June 11, 2018 / 3:25 AM / 8 days ago

コラム:米中協議の死角、「知財ロンダリング」どう防ぐか

Scott Mulhauser

 6月7日、米中通商協議において両国は、全体を見渡して、とりわけ米国の知的財産保護といった他の主要な経済安全保障問題に重点を置く必要がある。写真は両国の国旗。北京で昨年6月撮影(2018年 ロイター/Jason Lee)

[7日 ロイター] - 激しい応酬と政治的駆け引きが明らかとなる中、中国と米国は今月、新たな通商協議を開いた。残念なことに、とはいえ驚きには値しないが、交渉担当者は合意点を見いだすのに苦労した。

リスクはかつてないほど高まっており、こうした協議は、両国が悪化した貿易関係を修復する好機となる。それでも、長い年月を経て緊張が高まったことや、両国ともに大胆な指導者を抱えていることを考えれば、米中両国が納得のいく結果にたどり着くには努力が必要だろう。

最近の協議でそれは白日の下にさらされた。交渉は行き詰まり、合意に向け十分な進展も見られないまま物別れに終わった。この間、中国側は制裁緩和と引き換えに、米国製品とサービスを購入というする期待を抱かせるような提案を行っている。

こうした関税や貿易を巡る協議にもニュース価値はあるものの、両国は、全体を見渡して、とりわけ米国の知的財産保護といった他の主要な経済安全保障問題に重点を置く必要がある。現在横行している米国や他の国々の知財の不正流用は、貿易や法律の専門家から、イデオロギー的立場を問わず広く批判されてきた。

中国は自国の知財開発と並行して、知財窃盗に対処するための法制度の制定に取り組んでいる。しかし米国ではいまだに、あまりに多くのイノベーターが、コピーされ、転送され、中国で複製された補償を受けられずにいる。知財窃盗に関する独立した超党派の米民間団体(Commission on the Theft of AmericanIntellectual Property)の推計によると、海賊版ソフトウエアや偽造品や企業秘密の盗難による米経済への被害額は年間2250億─6000億ドル(約25兆─66兆円)に上る。

中国企業は、米国の知財を中国のそれへと転換するため、規制当局や自国の裁判所に駆け込むことがあまりに多い。定型化されたそのプロセスは中国企業に有利に働き、法的根拠がないことや、明らかな事実が無視されることが多々ある。

こうしたケースの中には、中国企業が米国の知財の正当な所有者を相手取り、中国の裁判所で特許侵害訴訟を起こすこともある。裁判所は中国企業に味方して、米国企業が中国市場で自身の知財を使用することを禁止する。

もしこの米国企業が中国市場で活動を続けたいのであれば、対価を支払って、知財を盗んだ中国企業の許可を得なくてはならない。これが知財洗浄(ロンダリング)の本質であり、ほとんどの場合は中国の裁判所の「お墨付き」を得ているのである。

米中間でうまくいっているパートナーシップもたくさんあるだろうが、悲しいことに、米国企業はこのような中国の戦術を知りすぎている。

ヴェッコ・インストルメンツのウエハーキャリア技術や、ノウルズのマイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムズを使用したコンシューマエレクトロニクス用マイクロフォン、インターデジタルのワイヤレス・モバイルフォン技術の特許は皆、こうした知財戦術の犠牲となっている。こうした戦術はその後、中国の裁判所によって支持されている。

官民問わず、世界システムに身を置く全ての当事者が、この問題に建設的に対処し得る具体的な解決策に取り組むべき時が来ている。

その中には、中国の知財制度がどのように構築されているかだけでなく、どのように執行されているかを調査することも含まれる。また、こうした問題から恩恵を受けたり、あるいは苦しんでいる企業と協力するだけでなく、知的財産権の執行から製品組み立て、国際的な流通プラットフォームに至るまでの全体的なプロセスを検討する必要がある。

米中当局が協力して手続きを改善したり、盗用された知財が市場に流出することを許す抜け穴をふさぐためにプラットフォームや商業的なウェブサイトを利用したりするなど、知財環境を改善する機会はたくさんある。

トランプ政権は中国に対して一貫したアプローチをとっておらず、再び強硬姿勢を強め、中国からの輸入品に対し巨額の関税を課すとしている。こうした動きが中国を交渉のテーブルに着かせることになったとはいえ、このような関税が米国や世界経済に及ぼす影響により貿易戦争が迫りつつあるとの懸念をかき立てたることにもなった。そうなれば、米中両国ともに操業、製造、流通コストが上昇し、製品価格の高騰を招く恐れがある。

国や消費者、企業が中国と関わり続けることは変わらない一方で、手続きに従って知財を乗っ取ったり、技術移転を強制したり、経済政策を実行するために独占禁止法を適用したがったり、中国で活動する外資系企業には地元企業との合弁を命じたりする国と取引することの困難さも広く認識されてきている。

今後も米中の交渉は続くが、関税を超えて、より大きな全体像に焦点を当てる機会とすべきだ。両国ともに、それが実現するのに必要な真の解決策を見いだしてくれることを願うばかりである。

*筆者は、コンサルティング会社アパーチャー・ストラテジーズの共同創設者。在中国米国大使館で大使の首席補佐官を務めた経験がある。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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