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コラム

コラム:米住宅市場に警戒信号、金利急上昇で販売急減リスク

[オーランド(米フロリダ州) 18日 ロイター] - 米国債利回りの急上昇が、米住宅市場に影響を及ぼし始めた。過去何年間も見られなかったような強い警戒信号を発している指標もある。

 米国債利回りの急上昇が、米住宅市場に影響を及ぼし始めた。過去何年間も見られなかったような強い警戒信号を発している指標もある。写真は2021年5月、フロリダ州タンパで建設中の住宅(2022年 ロイター/Octavio Jones)

30年物の固定住宅ローン金利は5%を超え、2011年以来で最高となった。年初からの上昇スピードは過去屈指の速さだ。全体的に見て、米国の住宅の購入しやすさ(アフォーダビリティ)は2008年以来で最低となり、なお低下を続けている。

これらは注意を要する兆候だ。固定資産投資と関連サービスを含む住宅部門は、米経済の18%前後を占め、現在は2008年9月に顕在化した世界金融危機の前のピークに近い状態にある。この危機では、米住宅市場が崩壊した時の影響の大きさを見せつけられた。

住宅価格が少なくとも目先、はっきりと下落するかどうかは、まだ分からない。今のところ、需給要因、潤沢な家計資産、強い労働市場といった要因が、分厚く快適な緩衝材の役割を果たしている。

しかし、一部の指標を見ると、住宅市場は間もなく減速しそうだ。多くのエコノミストが予想する通り、米経済が来年リセッション(景気後退)に陥るなら、劇的に減速する可能性もある。

ノムラとナットウエストのエコノミスト陣は、米連邦準備理事会(FRB)の利上げによって、真っ先に減速するセクターの中に住宅市場が入ると予想している。

ナットウエスト・マーケッツの米国エコノミスト、ケビン・カミンス氏は「最初に暗い見出しを躍らせるセクターの1つが、住宅市場だろう。当社の基本シナリオでは、住宅販売は今後数四半期中に大幅に減少する」と述べた。

米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の30年物固定住宅ローン金利は、4月14日までの1週間の平均が5%と前週の4.72%から上昇し、2011年1月以来で最高となった。

1─3月期の上昇幅は1.56ポイントと、四半期として1981年以来で最大。ただし、この年の上昇は15%から18.6%への変化であり、現在の方が上昇スピードはずっと著しい。

<購入しやすさ>

米抵当銀行協会(MBA)の30年物住宅ローン金利は平均5.13%とさらに高く、5.16%を超えれば少なくとも2010年以来で最高となる。

FRBは現在、金融引き締めサイクルの初期段階にあり、大半の専門家はこれが1994─95年以来で最も積極的な利上げになると予想している。短期金融市場は、現在0.25─0.50%のフェデラルファンド(FF)金利が来年3.0%超でピークを迎えることを織り込んでいる。

94─95年にFRBは1年半にわたって利上げを進め、この間に住宅販売は20%減少した。今回も同じことが起こるとすれば、住宅販売は1月の720万戸強から来年は600万戸弱に減ることになる。

ウェルズ・ファーゴのマイク・サントマッシモ最高財務責任者(CFO)は15日、住宅ローン需要に陰りが見られると述べた。同行の第1・四半期の住宅ローン件数は前年同期に比べて33%減少した。

賃金の上昇率が住宅価格と住宅ローン金利の上昇スピードに追い付いていないため、住宅購入が有意に減少する可能性は排除できない。Yチャーツがまとめた全米リアルター協会のデータでは、住宅の購入しやすさは2008年以来で最低となっている。

ただ、その裏側で家計のバランスシートは、かなり健全な状態となっている。2008年の金融危機後に大規模な債務圧縮が進んだ上、コロナ禍中の政府の景気刺激策、住宅価格の上昇、労働市場の活況によって潤ったからだ。

JPモルガンのエコノミストチームによると、米家計の可処分所得に対する債務の比率はコロナ禍前が約90%と、2001年以来で最低だった。これは2008年の金融危機前の130%弱に比べて大幅に低い。コロナ禍以降、多少の変動はあったものの、現在も90%前後で推移している。

住宅の供給不足が、住宅価格の下落に歯止めをかける可能性もある。一部の指標を見ると、中古住宅の供給は少なくとも過去40年間で最もひっ迫しており、現在は原材料価格が高いため新規の建設も限られる公算が大きい。

従って、住宅価格は仮に下落するとしても急落には至らないかもしれない。だが、警戒信号は点滅しており、市況が悪化しても驚いてはならない。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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