October 28, 2018 / 12:33 AM / 23 days ago

コラム:賃金と寿命の関係、米国の「長寿大国」は本当か

[シカゴ 25日 ロイター] - 「われわれは皆、より長生きするようになっている」──。定年問題を取材していると、よくこのようなことを耳にする。

 10月25日、「われわれは皆、より長生きするようになっている」──。定年問題を取材していると、よくこのようなことを耳にする。カリフォルニア州で昨年7月撮影(2018年 ロイター/Mike Blake)

このことは、無限の長寿時代において、貯蓄をしたり給付金の申請を遅らせたりするよう人々を説得するといったような、定年後の経済的安定を築くための対策を議論する時の前置きとなることが多い。

また、年金や、社会保障制度や高齢者向け医療保険(メディケア)の給付金は負担しきれず、したがって削減すべきとも主張されてきた。

保険数理人で構成される米アクチュアリー会(SOA)によると、米国民の平均寿命は実際に延びているが、その延びは徐々に減っている。SOAは今週、毎年改定する「標準生命表」を公表。年金制度提供者は将来の給付義務を予測するのにこれを使っている。

それによると、米国人の平均寿命は10大死因のうち3つによる死亡が増加しているため、2017年よりやや短くなっている。その3つの死因とは、不慮のけが、アルツハイマー病、そして自殺である。この3つによる死亡は2015年から16年にかけて著しく増加したと、SOAのデール・ホール氏は指摘。新たに改定された65歳男性の平均寿命は85.6歳に、同女性のそれは87.6歳にそれぞれ1カ月程度縮まった。

ホール氏は25─56歳の平均寿命の低下が顕著で、一般的に米国の死者数は2010年以降、悪化していると説明。「歴史的に見て、死亡率の改善傾向は近年、かなり悪化している」と同氏は語った。

では、その原因は何か。

米国は世界有数の富裕国であり、他のどの国よりも国民1人当たりの医療支出が多い。しかし、平均寿命と健康状態はここ何年も他の高所得国に遅れをとっていることが、米国立衛生研究所(NIH)が委託した2013年の報告書で明らかとなった。

米国のがんによる死亡率は平均より低く、他国より血圧やコレステロールの管理もすぐれていると同研究は指摘。結果として、75歳に達すれば、他国の同年代よりも長生きすることが予想されるとしている。

<五輪なら敗退>

だが全体としてみると、乳幼児死亡率、低出生体重、けがや殺人、薬物関連の死、肥満や糖尿病、心臓病や慢性肺疾患など、さまざまな側面で米国人の健康は悪化していることが同研究で明らかとなった。

こうした要因の多くは、50歳まで生きられる可能性を大きく低下させ、たとえ50歳を迎えられたとしても、これら症状により健康状態がさらに悪化し、重大な病気になる可能性があると指摘している。

「五輪大会だとすれば、われわれは他の大勢の国に負けている」と、ワシントン大学のStephen Bezruchka教授は言う。

不健康は医療アクセスに関する問題だけに起因するわけではないと同教授は指摘。「われわれは健康と医療を混同しがちだ」とし、米国と他の富裕国との死亡率の差に医療が占める割合は15%にも満たないことを研究は示していると述べた。

疫学者の記録によると、経済的に不平等な社会ほど健康状態は平均より悪い。適切な栄養や住まいといった基本的ニーズを得ることができない低所得世帯が一因だ。しかし、富裕層においても「収穫逓減の法則」が当てはまると同教授は指摘する。カネによって手に入る健康はごくわずかなのだ。

「所得が多い人は確かに死亡率も低い。だが、金持ちからほんの少しのカネを貧しい人に提供することで、平均的な健康度は押し上げられる」

子どもの貧困率が高いことも、米国の平均寿命を低下させる要因だと同教授は指摘する。「健全な社会は、さまざまな方法で若年層に特権を与える。例えば、母親、あるいは父親が取れる有給の育児休暇だ。米国は、有給の育児休暇を義務付けていない世界でも数少ない大国の1つだ」

米社会保障局のアクチュアリーが今年発表した、米労働者に関する同局のぼう大なデータベースに基づいて行った調査により、生涯賃金が寿命に及ぼす影響は甚大であることが判明した。

賃金格差は死亡率に表れていた。全体としての死亡率を1とした場合、ある集団の死亡率が1以下なら全体より死亡率が低く、1を上回ると若く死ぬ人が多いことを示している。

2015年、最高所得の62─64歳の定年男性グループではその数値は0.52だった。一方、最低所得のグループでは1.77だった。女性の場合もそう変わりなく、最高所得では0.73、最低所得では1.54だった。

社会保障制度やメディケアの受給年齢を引き上げる案は、貧しい労働者にとって致命的な打撃となる恐れがある。こうしたプログラムに対して、より適切な長期間にわたる改革を行うなら、「われわれ全員が長生きしているわけではない」ことを国民に納得させることが重要だろう。

代わりに、なぜ米国人は他の先進国と比べて不健康なのか、それを改善するにはどうしたらいいのかという問題に、われわれは重点を置くべきだ。

*筆者はロイターのコラムニストで、個人的見解に基づいて書かれています。

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