統領の政策課題を推進する目的を抱いている。彼らは権力者と話ができるが、あなたはそうはいかないだろう。

政策やプログラムに強く反対する意思の持ち主は、法の許す範囲内で、自らが抱く懸念を拡散するためにジャーナリストに協力することを考えるかもしれない。だが、適格な弁護士にまず相談することなしに、電話したりメールを送ったりしてはいけない。情報漏えい者は政府から寛大な扱いは受けられず、薄っぺらな言い訳のせいで結果的に機密情報へのアクセス権限も失いかねないということを忘れてはならない。

最後の選択肢は、辞職を検討することだ。皆、良心には限度がある。

だが、辞職する人はほとんどいないだろう。拷問、ドローンによる殺害、米国民と同盟国への監視活動、情報操作といった、15年に及ぶ「テロとの戦い」で大きな道徳的結末を招いた政策は今に始まったことではない。結果的に辞職した公務員はほとんどいなかった。「大挙した」辞職とはほど遠い状況だ。

近年、国務省内で最もあつれきが生じた1つは、2003年のイラク戦争を支援するため、外交官を大規模派遣するという決断においてだった。内部の反発があまりに大きく、当時のライス国務長官は、危険を伴う任務は志願によって行われてきた長年の伝統を破り、強制的にイラクで勤務させると脅したほどだった。

その結果、必要とあらば、大半が自主的にイラク勤務を申し出た。数千人いる国務省職員のうち、良心から辞職を願い出たのはわずかに3人。一握り以上の職員が辞職したのは、ベトナム戦争さなかであった。

政府の職を辞することは、家族関係、機密情報へのアクセス権限、将来の政府や請負での仕事、学生ローンの担保、自身の精神衛生といったあらゆることに影響する最後の手段である。年金や他の退職手当の受給資格は20年以上の勤務期間を必要とする。17年勤務している職員はほとんど辞めないだろう。すべてをリスクにさらす決断は非常に個人的な問題で、皆が団結して決められることではない。

筆者の場合は、ブッシュ、オバマ両大統領の下で行われたイラク再建計画における浪費や不正、管理不行き届きが、良心の限界を超えてしまった。そして然るべき手段を取ることで可能な変化も見られなかったことから、筆者は「We Meant Well: How I Helped Lose the Battle for the Hearts and Minds of the Iraqi People」と題する本を執筆し、内部告発することを選んだ。

筆者が反対したのは、2人の大統領が追い求めた政策であった。その1人は、筆者が実際に1軒1軒回って選挙活動を支援した大統領だった。国務省は刑務所送りにすると脅し、解雇して年金を受給できないように試み、最終的には早期退職に追い込んだ。

トランプ政権はまだ始まったばかりだ。まずは落ち着こう。人ではなく、懸念すべき個別の政策に集中しよう。感情的にではなく、実務的に考えよう。良心が求めるなら、他の選択肢を考慮しよう。道義的立場も取れるが、その場合はいっさいの代償を払うことも心すべきだ。

*筆者は米国務省に24年間勤務。著書に「We Meant Well: How I Helped Lose the Battle for the Hearts and Minds of the Iraqi People」など。「Hooper’s War: A Novel of WWII Japan」が刊行予定。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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