December 8, 2015 / 8:04 AM / 4 years ago

コラム:米大統領選、不動産王トランプ氏人気上昇の理由

[7日 ロイター] - オバマ米大統領は6日、過激派組織「イスラム国」との戦いについて次のように語った。「強硬な発言や、価値観を捨てたり、恐怖に屈することで、われわれが成功を収めることはないだろう。強く、賢くあることで勝利を手にするのだ」

 12月7日、トランプ氏(写真)の訴求力は保守的なイデオロギーによるものではない。同氏が支持を得ているのは、多くの共和党支持者がオバマ大統領に対する同氏の憎しみを共有しているからだ。米ニューハンプシャー州で開かれた集会で1日撮影(2015年 ロイター/Brian Snyder)

一方、次期米大統領選で共和党指名候補争いの首位に立つドナルド・トランプ氏はこう語っている。「事態が悪化するたびに、私(の支持率)は上昇する。なぜなら私は信頼されているからだ。われわれはとても強硬で、厳しく、非道な態度を取っていく」

現在、米国の政治において、われわれが目にしているのは階級闘争だ。だがそれは、民主党指名候補のバーニー・サンダース上院議員が恐らく理解しているような、労働者階級と1%の最富裕層の対立とは異なる。これは、労働者階級と高学歴エリート層の対立だ。実際のところ、世界で最も裕福な一人であるトランプ氏がその急先鋒に立っている。

トランプ氏を支持する人たちを特徴づけているのは、イデオロギーでもなければ、年齢でも性別でもない。それは教育だ。CNNによる最新世論調査によると、共和党を支持する大卒有権者の間では、トランプ氏の支持率はわずか18%で4位だった。一方、大学を出ていない有権者の間では同46%で、2位以下に大差をつけて首位に立っている。

米国では現在、裕福であればあるほど共和党に投票する可能性が高くなっている。一方、学歴が高いほど民主党を選ぶ可能性が高い。こうした傾向は前回の大統領選でも見られ、共和党候補で実業家のミット・ロムニー氏対高学歴なオバマ氏という対決だった。

ロムニー氏が負けたのは、エリート主義な経済的価値観が原因だった。1%の最富裕層に属する同氏は、国民の「47%」は政府に依存していると見下す発言をしたのだ。一方、トランプ氏は白人の労働者階級の支持を集めているが、同氏は彼らの経済的関心にではなく、価値観に訴えかけている。

トランプ氏は反オバマ路線を行く。2012年にはオバマ大統領が米国生まれではないとの主張を繰り返し、大統領の出生に関して疑義を唱えた最初の共和党候補だった。トランプ氏の支持者にとって、オバマ大統領は最も鼻に付くインテリとして映る。オバマ大統領はまだ上院議員だったころ、「銃と宗教、あるいは反移民感情にしがみついている」として、生活の苦しい小さな町の有権者を軽蔑するような発言を行った。

オバマ大統領は事実にこだわる。カリフォルニア州サンバーナディーノで起きた銃乱射事件の直後には、「われわれはあらゆる事実を知る必要がある」と語った。

一方のトランプ氏は、事実にはお構いなしだ。ニューヨーク・タイムズ紙が同氏の過去1週間にわたる公の場での発言を総合的に分析した結果、「トランプ氏は事実、数字、ニュアンス、政府、ニュースメディアにおける、人々の信頼を損ねるようなレトリックを使っている」と結論付けた。

同氏はいまだに、米同時多発攻撃後にニュージャージー州で「無数の」イスラム教徒が歓声を上げ、称賛しているのを見たと主張している。だが、その根拠となる事実は存在しない。

トランプ氏はオバマ大統領に対する軽蔑を隠さない。最近の集会では「われわれの知らない何かが彼に起きている」と語っている。トランプ氏はまた、「どうしたら悪い学生がコロンビアに行き、それからハーバードに行けるんだ」と発言しており、大統領を賢いと考えてもいないようだ。

自身については違うようで「私のように非常に、非常に賢い場合は」などと語っているのである。同氏はフォーダム大学で2年間学んだ後、名門ビジネススクールの1つであるペンシルベニア大学ウォートン校に編入した経歴を持つ。

オバマ大統領とトランプ氏は異なる知性を象徴している。つまりそれは、学術とビジネスという2つの世界の知性である。米国民はどちらを称賛するだろうか。

オバマ大統領は思慮深く、博識で、進歩的な学者肌である。故に、白人の労働者階級の支持を得ることには常に苦しんできた。2008年大統領選の民主党予備選挙では、ヒラリー・クリントン氏に彼らの支持を持っていかれた。

米国が怒りと恐怖にとらわれている現状を考えると、多くの有権者はオバマ大統領とはまったく違うタイプのリーダーを求めているのかもしれない。共和党のテッド・クルス上院議員は「国家は戦時の大統領を必要としている」と述べている。国民を危険にさらさないために信用できる誰か、ということなのだろう。トランプ氏は「テロリスト」の信条に動かされる可能性のある移民を米国から閉め出すと公言している。その一方で、オバマ大統領は銃規制を訴える。

米国では、富に対する怒りよりも教育に対する怒りの方が根強い。特に、高学歴のエリート層がリベラルな文化的価値観を受け入れるようになってからはその傾向が強い。保守派はこのような価値観を「政治的中立性」を持ち出して非難する。

トランプ氏ほど政治的中立性に欠けた人はいないだろう。前述の銃乱射事件の容疑者に関する疑惑について、一部の人は人種差別を懸念して通報することを怠ったと同氏は主張。「政治的な中立性を気にするあまり、われわれは自分たちがしていることをまったく分かっていない」と嘆いている。

トランプ氏の訴求力は保守的なイデオロギーによるものではない。同氏が支持を得ているのは、多くの共和党支持者がオバマ大統領に対する同氏の憎しみを共有しているからだ。共和党支持者はトランプ氏の信条の下に結集し、同氏を指名するかもしれない。

だが、白人の労働者階級が有権者に占める割合は減少している。大半の米国民は、自分たちの大統領として憎しみを抱く人を選ぶことに不安を感じるだろう。実際、NBCニュースとスペイン語放送局テレムンドが行った新しい世論調査では、民主党指名候補のヒラリー・クリントン氏がトランプ氏を12ポイント上回っている。

*筆者は第一線で活躍する政治アナリストで、ジョージ・メイソン大学で行政・国際関係の教授を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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