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コラム:白人至上主義に目をつぶるトランプ氏の危うさ
2017年8月18日 / 23:22 / 3ヶ月後

コラム:白人至上主義に目をつぶるトランプ氏の危うさ

[16日 ロイター] - 米バージニア州シャーロッツビルで今月多くの死傷者を出した反対派との衝突が起きた後も、白人至上主義者は多くの都市で抗議活動を計画しており、こうした暴力沙汰の責任が誰にあるのかを曖昧にしたことで、トランプ大統領は激しい非難を浴びている。

 8月16日、米国内の極右や白人至上主義の過激派による脅威を軽視するという傾向は、今に始まったことではない。写真は、反対派のプラカードをつかむ白人至上主義者。バージニア州シャーロッツビルで12日撮影(2017年 ロイター/Joshua Roberts)

とはいえ、米国内の極右や白人至上主義の過激派による脅威を軽視するという傾向は、今に始まったことではない。他の保守派と同じく、トランプ大統領もその脅威と向き合う、あるいは、その現実を認識することさえ避けている。そして、こうした拒絶を方針としつつある。

極右が危険であることは誰もが知っている。2008年の米大統領選挙でバラク・オバマ氏が当選した後、白人至上主義やネオナチグループへの加入が激増したと、専門家は警告していた。非営利団体「南部貧困法律センター」によると、米国における極右団体の数は2008年と2009年に40%増加、2010年は22%増えている。

白人至上主義者による秘密結社「クー・クラックス・クラン(KKK)」もその傾向にたがわずメンバーを増やしたが、その一方で主流を目指す白人国家主義者の新世代も台頭した。

彼らは育ちの良さそうな服を着て、優位にある多文化主義の左派から「欧州の文化」を救おうとしているだけだと主張した。反差別運動のレトリックを一部引用し、「白人の命は大事」と訴えた。彼らが若者を勧誘していることは明らかだった。米共和党を支持する大学組織カレッジ・リパブリカンの支部のような主流の保守派は、時に彼らを大いに歓迎し、ジャーナリストのミロ・イアノポウロス氏など、筋金入りの「オルタナ右翼」の論客を招いたりもしている。

その一方で、トランプ大統領や米共和党、そして主要な保守派メディア関係者も、米国内の過激派による脅威を軽んじてきた。米政府監査院(GAO)の議会への報告によれば、過激派の犯罪データベースには、2001年9月12日から2016年末までの期間、重大な「極右過激思想に影響された攻撃」が計62件記録されている。それにひきかえ、同期間にイスラム過激派による致命的な攻撃は23件だった。

シャーロッツビル事件の責任は「多くの側」にあると語るずっと以前から、トランプ大統領は、白人至上主義者による暴力を無視しつつ、イスラム過激派を非難するという明白なパターンを確立していた。

さらには、この近視眼的な考えを政策化した。トランプ政権では、過激派の暴力に対する政府プログラムはイスラム教徒に限定し、「米国内で同様に爆発事件や銃撃事件を引き起こす白人至上主義者のようなグループについては、もはや対象外とする」と、ロイターは2月に報じている。

シャーロッツビルで12日、白人至上主義者に反対する勢力に車で突っ込み、地元の活動家1人を殺害し、19人にけがを負わせた20歳のジェームズ・アレックス・フィールズ・ジュニア容疑者は、事件発生の数時間前に「アメリカン・バンガード」という名の白人至上主義団体と共に行進していた。

同容疑者との関わりを否定しているこの団体は、4月にユダヤ人団体の名誉毀損防止同盟が、「米大学のキャンパスで学生に接触し、勧誘する前代未聞の努力」を行っている3団体の1つとして挙げていた。他の2団体は、「アイデンティティー・エブロパ」と「アメリカン・ルネサンス」である。

アメリカン・ルネサンスの年次総会に出席した多くは、「ミレニアル世代」で、「白人国家主義のシンクタンク、国家政策研究所のリチャード・スペンサー所長と写真を撮るため、列をなしていた」と、英ガーディアン紙のジェイソン・ウィルソン記者は先月伝えている。アメリカン・ルネサンスの創設者、ジャレッド・テイラー氏はウィルソン記者に、「歴史上、自分たちは悪者だと小さいときから教えられ、怒り心頭の若い白人男性が押し寄せている」と語っている。

シャーロッツビルで起きたネオナチの暴徒化と車両を使った殺人は、こうした怒り狂った若い白人男性が暴力的になった初めてのケースではない。過去2年2カ月のあいだで、白人至上主義者による攻撃はフィールズ容疑者の事件で5度目となる。彼らのような「一匹オオカミ」による犯行で、計13人が犠牲となり、28人が負傷している。

21歳だったディラン・ルーフ被告は、インターネットで人種差別に傾倒していき、2015年にサウスカロライナ州チャールストンの教会で黒人9人を殺害した。

同年、ミネソタ州でも、22歳のアレン・スカルセッラ被告が反差別運動「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」に参加していた黒人5人を銃撃し、けがを負わせた。CBSによると、同被告は自己防衛を主張したが、事件を起こす何カ月も前から人種差別的なメッセージを友人に送っていたことからも明らかなように、被告は完全に人種差別主義者だったと判事は判断した。

 8月16日、米国内の極右や白人至上主義の過激派による脅威を軽視するという傾向は、今に始まったことではない。写真は、バージニア州シャーロッツビルの事件を受け、声明を発表するトランプ米大統領。ワシントンで14日撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)

また、22歳のショーン・クリストファー・アーバンスキー被告が今年、若い黒人男性を一方的に刺殺した事件で、検察官はこれがヘイトクライム(憎悪犯罪)だと証明できなかったが、検察官が「卑劣」と表現したフェイスブック上のネオナチグループに同被告は確かに所属していた。

それから1週間後、オレゴン州ポートランドで開催されていた「表現の自由集会」に、35歳のジェレミー・ジョセフ・クリスチャン被告は野球のバットを手にしてやって来た。その直後、白人至上主義者として知られていた同被告は、バスのなかでイスラム教徒の女性が頭を覆うヒジャブを着用していた2人に文句を言っていたのを制止しようとした男性3人を刺殺。うち2人は死亡した。

この先、このような攻撃は増えることが予想される。米連邦捜査局(FBI)のトッド・ブロジェット捜査官は、2年にわたり白人至上主義運動のおとり捜査を行った。どのような人がこうした団体にひかれるのかワシントン・ポスト紙に聞かれると、同氏は次のように答えた。

「概して負け犬だ。若者が多く、大抵は男性だが、女性もいる。学校でうまくやれない子たちだ。自分の問題を全て他人になすりつける。こうしたウェブサイトや集会、アメリカン・レジスタンスのレコードレーベル(ネオナチや白人至上主義バンドのための主要レーベル)を訪れると、自分の問題をすでに気に食わない人たちのせいにしている。そこで彼らは『ほら見ろ。だから自分は落ちこぼれなのだ。覚醒剤をやってしまうのだ。職にありつけないのだ。全部、黒人のせいだ』」

覚醒剤とは、まるでフランスやベルギー、英国のイスラム社会についてよく耳にする急進化のパターンのようではないか。欧州では、覚醒剤をそういうものとして扱っている。英インディペンデント紙が6月に伝えたところによると、英国の更生プログラムに照会されるイスラム教徒ではない過激主義者の数は、過去1年で30%増加。また現在、英国政府に監視されている人たちの3分の1程度が、極右思想を信じており、急進化しやすいという。

 8月16日、米国内の極右や白人至上主義の過激派による脅威を軽視するという傾向は、今に始まったことではない。写真は、バージニア州シャーロッツビルで起きた事件の犠牲者を追悼する住民ら。提供写真(2017年 ロイター/Courtesy Kate Bellows/The Cavalier Daily/Handout via REUTERS)

しかし米国では話が違う。主要な保守派は一貫して、問題を認識する努力をためらってきた。ましてや、それに対抗する努力などなおさらだ。

米国土安全保障省(DHS)は2009年、国内の極右テロに関する報告書を出した際、下院少数党院内総務だった共和党のジョン・ベイナー氏は、「ワシントンにいる民主党議員たちの国を導く方向に異議を唱える米国市民を表現するのに(テロリストという)言葉」を使ったことに対して、ジャネット・ナポリターノDHS長官を非難した。

DHSとFBIは、こうした過激主義者がもたらす危険について警鐘を鳴らし続けている。一方、保守派はそれを跳ね返し続けているが、そのことにトランプ大統領以上の熱意をもっている者はいない。

米政治情報サイトのポリティコによれば、トランプ政権下のDHSは、「ネオナチの非急進化と白人至上主義の阻止に専念」する非営利団体「ライフ・アフター・ヘイト」への補助金を打ち切った。米大統領選以降、過激派グループから抜けるための支援要請が20倍も増えているという事実にもかかわらずだ。

その一方で、オルタナ右翼の活動家たちは、大統領選以降、警察が大いに大目に見てくれていると、もろ手を挙げて喜んでいる。

白人国家主義運動は活性化され、社会的に力が与えられたと感じている。さらなる暴力が生まれるだろう。不満を抱くさらに多くの若者たちが、こうした暴力的なイデオロギーの誘惑に落ちることになる。

共和党がこの脅威を直視しない限り、トランプ政権は急進化に手をこまねくしかないのである。

*筆者は米ニューヨークに拠点を置くライター。政治系ラジオ番組の司会も務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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