May 10, 2018 / 5:46 AM / 7 months ago

コラム:米国のイラン核合意離脱、「最悪の結末」回避できるか

[9日 ロイター] - 2003年のイラク侵攻は米国史上、最悪の外交政策と広く見られている。そして今、それに匹敵するとも言える決断が下された。

 5月9日、イラン核合意から離脱するというトランプ大統領(写真)の決断は、米国を孤立させ、自らの約束を破り、同盟諸国との貿易戦争やイランとの戦争リスクを高め、北朝鮮による核・ミサイルの脅威を取り除くための永続的で真に検証可能な合意に至る可能性を低下させる。ワシントンで8日撮影(2018年 ロイター/Jonathan Ernst )

イラン核合意から離脱するというトランプ大統領の決断は、米国を孤立させ、自らの約束を破り、同盟諸国との貿易戦争やイランとの戦争リスクを高め、北朝鮮による核・ミサイルの脅威を取り除くための永続的で真に検証可能な合意に至る可能性を低下させる。

最悪の結末は、イランによる核武装かイランとの戦争だ。場合によっては、その両方だろう。もちろん、こうした結末は回避されるかもしれない。

現段階の主導権は、核合意に署名した他の6カ国、とりわけ欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟国の手に移っている。英仏独の3カ国は合意を固守すると言明し、イランにもそうするよう説得する意向だ。

イランは、合意で約束されているすべての恩恵を今後も確実に受けられることを欧州が請け合うならば、合意にとどまるとしている。そのためには、欧州各国は、イランと取引する自国企業を罰しようとする米国の取り組みをはねつける必要がある。

こうした状況は初めてではない。1982年、ポーランドの戒厳令に対し、当時のレーガン米大統領は、ソ連・西欧間のガスパイプライン建設に関与する企業に制裁を科そうとした。欧州は米国企業への報復をちらつかせ、レーガン大統領は結局、制裁を科すことはなかった。

こうした構図は1996年にも繰り返された。米議会はキューバに投資する欧州の投資家を罰する法案を可決した。欧州は世界貿易機関(WTO)に提訴し、報復すると脅しをかけた。当時のクリントン大統領はこれを撤回した。

大西洋をまたいだこの2つの対立が解決を見るには何カ月も要した。今回はさらに困難となる可能性が高い。影響を受ける恐れのある貿易規模は現在の方がはるかに大きく、レーガン、クリントン両大統領時代よりも欧米関係はかなり悪化している。歴代の米大統領と比べて、トランプ大統領は西側の結束を重視していない。今度ばかりは、関係修復は難しいかもしれない。

イランが地域を不安定化させるような行動を取っているとのトランプ大統領の指摘は正しい。だが大統領の注目ぶりは、米国の国益に与える実際の脅威には釣り合わない。

「イスラム国」やアルカイダとつながりのあるイスラム過激派集団は現在、ナイジェリア、マリ、ニジェール、ソマリア、リビア、エジプト、シリア、イラク、イエメン、アフガニスタン、フィリピンで攻撃を仕掛けている。米軍は、エジプトを除くこれら10カ国で展開している。全11カ国のうち、イランが関与しているのは、シリアとイラク、そしてイエメンの3カ国だけだ。この3カ国のうち、米国と反対の側をイランが支援しているのはイエメンだけだ。

無責任なイランの行動に歯止めをかけることは正当な目的だが、米本土の防衛対策としてはほとんど効果がなく、イスラム世界に安定をもたらす鍵にはとうていならない。

サウジアラビアとイスラエルは、トランプ氏の決断を支持している。支持しているのは、その程度だ。欧州とアジアには、米国の離脱を支持する同盟国はいない。主要な大国も支持していない。主要7カ国(G7)やG20参加国も支持していない。こうした国際的な支持なく、トランプ氏が8日表明した新たな政策を米政権が達成することは困難に違いない。

*筆者は、ランド研究所国際安全保障・防衛政策研究センター所長で、国務次官補を務めた経歴をもつ。著書に「Foreign Service: Five Decades on the Frontlines of American Diplomacy」がある。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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