July 1, 2019 / 9:37 AM / 19 days ago

コラム:一時休戦でも2500億ドルに25%米関税、中国発減速に注意

[東京 1日 ロイター] - 大阪で6月29日に行われた米中首脳会談は、通商協議の再開で合意し、米国が対中関税第4弾の発動を当面行わないと表明した。市場は「一時休戦」と受け止めたが、見逃している大きな問題が存在する。それは2500億ドル相当にかかっている25%の米関税が中国に与える打撃の大きさだ。中国の製造業が受けている影響はかなりの規模とみられ、長期化すれば中国を起点にした世界経済の減速に、市場の目が集まることになるだろう。

 6月29日、大阪でに行われた米中首脳会談は通商協議の再開で合意し、米国が対中関税第4弾の発動を当面行わないと表明した。市場は「一時休戦」と受け止めたが、見逃している大きな問題が存在する。それは2500億ドル相当にかかっている25%の米関税が中国に与える打撃の大きさだ。写真は米ドル紙幣と人民元紙幣。2010年11月撮影(2019年 ロイター/Petar Kujundzic)

<6月中国製造業PMI、50割れの意味>

1日の東京市場は、株高/小幅な円安で反応し、中国から発表されたある経済指標を無視した。財新/マークイットが1日に発表した6月中国製造業購買担当者景気指数 (PMI)が49.4となったことだ。拡大・縮小の分かれ目となる50を4カ月ぶりに割り込み、今年1月以来の低水準となった。

中国国家統計局が6月30日に発表した製造業PMIも49.4に落ち込んでおり、米関税の賦課によって、輸出に依存している中国製造業の「苦境」が浮き彫りになっている。

また、6月14日に発表された5月の中国鉱工業生産は前年比プラス5.0%増と約17年ぶりの低い伸びにとどまっており、4月の同5.4%増から失速した。

6月の製造業PMIのデータを勘案すると、6月の生産も振るわない結果になっている可能性がある。

5月の中国貿易統計では、輸出が前年比1.1%増とプラスを確保したものの、輸入は同8.5%減と大きく落ち込み、内需の不振を明らかにしていた。

弱いデータは耐久消費財の販売にも波及。5月の中国自動車販売は過去最大の前年比16.4%減という大きな落ち込みとなった。

大阪での米中首脳会談で3250億ドル分の対中輸入品への25%関税の賦課は、「しばらくの間」(トランプ大統領)実行されないことになったが、第1弾から第3弾までの計2500億ドル分には25%の関税がかかり続ける。

足元のPMIや生産、輸入の弱いデータは、米国の関税攻勢を受けた結果、中国の製造業の生産に影響が出て、製造業を起点にした「減速」の現象が、すでに出始めていると理解するのが妥当だろう。

<効果が薄れている中国の景気対策>

この米国による関税賦課が長期化した場合、中国の内需が受ける打撃は、累積的に大きくなる可能性が高く、いずれ財政・金融両面を駆使した大規模なマクロ対策が打ち出されることになると予想する。

しかし、3月15日のコラム[nL3N2122Q2]でも指摘したように、中国の民間非金融部門債務残高の対名目GDP(国内総生産)比は、2017年9月末で約275%に達しているとの試算もあり、金融緩和策によって設備投資が活発化せず、債務返済に回ることも予想され、現に預金準備率の相次ぐ引き下げによっても、設備投資の明確な上向きは確認されていない。

また、今年3月の全国人民代表大会(全人代)の際に発表された約2兆元(2983億ドル)の対企業向け減税や手数料の削減も、足元での経済データを見ると、米関税攻撃のあおりを受け、その効果はかき消されたと言えそうだ。

香港紙・サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙は今年5月、関係筋の話として、中国共産党序列4位の汪洋・政治局常務委員が、米国との貿易摩擦で今年の中国の成長率を最大で1%下押しする恐れがあるとの認識を示したと報道。

国際通貨基金(IMF)は6月5日、米国が第4弾の関税を実施した場合、2020年の世界経済の生産を0.5%下押しするとの見方を示していた。

<中国からの減速圧力、政府・日銀の繰り出す「手」は何か>

この最悪のケースは当面、回避されたものの、現在もかかっている2500億ドル規模の輸入への25%関税の継続実施は、中国経済に「ボディーブロー」のように効いてくる可能性が高い。

1日に発表された日銀短観でも、加工・組み立て業種などの製造業の景況感悪化が目立っている。対中輸出の割合が高い企業では、この先も業況の低迷・悪化が予想される展開となるだろう。

日本企業と経済全体にとって、中国発の需要減少は「当面の間」、所与の前提として覚悟すべきなのではないか。

今年秋以降、政府・日銀は世界経済の回復基調を前提に、日本経済の回復基調の明確になり、10月からの消費増税を実行しようとしている。

だが、米中摩擦の長期化が中国発の需要抑制となって顕在化すれば、今年秋には国内景気の「変調」が明らかになっている可能性がある。

その時に政府・日銀は、どのようなカードを切ってくるのか──。そのことを今から予習しておく必要があるだろう。

●背景となるニュース

・UPDATE 1-財新の中国製造業PMI、6月は49.4 1月以来の低水準

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