May 23, 2018 / 7:03 AM / in 3 months

コラム:宙に浮く米朝首脳会談、最も現実的なシナリオ

[22日 ロイター] - トランプ米大統領と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が22日にワシントンで会談すると最初に決めたとき、2人は北朝鮮との和解は近いと心から信じていたようだ。

 5月22日、トランプ米大統領(左)と韓国の文大統領がワシントンで会談すると最初に決めたとき、2人は北朝鮮との和解は近いと心から信じていたようだ。だが現在、シンガポールで来月12日に予定されている米朝首脳会談が実現するかどうか、暗雲が立ち込めている。写真右は北朝鮮の金正恩氏。写真左はワシントンで17日、同右は板門店で4月代表撮影(2018年 ロイター/Kevin Lamarque and Korea Summit Press Pool)

だが現在、シンガポールで来月12日に予定されている米朝首脳会談が実現するかどうか、暗雲が立ち込めている。

今になってみれば、北朝鮮が先週に米国との首脳会談を中止する可能性をにおわせたことは、さほど驚きではないはずだ。韓国と米国に対する外交政策において、北朝鮮はずっと同じような戦術をとってきた。事態打開への期待を高めておきながら、その後は危機に拍車をかけ、ゴールを移動するのだ。

文大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が非武装地帯で完全な朝鮮半島の非核化に取り組むと宣言し、会談を成功裏に終わらせてからまだ1カ月もたっていない。しかし先週、北朝鮮は、米国が経済支援の前提条件として一方的に軍縮を求めていることに対し、烈火のごとく怒って反発した。

それでも、来月12日の米朝首脳会談が開催されることはほぼ確実だろう。

金氏もトランプ氏も互いに顔を合わせることに執心しているようだし、会談が実現すること自体、両者にとって大きな外交的勝利となる。ただし、明らかになりつつあるように思えるのは、北朝鮮が核兵器を放棄するといった一部ホワイトハウス当局者が期待していたような成果は、そもそも交渉のテーブルには載っていなかった、ということだ。

だからといって、外交プロセスが断たれてしまうというわけではない。米朝韓には、それぞれ達成し得る現実的な目標がある。北朝鮮のハッタリはそうしたプロセスの一環であることは間違いない。米韓を窮地に立たせるのが狙いだ。

北朝鮮は特に、自国にかけられている期待を調整しようとしている。金委員長と側近を含む北朝鮮の指導部が、残忍で独裁的な政治体制と同様、核兵器を放棄する気のないことはほぼ間違いない。彼らには、その2つは切り離せない問題に見えるのだろう。

ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)による「リビア方式」についての無配慮な発言によって、非核化を巡りすでに相当ナーバスになっていた北朝鮮国内の状況はさらに悪化した可能性がある。金氏も同氏の支配に依存する人たちも、大量破壊兵器を放棄するというリビアのカダフィ大佐がとった選択をまねるつもりはさらさらないだろう。結局リビアはその数年後、米国主導の「体制変革」を迫られた。

補佐官の発言を否定したトランプ氏自身がはっきりと理解しているように、金氏は、たとえ核兵器を放棄しても北朝鮮を支配し続けることができると信じる必要がある。

だが、どの当事国にもかなえたくてしょうがない目的がある。

米国は、自国本土を脅かすミサイル・核弾頭の開発を北朝鮮に中止してほしいと考えている。一方の北朝鮮は、米国の軍事行動を回避するため、軍事的な力を維持したい考えだ。米国の軍事行動の回避こそ、北朝鮮が核・ミサイル実験を強行してきた主な理由である。そして韓国の文政権の国家安全保障上の最優先事項は、朝鮮半島を破滅させるような軍事衝突の発生を回避することである。

その点から言えば、現在の状況、とりわけ米朝首脳会談を控えた状況は実のところ、すべての当事国を満足させるものだ。

北朝鮮にしてみれば、平昌冬季五輪から始まり、シンガポールの米朝首脳会談へとつながった韓国の仲介による外交プロセスは、強硬でますます挑発的な兵器開発をやめるためのうまい口実を与えてくれた。

北朝鮮の実験場や兵器を巡る説明のない問題が、そのような決断に影響した可能性はあるだろう。しかし同時に、もし兵器開発を継続するなら、壊滅的な被害を及ぼす軍事攻撃をトランプ氏が検討するというメッセージを、米国が次第に強めていったことも事実である。北朝鮮も韓国もそのような事態を望んでいないし、核あるいは別の方法による北朝鮮の報復行為をまともに食らうであろう隣国の日本も望まない。

また北朝鮮には、経済支援といった他の基本的な目的もいくつかある。同国にとっては、在韓米軍の規模を縮小させ、戦争の呼び水となりかねないと懸念する米韓合同軍事演習を減らすことが1つの理想だ。核・ミサイル実験を削減すれば、この2つは実現する可能性がある。少なくとも米国が、昨年行ったような攻撃的な軍事演習を、対話が継続する中で正当化することは一段と難しくなる。

そこにパラドックスが存在する。

すべての当事国は外交プロセスを継続させることに利益を見いだしているが、どの国も交渉において妥協したくはないと考えている。それ故、もし重要な当事国の怒りを買って事態を再び急激にエスカレートさせることにならない限り、プロセスを遅らせる要因はほぼすべて歓迎するだろう。

したがって、米朝首脳会談が延期されても、どちらも心配で眠れないということにはならないだろう。外交プロセスが前進しているという錯覚を維持するためにすべての当事国が尽力しつつ、朝鮮半島では現状維持が続くというのが最も可能性の高いシナリオだろう。

それは恐らく、韓国の文大統領にとって最大の勝利となる。協議が続く限り、韓国は大惨事を回避できる。少なくとも当面は、みながそれで良しとすべきなのかもしれない。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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 5月22日、トランプ米大統領と韓国の文大統領(右)がワシントンで会談すると最初に決めたとき、2人は北朝鮮との和解は近いと心から信じていたようだ。だが現在、シンガポールで来月12日に予定されている米朝首脳会談が実現するかどうか、暗雲が立ち込めている。写真左は北朝鮮の金正恩氏。板門店で4月代表撮影(2018年 ロイター/Korea Summit Press Pool/Pool via Reuters)

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