Reuters logo
コラム:米国がイスラム国との宣伝合戦に勝てない理由
2014年10月23日 / 09:59 / 3年後

コラム:米国がイスラム国との宣伝合戦に勝てない理由

[21日 ロイター] - 米国務省は、米国民らがイラクやシリアで勢力を広げる過激派組織「イスラム国」に参加しないためのプロパガンダを行っている。だがそれはお粗末で、時に皮肉的でさえあり、意図した効果は望めそうにない。

 10月21日、米国務省は、米国民らがイラクやシリアで勢力を広げる過激派組織「イスラム国」に参加しないためのプロパガンダを行っている。写真は6月、シリアでの軍事パレードで車から旗を振るイスラム国の戦闘員(2014年 ロイター)

それはなぜだろう。そもそも国務省がイスラム国の勧誘方法を理解していないことが原因だと言える。

イスラム国のやり方は、アルコール依存症に苦しむ人々の相互支援団体「アルコホーリクス・アノニマス(AA)」と同じなのだ。

AAは広告でアルコール依存症者を勧誘するのではなく、彼らのためにどのような手助けができるかという点に焦点を当てている。つまり、もし彼らがAAからのサポートを望み、禁酒に向かって努力するとなれば、そこで初めて参加しなさいと伝えるのだ。

イスラム国も同様だ。プロパガンダでは手加減しない。頭部切断の映像を流したり、女性を奴隷のように扱って自慢したり、イスラム法にのっとった倹約生活を約束したりする。こうしたことを望んでいるなら、参加せよと言うのだ。イスラム国は積極的に深く関わりたいと望む人材を欲していると。

特にイスラム国のアル・ハヤト・メディアセンターによるものはプロ並みの仕上がりで、アラブ語圏以外の人を対象とした映像などが制作されている。

そうした戦略は、数字にばらつきはあるものの、功を奏しているように見える。12人から300人の米国民がイスラム国に参加したとみられる。また、欧州とアラブ諸国での募集も好調だと伝えられている。タリバンから外国人参加者を奪っているという声も一部にあるぐらいだ。

一方、米国務省は、イスラム国の魅力的な宣伝活動に対抗するため、ネガティブなメッセージを送っている。2011年から外国語だけで行っていたものを、2013年にはソーシャルメディアに活動の場を移して英語でも開始している。

国務省の現在のスローガンは「考え直して、背を向けよう」というもので、ユーチューブやフェイスブック、ツイッターやタンブラーのほか、ニューヨーク市のバス広告でも展開している。ユーチューブに流されているある動画には、「イスラム教徒を磔(はりつけ)にしたり、モスクを爆破させたりするといった、役立つ技術を学びなさい」という字幕も見て取れる。

こうしたメッセージは聖戦士になろうとする人たちより、米政府に訴えかけているように思える。「愚か者のイスラム」など、イスラム国に参加することに対して揶揄するメッセージが多い。

国務省は年間500万─680万ドル(約5億3500万─7億3000万円)の費用を費やしており、ステンゲル国務次官(公共外交・広報担当)は「メッセージを読んで若者が(イスラム国への)参加をやめたという証拠がある」と主張する。だが、そうした確たる証拠はない。

奇しくも国務省とイスラム国が発するメッセージにおいて、少なくとも扱っている話題に大きな違いはない。双方とも戦闘で生き延びることは難しいと強調する。国務省はイスラム国参加をひどい選択だとする一方、イスラム国は殉教に至る前向きな選択だとしている。どちらもイスラム国が破壊したキリスト教の教会の写真を取りあげているが、その見方が異なるのは明らかだ。

イスラム教徒同士が殺し合いをしているということでは双方の意見は一致する。だが、国務省がイスラム教徒は皆同じとの見方を示す一方で、イスラム教徒のなかには敬けんでない人もおり、故にそうした人たちを殺すことはイスラム教の教えに違反しないとイスラム国は主張する。

米国の反イスラム国キャンペーンは、1980年代にナンシー・レーガン氏が主導した麻薬撲滅運動(“Just Say No”)を思い起こさせる。しかしながら、「アルコホーリクス・アノニマス」のように、われわれが持っているものをあなたたちも持つことができるという前向きなメッセージを送る方が効果的なように思える。

社会から疎外された若者にとって、イスラム国のメッセージの方が、国務省のあざけるようなネガティブメッセージよりも魅力的にとらえるかもしれない。悲しむべきことに、多くのイスラム国加入者が「聖戦」に命をささげており、洗練された宣伝活動がそれに貢献していると言える。だがそれ以上に、発信されるメッセージが志願者の心に響いているのだ。

国務省は地獄に落ちると言い、イスラム国は天国への道だと言う。双方とも死に向かうプロパガンダであることに違いはない。果たしてこのプロパガンダ合戦に勝利するのはどちらだろうか。

*筆者は米国務省に24年間勤務。近著に「Ghosts of Tom Joad: A Story of the #99 Percent」など。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below