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コラム

コラム:トランプ氏から関税発動権限を取り上げよ

[ワシントン 13日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 武器をおもちゃのように扱ってはならない。しかしトランプ米大統領はトルコ在住の米国人牧師拘束問題を巡り、鉄鋼関税という武器をおもちゃのように扱っている。

 8月13日、トランプ米大統領(写真)は、トルコ在住の米国人牧師拘束問題を巡り、鉄鋼関税という武器をおもちゃのように扱っている。NY州で撮影(2018年 ロイター/Carlos Barria)

国家安全保障は貿易制限の正当な理由になり得るが、気まぐれに発動すると米国自体が傷を負う。議会は大統領からおもちゃを取り上げるべき十分な理由があるが、その覚悟はないのかもしれない。

トランプ氏は10日、トルコから輸入する鉄鋼への追加関税を50%に倍増するとツイッターに投稿した。前回の関税によって鉄鋼輸入が十分に減っておらず、引き上げは国家安全保障上、国益にかなうというのが理由だ。これは報復に見える。これに先立ち、トルコに2年間拘束されている牧師の解放交渉が決裂していたからだ。

実際、トルコは米国の関税が既に効果を発揮している数少ない国の1つだ。トルコは米国の鉄鋼輸入先として第7位だが、今年のトルコからの鉄鋼輸入額は前年比60%近く減少した。この間、中国からの鉄鋼輸入はわずかながら増えている。

トルコの通貨リラは10日、さらに急落した。エルドアン大統領は経済戦争を仕掛けられたと述べている。トランプ氏はこれまでも北朝鮮や中国、イランに腹を立て、衝動的に関税や制裁、その他の経済的な武器を使ってきた。今のところ実際の戦争は始まっていないが、もはやそうした事態も想定外とは言えなくなった。

従って、議会は大統領から通商上の権限を奪い返すべき時に来ている。米合衆国憲法は、議会に対外通商の権限を与えている。共和党のボブ・コーカー、パット・トゥーミー両上院議員は、国家安全保障上の理由で関税を課す際、議会の承認を義務付ける法案を提案中だ。

それでも十分ではない。トランプ氏の衝動的な性格を考えれば、あらゆる関税について議会の承認を義務付けるべきだ。完璧な世界であれば、責任を持って関税を扱えないトランプ氏のような大統領から、議会は一時的に関税の権限をすべて取り上げるだろう。それは現実的でないとしても、議会はもっと剛腕を発揮する余地があり、大統領が危機を引き起こす前にそうするのが最も理想的だ。

●背景となるニュース

*トルコ中央銀行は13日、リラの下落を阻止するため、市場に流動性を供給するとともに、トルコの銀行の預金準備率を引き下げると発表した。リラはドルに対して今年、40%超下落している。

*トルコからの鉄鋼・アルミニウム輸入の関税を倍増するとしたトランプ大統領の発表を受け、リラは10日に最大18%下落した。トルコと米国は、拘束された米国人牧師の解放交渉が決裂していた。鉄鋼関税は50%、アルミニウム関税は20%に引き上げられた。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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