March 25, 2018 / 11:18 PM / 8 months ago

コラム:トランプ氏、元政権スタッフに「口封じ」できない訳

[ニューヨーク 19日 ロイター] - 米紙ワシントン・ポストは18日夜に掲載したコラムで、トランプ政権がホワイトハウス高官に対し、機密情報の公表を禁じる同意書への署名を求めていると伝えた。所属期間だけでなく、ホワイトハウスを去った後も禁止するというものだ。

 3月19日、米紙ワシントン・ポストはコラムで、トランプ政権がホワイトハウス高官に対し、機密情報の公表を禁じる同意書への署名を求めていると伝えた。写真はトランプ米大統領。ワシントンで20日撮影(2018年 ロイター/Leah Millis)

同紙コラムニスト、ルース・マーカス氏は、機密保持契約(NDA)の原案を入手。それによると、ホワイトハウス勤務期間に得た非公開情報の機密保持違反1件につき、1000万ドル(約10億6000万円)の罰金が科されるという。ただし、罰金は最終案で減額される可能性があるとマーカス氏は言う。

ホワイトハウスは、「(職員が)1000万ドルの罰金条項を含むNDAへの署名を求められたことは一度もない。ましてや、セキュリティーや人事に関する問題について、われわれは協議しない」と、CNNのジェイク・タッパー記者に対して19日コメントした。

ロイターは、ワシントン・ポスト紙の報道を確認できなかった。また、同紙コラムに対する質問の回答も得られなかった。

<根本的欠陥>

巨額の罰金リスクが、トランプ政権に関する機密情報のリークを躊躇(ちゅうちょ)させることは確かかもしれない。だが、報じられたようなNDAが、もし法廷で争われることになれば、法的強制力がないと見なされることはほぼ確実だ、と政府機密と合衆国憲法修正第1条に詳しい法律学教授2人は指摘する。

同紙が指摘するように、NDAは憲法上、根本的欠陥をはらんでいる。ホワイトハウス職員はトランプ大統領のために働いているわけではない。彼らは米国のために働いている。したがって、NDAによって恩恵を受けるのは米国と仮定される。

同様に、NDAを遂行する責任も、トランプ大統領ではなく米国にあると、ミネソタ大学のハイディ・キトロッサー教授と、フロリダ大学のマーク・フェンスター教授は指摘する。だが、憲法修正第1条によって言論の自由は守られている。

「こうしたNDAが、憲法修正第1条に違反していることは明らかだと、私には思える」とキトロッサー教授は言う。「公務員が、話す権利を放棄することを強制されてはならない」

<注意点>

ここで、いくつか重要な注意点も指摘しておきたい。

第1に、米国の非営利団体「政府監視プロジェクト(POGO)のリズ・ヘンポウィッツ氏は、トランプ政権のNDA案の最終版についてはまだ明らかになっていないと述べた。

POGOはホワイトハウス職員の口を封じようとする動きについて「極めて重大な懸念」を抱いており、とりわけ職員が不正行為の疑いを報告することが禁じられていないことを明確に示す言葉が含まれていないことを危惧している、とヘンポウィッツ氏は言う。

ただ、行政機関が、政府との和解交渉の詳細を内部告発者が公表することを禁じる法的強制力のあるNDAは存在すると同氏は指摘する。

トランプ政権のNDAは、もし報じられたような草案であるなら、より広範囲に及ぶため、内部告発者との契約よりも厄介だと、同氏は主張する。ただし、それを直ちに違憲とみなすことには警鐘を鳴らす。

さらに言えば、公務員は憲法修正第1条の完全な保護を受ける権利はない。

米連邦最高裁判所のガルセッティ判決(2006年)では、職務に関わる発言において公務員が解雇または処分の対象となるとの判断が下された。このような訴訟の下では、政府職員は、自らの職務について懸念を表明した場合、それによって生じた結果に直面する可能性がある。

連邦最高裁はまた、機密文書を扱う政府職員に対する事前審査を支持している。

連邦最高裁は1980年、元米中央情報局(CIA)諜報員のフランク・スネップ氏が、CIAの審査を経ずに南ベトナムにおけるCIAの活動に関する本を出版したことは契約違反だとする判断を下した。

<憲法修正第1条による権利>

したがって、もしあなたが現職の政府職員、元諜報員か米連邦捜査局(FBI)捜査員、もしくは機密情報を扱っている場合、それを漏らすことはトラブルの種となる可能性がある。職か利益を失うかもしれない。

だがワシントン・ポスト紙が伝えたように、トランプ政権のNDAは対象を現職員以外にも拡大し、違反した場合には厳罰を処すとされる。まさにそこにこそ、憲法上と管理上の問題がある。

大統領には機密情報を漏らすホワイトハウス職員を解雇する権限があると、キトロッサーとフェンスターの両教授は指摘する。そのような職員は、刑事告訴を含め、さらなる厳罰に直面する可能性がある。言い換えれば、トランプ大統領は、自身のスタッフに対し、リークすればどうなるかにらみを効かすのにNDAなど必要ない。

では、機密情報にアクセスしていた元ホワイトハウス職員についてはどうだろう。

連邦最高裁によるスネップ判決に従い、職員は事前に許可を得なくてはならない。しかし、前出の法律学教授2人と国家安全保障が専門の弁護士ブラッドリー・モス氏は、政府機関は機密情報の審査だけすればいいことになっていると話す。

元職員が機密扱いではない情報を公表することは、憲法修正第1条により権利が保障されている。

「政府は、機密ではない情報の審査に正当な権利をもたない」と、ワシントンDC巡回区控訴裁判所は1983年のマギー判決で記している。この訴訟では、CIA元諜報員が、事前審査のため原稿を提出後に検閲されたと訴えていた。

同裁判所は、ラルフ・マギー氏の雇用契約について「機密扱いではない情報あるいは公表されている情報源までは及ばない。政府はそのような情報を『契約や別の方法によって』検閲してはいけない」としている。

もしトランプ政権が、ホワイトハウス元職員の機密扱いではない情報開示を禁じるNDAを実施しようとするのであれば、憲法修正第1条に基づくこうした判決は大きな障害となって立ちはだかるだろう。

<実現可能性>

また、トランプ氏が大統領職を去れば、新たな別の障害が発生すると、前出のフェンスター教授は指摘する。トランプ大統領が一般市民に戻れば、NDA実施の責任はトランプ氏ではなく政府にある。未来の大統領は、トランプ政権の職員を取り締まるために政府のリソースを費やしたいとは思わないだろう。

 3月19日、米紙ワシントン・ポストはコラムで、トランプ政権がホワイトハウス高官に対し、機密情報の公表を禁じる同意書への署名を求めていると伝えた。写真はトランプ米大統領。ワシントンで20日撮影(2018年 ロイター/Leah Millis)

「政治に関わったことが一度もないドナルド・トランプ氏のような人が、政権を握り、このようなことをしたいという考えに至ったことは理解できるかもしれない。だが、実現はしないだろう」と、フェンスター教授は語った。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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