for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up
コラム

コラム:トランプ氏の「壁」、2.46兆円のまずい投資選択に

[ニューヨーク 10日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 216億ドル(約2.46兆円)をどう使うか──。トランプ米大統領はそれを「些細(ささい)な」問題だと呼ぶかもしれない。国土安全保障省の内部報告書によると、メキシコ国境沿いの壁の建設にはそれだけの費用がかかるという。大げさな見積もりを差し引いても、まずい投資選択と言える。

 2月10日、米国土安全保障省の内部報告書によると、メキシコ国境沿いの壁の建設には216億ドル(約2.46兆円)の費用がかかるというが、大げさな見積もりを差し引いても、まずい投資選択と言える。加州サンディエゴ付近のメキシコ国境とのフェンス沿いで昨年11月撮影(2017年 ロイター/Mike Blake)

フェンスと壁で作られる「トランプウォール」は、実用的な防壁というより政治的な象徴だ。大統領と議会は、壁のコストと資金を他に回すことを天びんにかける必要がある。これはトランプ氏のようなビジネスマンが口にすることがある機会費用というものだ。

軍最高司令官であるトランプ氏は米軍強化を指示している。米ハンティントン・インガルス・インダストリーズHII.Nとの交渉で、130億ドルの空母2隻に相当する資金が壁の建設費としてひねり出せるのだろうか。

またトランプ氏は、エネルギーセクターにおいて米石炭業界の復興を目指している。シナプス・エナジー・エコノミクスによると、600メガワットの石炭火力発電所の建設コストは数年前に20億ドル。壁建設をやめて、発電所を10基作ることにすれば、汚染物の除去技術を導入する資金も残る。

インフラ分野でもそうだ。投資家のウィルバー・ロス氏やエコノミストのピーター・ナバロ氏が練り上げた大統領の計画によると、1670億ドルの出資にレバレッジを効かせて1兆ドルにして、道路や橋、鉄道などに投資する計画だという。これと同様の前提で、壁の建設コストをこうした資産に投資する場合、全部で1300億ドルの資金を活用できることになる。

約4兆ドル規模の連邦政府予算から財源をどう確保するのかも難しい。壁計画をやめれば、例えば労働省の1─2年分の予算を賄うに十分な予算を確保できる上に、トランプ氏お気に入りのツイッターTWTR.Nを買収できるぐらいの資金も残る。

大事なことを言い忘れていたが、文化面への転用も考えられる。トランプ氏の芸術好きは、自画像制作を発注する程度のものかもしれない。しかし、連邦政府は全米芸術基金の支援に年間1億5000万ドルを拠出している。トランプ氏は壁が「美しい」ものになると公約しているが、そうではなく、すべての米国民が今後150年にわたり「芸術の美しさ」を体験できるようすることも可能なのだ。

●背景となるニュース

*米国がメキシコ国境沿いに建設する壁について、国土安全保障省の内部報告書で最大216億ドルの費用と3年以上の期間が必要との見積もりが示されたことが明らかになった。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up