January 29, 2015 / 9:22 AM / 5 years ago

コラム:ウクライナ情勢、「第2次大戦」前夜との共通点

[28日 ロイター] - ロシアはウクライナをめぐる戦いに勝利しつつある。ウクライナ政府軍と親ロシア派による争奪戦が昨年から続いていた重要拠点、ドネツクの国際空港は先週、親ロ派の分離主義勢力が再び制圧した。

 1月28日、現在のウクライナは、隣国のポーランドが第2次世界大戦前夜に置かれた状況に追い込まれているように見える。写真はウクライナ兵士。東部ルガンスク地方で撮影(2015年 ロイター/Maksim Levin)

「ドネツク人民共和国」の首長を名乗るザハルチェンコ氏は、ウクライナ政府軍を再度攻撃すると言明。これまでそうだったように、ロシア軍からの増援を受けるとみられる。

ドネツクの空港が親ロ派の手に落ちるなか、ウクライナのポロシェンコ大統領は世界経済フォーラム(WEF)年次総会の開催地であるスイスのダボスに飛び、国際社会に支援を求めた。

ダボス会議で同大統領は、ロシアがウクライナ東部に兵士9000人以上と戦車数百台を派遣していると非難。国土の7%が事実上ロシアに占領されているとし、「これが侵略でないなら、何が侵略なのか」と訴えた。

ウクライナ東部で続く戦闘について同大統領は、フランスの風刺週刊紙「シャルリエブド」への攻撃にもなぞらえた。その話をあえて持ち出したのは、世界が「ウクライナ疲れ」に陥らないようにしたかったからだという。

世界は「ウクライナ疲れ」に陥ってはいない。なぜなら、そもそも大きな努力を払っていないからだ。現在のウクライナは、隣国のポーランドが第2次世界大戦前夜に置かれた状況に追い込まれているように見える。当時ポーランドは同盟関係にあったフランスと英国との間で防衛協定を結んでおり、もしどこかが攻撃を受けた場合は相互に援助することになっていた。同協定に基づき、仏英はポーランドに侵攻したドイツに宣戦を布告したが、その動きはあまりに小規模かつ遅く、結局フランスでドイツ軍に撃破された。

ウクライナは1994年、米英両国やロシアなど核保有国との間で「ブダペスト覚書」を結び、自国に残った核兵器の放棄と引き換えに、主権や国境の尊重を取り付けた。

ロシアは同覚書での合意をクリミアとウクライナ東部で破った。これに対し、西側はロシアに制裁を科すとともに、主に国際通貨基金(IMF)を通じてウクライナに資金援助を実施している。欧州連合(EU)は今週、ロシアがウクライナ東部で分離主義勢力に「支援を継続および拡大している証拠」があるとし、対ロ制裁の強化を示唆した。

原油安で打撃を受けているロシア経済にとって、制裁強化は「泣きっ面に蜂」となる。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は26日、同国のソブリン格付けを投機的等級に引き下げた。

しかし、こうした動きはロシアをさらに攻撃的にしているように見える。シュワロフ第1副首相は、ダボス会議で聴衆にこう語りかけた。「われわれの歴史を学ぶといい。ロシア人は決して指導者を見限らない。耐乏生活や困苦は受け入れるが、外側から変化を押し付けられるなら、われわれはかつてないほど団結するだろう」

プーチン大統領は、サンクトペテルブルクの大学を訪れた際、ウクライナで親ロ派と交戦しているのは北大西洋条約機構(NATO)の部隊だと主張。この発言をNATOのストルテンベルグ事務総長は「ばかげている」と一蹴した。

第2次大戦前夜のポーランドとの共通点に話を戻そう。もしウクライナが半ば見捨てられた犠牲者だとするなら、ロシアはナチス・ドイツなのか。答えはノーだ。ロシアとプーチン大統領はますます独裁主義的になりつつあるが、ファシストではない。大虐殺は行っておらず、欧州全域を支配しようとする野望も持ち合わせていない。テレビ局は当局の厳しい統制を受けているが、インターネット上ではプーチン大統領を皮肉ったり批判したりすることもできる。

ただ、共通点が1つある。プーチン大統領が法律を越えて動いているように見えることだ。ペスコフ大統領報道官は最近、「法律より大事なことがある」と発言した。これを受け、ニューズウィーク誌の編集者ミハイル・フィッシュマン氏は、イスラムの教義が法律や政府の政策よりも優先されるイランのような状況にロシアが陥りつつあると指摘した。

ウクライナ危機に明快な解決策は存在しない。なぜなら、西側とロシアの大義名分がまったく相いれないからだ。前者は覚書での合意事項や国際法に訴え、後者はウクライナをロシア領域内にとどめておく道徳的要請に訴えている。

ウクライナ周辺地域は依然として1991年のソ連崩壊の余波の中にある。過去20年間にチェチェンでは2度の紛争があり、アルメニアとアゼルバイジャンはナゴルノ・カラバフ自治州をめぐって争い、南オセチア紛争やタジキスタンやキルギスの内戦もあった。しかし、ウクライナ危機がそうした紛争と違うのは、その結果が及ぼす地政学的影響が大きいことだ。

旧ソ連を構成していた15カ国は、民主的で力強い市民社会を築くべく独立したはずだった。しかし、エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国やジョージア(旧グルジア)の一部を除くと、いずれの国も程度の差こそあれ、旧ソ連の渦から完全に脱却するこはできなかった。汚職がなく、民主主義志向の指導者が率いる「西側同盟国」はつくれなかった。

昨年に政変で汚職政権を倒したウクライナは、そういう国になろうとした。ロシアは、自国経済や欧州の平和に関する考えはすべて脇へ押しやり、それを全力で阻止しようとしている。ドネツクの空港はロシア側の鉄の意志を象徴している。今後戦火はさらに広がるだろう。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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