April 3, 2018 / 7:48 AM / 6 months ago

コラム:トランプ氏のエゴを満たす「貿易交渉術」のすすめ

[2日 ロイター] - トランプ米政権は、海外の関税と貿易障壁を軽減したいと訴えてきた。これは立派な目標だ。平均的な税率は概ね低くても、衣料品など特定の製品には、かなり高い関税がかけられているからだ。

 4月2日、相手国が貿易慣行を改めない限り、米国は高関税を課すという脅しのような米政権のアプローチは、圧力をかける手段として成功する可能性は低い。写真は、トランプ米大統領。オハイオ州で3月撮影(2018年 ロイター/Yuri Gripas)

同政権は、中国からの輸入品500億ドル(約5.2兆円)相当に対して新たな関税をかけると最近発表した。残念ながら、相手国が貿易慣行を改めない限り、米国は高関税を課すという脅しのような米政権のアプローチは、圧力をかける手段として成功する可能性は低い。(中国政府は2日、米国製品128品目に最大25%の追加関税を導入する報復措置を明らかにした。)

もっとましなアプローチは、国際貿易交渉を新たに行うことだ。これが成功すれば、「トランプ・ラウンド」として歴史に名を残すことになるだろう。トランプ大統領のエゴをくすぐるかもしれない。

対中関税以外にも、鉄鋼・アルミニウム製品に新たな関税をかけるというトランプ大統領の決断は、米同盟諸国に衝撃を与えた。彼らは自国が適用対象外となるか、確信を持てずにいた。(一部の国は現在、一時的に適用除外が認められている。)

こうした関税を課す理由について、トランプ政権は国家安全保障のためだと主張しているが、他国に障壁を軽減するよう圧力をかける手段として関税が使われている可能性がある。

だが、海外の貿易障壁を標的にするやり方はうまくいかないだろう。他国もそれぞれの国内政治に重点を置いているため、いじめに屈する可能性は低い。結果として、海外の障壁を下げるよう求める米国の一方的要求は、そのような米国の脅しにもかかわらず、無視されるか、報復を受けることになるだろう。

代わりに、新たな多国間貿易交渉「トランプ・ラウンド」を行うことにより、他国との互恵的な関税引き下げと他の貿易障壁の軽減を通して、米政権は目標を達成することが可能だ。

トランプ氏は大統領に就任した当初から、「多くの貿易協定」について交渉することは政権の通商政策の重要な一部であると明言し、2国間交渉を望んでいると強調していた。しかし就任から1年が経過した今、ホワイトハウスは新たな2国間協定に向けた交渉を何も始めてはいない。すでに存在する2つの協定の再交渉を行っているだけだ。

1つは、カナダ、メキシコ、米国の3カ国で構成される北米自由貿易協定(NAFTA)で、トランプ大統領は同協定の破棄をちらつかせている。もう1つは米韓自由貿易協定(KORUS)で、両国は新たな協定に合意したが、トランプ大統領は先月29日、北朝鮮と非核化合意が得られるまで保留する可能性があることを示唆した。(就任後まもなく環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を表明したトランプ大統領だが、再びそれに参加することを検討するとも語っている。)

トランプ政権は2国間協定を好んでいるかもしれないが、相手国から譲歩を確実に手にするには非効率的なアプローチだ。国ごとに交渉するのは多大な時間を要する。また2国間交渉は、世界で名を上げたいトランプ氏のような人物にとっては十分ではないかもしれない。

多国間交渉であれば、どうだろうか。トランプ大統領の視点から見れば、その恩恵は明らかなはずだ。

ダグラス・ディロン元米財務長官の名を冠した「ディロン・ラウンド」や、ジョン・F・ケネディ元米大統領の名から「ケネディ・ラウンド」と呼ばれる交渉は、関税貿易一般協定(GATT)が交渉の場として成功したことを証明した。また、世界貿易機関(WTO)の礎を築く一助となった。

「トランプ・ラウンド」も歴史に残る可能性がある。多国間貿易交渉の妥結により、同大統領の遺産を確固たるものにするだけでなく、米国が国際貿易自由化のリーダーとして返り咲くことにもなろう。全参加国の関税を引き下げ、貿易をより自由(あるいはトランプ氏が好む言葉で言えば「公正」)にすることで同氏は高い評価を得るだろう。

米国が交渉する場合、そこで問題となるのは、何について交渉すべきなのか、ということだ。トランプ大統領はとりわけ、高関税に注目しているようである。スタート地点としては、悪くない。

海外の関税が時に米国のそれよりも高い理由の1つとして、過去の貿易交渉において、米国の交渉担当者が、関税引き下げよりも知的財産や他の問題に関する規制を求めてきたことが挙げられる。トランプ政権は、関税を交渉のテーブルに押し戻すことは可能だろう。

1947年以降、GATT締約国は多国間貿易交渉を8回行い、妥結に至っている。成功を収めた最後の交渉は、1994年に妥結した「ウルグアイ・ラウンド」で、123カ国が参加した。同ラウンドにより、WTOが設立された。これは「史上最大の交渉」と見なされている。幅広い製品の関税引き下げや、反ダンピングや補助金、他の非関税障壁に関する規制を制定した。

WTO加盟国は現在、164カ国に上る。その中には、2001年に加盟した中国も含まれる。中国の関税や他の貿易障壁は、他国と比べてずっと高い。これは、WTO加盟交渉時の中国が、比較的貧しかったことが一因である。

中国が裕福となった今、他国は中国に障壁をさらに軽減することを求める権利がある。トランプ政権は多国間交渉を利用することによって、中国に対して、障壁のさらなる軽減や、多国間におけるより厳格な義務の受け入れを迫ることができるだろう。

多国間貿易交渉は他の理由からも有益だ。

2001年に始まり、失敗に終わった「ドーハ・ラウンド」は、非常に広範囲にわたる課題に取り組んだ。課題を絞ったものにすることが、「トランプ・ラウンド」成功の鍵となるだろう。

「ドーハ・ラウンド」は、先進国の非農産物市場における関税を最大8%に引き下げ、発展途上国の場合はそれより高い関税とすることを提案した。トランプ政権は、最貧国は別として、全体的にさらに低い関税を求めるという、より大胆な措置を講じることが可能だ。トランプ大統領が訴えている公正な貿易システムに取り組む上でも役立つだろう。

トランプ政権が海外貿易障壁の軽減を目指すのは正しい道だ。ただし問題なのは、同政権がこれまでのところ、どこにも通じない、あるいは貿易戦争を招きかねない道を進んでいるということだ。だがもし政権が多国間交渉を真剣に検討するなら、成功する可能性がある。

それは気の遠くなるような仕事であり、交渉には断固たる決意と努力を必要とする。だが、それに成功する人物は、国際貿易システムに永続的で揺るぎない足跡を残すことになるだろう。

*筆者の1人、サイモン・レスターは米シンクタンク「ケイトー研究所」の政策アナリスト。もう1人のイヌ・マナクも同研究所の客員研究員。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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