July 17, 2018 / 7:47 AM / 3 months ago

コラム:欧州でトランプ大統領が見せた不穏なサミットゲーム

[16日 ロイター] - 米ロ首脳会談を終えたトランプ大統領がロシアのプーチン大統領と行った共同記者会見は、結局のところ、多くが恐れていたほどのサプライズはなかった。

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との米朝首脳会談とは対照的に、軍事演習の中止といった地域同盟国に不意打ちを食らわせるような発表は行われなかった。

だがヘルシンキで16日に行われた米ロ首脳会談の内容は、トランプ大統領による欧州訪問の前半部分と同じく、反トランプ派を激怒させ、自身の政治基盤では好評を博し、欧州各国を動揺させるだろう。実際のところ、それこそが狙いだったかもしれない。

ロシアのプーチン大統領にとって今回の米ロ会談は、閉幕したばかりのサッカーワールドカップ(W杯)と同様に、成功裏に終わったと言える。2016年米大統領選へのロシア介入疑惑を巡り、トランプ大統領が基本的にロシアを非難せず、自国の情報機関ではなくロシア側に付き、モラー連邦特別検察官による同疑惑捜査を「最悪」だと述べたことは、プーチン氏にとって勝利だ。

同会談の2日前に米連邦大陪審がロシア軍情報部の当局者12人を起訴したことはトランプ氏を激怒させたに違いないが、ロシアとプーチン氏を対等な交渉パートナーとして扱う妨げにはならなかった。

先週の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議と英国訪問において、トランプ反対派を黙らせ、アジェンダを奪い取り、欧州のニュースを支配したことについて、トランプ氏は明らかな政治的勝利だと考えている。

トランプ大統領は、タフで独裁的な海外指導者との交渉を楽しんでいる。民主的に選ばれた海外首脳の大半よりも意気投合しているようだ。ロシアと北朝鮮の両国は、米政権との関係を築いていく上で似たようなビジョンを描いている。定期的に注目を引く会談を開き、そこではほとんど何も放棄もせず、あるいは手に入れることもないが、対話は継続されるというものだ。

他方、西側指導者は、どこに向かっていいのか確信を持てずにいる。

言うまでもなく、トランプ大統領は、海外で自身についてどう思われようが気にしないということは本当だろう。欧州訪問の前半部分、とりわけブリュッセルでのNATO首脳会議は、自身の支持基盤に向けた演出だったように見える。トランプ氏は不満をぶちまけ、特に欧州の防衛費についてなど、望んでいた主張を行った。そして自らその成功を宣言し、彼の敵は引き下がったと主張した。

マクロン仏大統領らの発言から判断するに、現実はもっと複雑だったかもしれない。NATO首脳会議において、トランプ大統領の仲介により、欧州の防衛費を大幅に引き上げるための合意には至らなかったようだ。

 7月16日、ヘルシンキで行われた米ロ首脳会談の内容は、トランプ大統領(左)による欧州訪問の前半部分と同じく、反トランプ派を激怒させ、自身の政治基盤では好評を博し、欧州各国を動揺させるだろう。実際のところ、それこそが狙いだったかもしれない。写真右はロシアのプーチン大統領(2018年 ロイター/Kevin Lamarque)

もし欧州各国がそうした措置を選ぶとすれば、それは、米国への不満、具体的に言えば、米国が慢性的に信頼できず、予測不可能であり続けることへの懸念といった、彼ら自身の理由からにほかならない。

ほとんどの欧州指導者はトランプ大統領に対する関心が薄く、彼に反対すれば自身の政治基盤が喜ぶと分かっている。メイ英首相のように、米国がもっとも必要だと考える指導者は、トランプ大統領とうまくやる戦術を独自にあみ出しつつある。

メイ首相は、トランプ氏が先週行った英タブロイド紙とのインタビューにおける非常に非外交的な発言をほぼ無視した。同インタビューの中で、トランプ氏はメイ氏によるブレグジット(英国のEU離脱)のアプローチを猛烈に批判した。

これに対し、メイ首相は翌日の基調演説で、2016年の米大統領選でトランプ氏が勝利した主要州に投資している数々の英国企業を挙げてみせた。恐らく、勝利をたたえることがトランプ氏の心に訴える近道となり得ると、メイ氏も安倍晋三首相など各国指導者から学んだのだろう。

その意味では、少なくとも、世界はトランプ大統領に順応しており、トランプ氏も世界に順応している。

有権者が分断していることは言うまでもなく、広範囲に及ぶ政治的、外交的な米国の指導層からの反対にもかかわらず、トランプ大統領は、良くも悪くも権力のレバーの使い方を一段と学んだようだと、筆者は今年に入って指摘した。従来の外交儀礼にのっとるよう助言した人たちは非常に嫌うだろうが、トランプ氏は現在、国外でも同じことをしようとしている。

だが欧州は、トランプ大統領のスタイルが一時的なものではなく、トレンドになりつつあることに懸念を強めている。

トランプ氏のアプローチは一時的な逸脱ではないかもしれない。それは、真実にはほとんど耳を貸さず、強引さを増すロシアからの支援や、政治ショーなどで頭の大半が占められているポピュリスト新世代の先駆けなのかもしれない。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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 7月16日、ヘルシンキで行われた米ロ首脳会談の内容は、トランプ大統領(左)による欧州訪問の前半部分と同じく、反トランプ派を激怒させ、自身の政治基盤では好評を博し、欧州各国を動揺させるだろう。実際のところ、それこそが狙いだったかもしれない。写真右はロシアのプーチン大統領(2018年 ロイター/Leonhard Foeger)

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