December 8, 2017 / 11:25 PM / 4 months ago

コラム:エルサレム首都認定でトランプ氏が招く「悲惨な代償」

Peter Van Buren

 12月7日、トランプ大統領が、約70年にわたるアメリカの政策を転換し、エルサレムをイスラエルの首都と認定したことは、任期中で最も不必要な決断であったことはほぼ間違いない。写真は抗議するパレスチナ人。ガザで撮影(2017年 ロイター/Mohammed Salem)

[7日 ロイター] - トランプ大統領が、約70年にわたるアメリカの政策を転換し、エルサレムをイスラエルの首都と認定したことは、任期中で最も不必要な決断であったことはほぼ間違いない。

この影響は、トランプ氏がホワイトハウスを去った後も長期間にわたって尾を引くことになるだろう。国内では、ユダヤ人やキリスト教福音主義者の支持を得られるかもしれないが、世界的に見れば、大きな代償を払うことになるだろう。

──関連記事:米国のエルサレム首都認定に注目すべき理由

エルサレムはイスラエルの大統領が統治しており、議会や最高裁判所のほか、大半の政府機関が置かれている。実質的には、首都として機能している。

だが、米国は大使館を別の都市、テルアビブに置いている。西エルサレムに領事館を、東エルサレムには領事館の別館を設置している。

東エルサレムは、1967年にイスラエル領となり、多くのパレスチナ人が国家樹立の際の首都にと望んでいる。米国はまた、イスラエルとパレスチナ自治区の境界「グリーンライン」にもオフィスを構えている。

外交官やイスラエル当局者は通常、大使館を首都に置かれる「本店」として、そして領事館は他の地域に設置される「支店」のようなものだと理解している。しかし同時にイスラエルにおいては、掲げられているネームプレートにかかわらず、仕事を遂行するにはどちらのドアをたたけばいいのか、経験上よく承知している。

こうしたことは、何もイスラエルに限ったことではない。台湾でも同様のシステムが機能しており、当地の平和を維持している。

米国は1979年、中華人民共和国の「現実」を認定し、北京を首都だと認め、正式な外交相手を台湾からシフトさせた。台北には大使館を置かず、その代わり米国在台湾協会を設けた。

実務処理を行う非政府機関となる同協会は、米国務省から、全職員だけでなく「運営に当たり、資金と指導の大部分」を受けている。大使は存在せず、代表者は「所長」と呼ばれる。このような外交マジックによって、台北にある同協会は大使館ではないと位置付けられている。

これにより、米国、台湾、中国は、「われわれの生きているうちには解決不能」な地政学的問題に真っ先に取り組む必要がなく、実務的な外交に徹することができる。

これこそがまさに重要な点である。エルサレムをイスラエルの首都と正式に認め、大使館を当地に移転させるというトランプ大統領の決断は、皆が認識していたが、あえて触れないでいた問題を、白日の下にさらすことになるのだ。

米国とエルサレムの場合、1995年に制定された法律(Jerusalem Embassy Act)に基づく政治芝居によって、現状を維持してきた。同法の下、米大使館はテルアビブにとどまり、必要な業務をこなしていた。中東の複雑な政治に関わる人々は誰もが、(エルサレムかテルアビブか)どちらがニーズに最も合うかを見極めることができた。

同法は1999年までに大使館をエルサレムに移転することを求めていたが、政治的に都合の良い抜け穴があり、歴代大統領は安全保障上の理由から半年ごとに法執行を延期することができた。

トランプ大統領は数カ月前、仕方なく法執行を延期した。今回、エルサレムの首都認定を発表してからまもなく、大統領は国務省に予算問題で官僚主義的な猶予を与えたが、同時に大使館移転のためエルサレムに新しい建物を建設するという何年もかかる計画を明らかにした。

 12月7日、トランプ大統領(写真)が、約70年にわたるアメリカの政策を転換し、エルサレムをイスラエルの首都と認定したことは、任期中で最も不必要な決断であったことはほぼ間違いない。ワシントンで6日撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)

エルサレムへの大使館移転に関する法律は、実際的な解決策だった。トランプ大統領が言うような、パレスチナとイスラエルを正式な和平に導くことができなかった失敗策などではない。エルサレムの隠れた役割は機能していた。

トランプ大統領の行動は、主要国などに対し、パレスチナとの和平プロセスはもちろんのこと、彼らがイスラエルと抱えるいかなる他の問題もさておいて、代わりに米国の新たな方針に対する立場を明らかにすることを求めてもいる。

今回の決定は世界中で反響を引き起こし、各国のリーダーが無責任で危険な措置だと非難している。

当面の懸念は、米国とヨルダンの関係だろう。米同盟国のヨルダンは、シリア内戦において自国の領地を拠点として米国に提供した。両国は重層的で強固な安保体制を敷いており、過激派組織「イスラム国」との戦いにおいても協力しうまく対処していた。正式な協定というより個人的な関係に基づくことが多いものの、米国とヨルダンは揺るぎない関係を築いていたと、数人の米外交官が筆者に語った。

しかし、トランプ大統領の発表を受け、ヨルダンのアブドラ国王は「地域の安定と安全保障に対する危険な影響」について警鐘を鳴らした。同国において、エルサレムを巡る問題は根深い。

父親のフセイン国王は、1967年の第3次中東戦争によって、東エルサレムをイスラエルに奪われた。アブドラ国王自身は、2013年にパレスチナ自治政府とのあいだで結ばれた協定の下、エルサレムにあるイスラム教とキリスト教の聖地の管理人となっている。

ヨルダン首都アンマンに駐在する米外交官らはあらゆる面で影響を目の当たりにし、自分たちの技量が試されることになるだろう。アラブ諸国の指導者は誰も、米国に表だって振り回され、屈辱を受けたと見られたくはないだろう。

もう1つの懸念は、エジプトとの関係だろう。中東の民主化運動「アラブの春」の記憶も今なお新しく、エジプトの指導者らはヨルダン以上に世論を意識して行動するに違いない。トランプ大統領の発表を受け、エジプトの議員らは武器など米国製品のボイコットを呼びかけた。

エジプトもイスラム原理主義の危険にさらされており、ある閣僚はトランプ大統領の決定について、テロリストと戦うのではなく彼らをあおるものだと警告した。イスラム過激思想のなかでエルサレムが果たす役割を過小評価すべきではない。

トランプ大統領による今回の措置は神経質になるべき時期に行われた。エジプトは、ロシア軍戦闘機に自国の領空と基地を1973年以来初めて使用を許可する仮協定を結んだばかりだからだ。

今後しばらくは暴力と抗議活動が続くだろう。それらが収束した後も長いこと、米外交官は身動きが取れなくなるだろう。トランプ大統領による今回の行動への対処にまずは追われ、それからあらゆる問題について交渉しなくてはならないのだから。

今回のことは、不必要な爆弾ツイートや別のニュースが話題となれば忘れ去られるような露骨な発言とはわけが違う。トランプ大統領は、実際に機能していた政策を転換してしまったのだ。その影響はホワイトハウスを去った後もずっと響きわたることになるだろう。

*筆者は米国務省に24年間勤務。著書に「We Meant Well: How I Helped Lose the Battle for the Hearts and Minds of the Iraqi People」など。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

 12月7日、トランプ大統領が、約70年にわたるアメリカの政策を転換し、エルサレムをイスラエルの首都と認定したことは、任期中で最も不必要な決断であったことはほぼ間違いない。写真は抗議デモに参加するパレスチナ人。パレスチナ自治区ヨルダン川西岸で撮影(2017年 ロイター/Mohamad Torokman)

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