[ニューヨ-ク 22日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米政権が23日に議会に提出する2018年度(17年10月─18年9月)予算教書は、架空の想定に基づく呪術(ブードゥー)経済政策だ。
マルバニー米行政管理予算局(OMB)局長は予算教書に魅力的な提案を幾つか盛り込んだが、今後10年で歳出を3兆6000億ドル削減する計画の大半は、失業率や医療保険制度改革法(オバマケア)の見直し、社会福祉制度改革などに関する実現不透明なファクターを前提としている。
たとえば、予算教書はオバマケア改廃によって今後10年間で年800億ドルの歳出削減が可能になるとしている。この試算は今月初めに下院で可決された改廃法案が成立することを前提としているが、法案が現在の内容で上院を通過する可能性は極めて低い。
社会福祉制度に関しても同様の単純なアプローチをとっており、「社会福祉制度改革を通じ、依存を労働の尊厳に置き換えることを目指す」としている。これは、トランプ政権がメディケイド(低所得者向け医療保険)やフードスタンプ(食料配給券)などの予算を1兆ドル超削減するとともに、政府の支援を失った低所得者が職に就くと期待していることを意味する。
予算教書はさらに、失業者や不完全雇用者のうち職を見つける人の数をあまりに多く見積もっている。マルバニー局長は、不完全雇用者の雇用状況が改善すれば米国内総生産(GDP)成長率を3%に押し上げる一助になると見込んでいる。
しかし、こうした想定は多くの要因を考慮に入れていない。また、ラザード・アセット・マネジメントによると、労働力のうち生産性が最も高い26歳から54歳の失業率は金融危機以来の低水準に近付いているが、教書ではこうした状況も考慮していない。
予算教書には、今後10年で190億ドルの育児休暇や学生ローンの返済上限を可処分所得の12.5%とする案など、批判を抑えることを狙った措置も盛り込まれた。しかし、この程度では議会共和党の説得にさえも十分とは言えない。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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