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コラム:米国務長官更迭なら「外交の要」に何が起こるか
December 6, 2017 / 11:04 PM / in 8 days

コラム:米国務長官更迭なら「外交の要」に何が起こるか

Peter Van Buren

 12月4日、トランプ米大統領(右)は否定するかもしれないが、ティラーソン国務長官(左)が目を付けられていることはほぼ間違いないように思われる。ワシントンで11月撮影(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)

[4日 ロイター] - トランプ米大統領は否定するかもしれないが、ティラーソン国務長官が目を付けられていることはほぼ間違いないように思われる。

先月は、ヘイリー米国連大使がティラーソン国務長官の後任に就く時期を巡り憶測が広がった。先週は新たにティラーソン氏の更迭報道が再燃し、いよいよ同氏の終わりを暗示しているようだった。

トランプ大統領を「能なし」と呼んだとする報道について、ティラーソン氏は否定していない。報道によると、後任候補として米中央情報局(CIA)のポンペオ長官の名が挙がっている。

このような報道に対し、トランプ大統領は直ちにツイッターで次のように反論。「メディアは私がティラーソン氏をクビにしたとか、彼がもうすぐ去ると報じているが、フェイクニュースだ。彼は去ることはない。意見の異なる事柄もあるが(最終的には自分が決める)、われわれは協力してうまくやっており、アメリカは再び高い評価を受けている」

トランプ大統領は大真面目でそう言っているのかもしれない。あるいはロシア疑惑で政権が泥沼にはまっているこの緊迫した時期に、新たな国務長官候補を巡り承認公聴会で対立を避けるために時間を稼いでいるのかもしれない。

しかしティラーソン氏がいつ去ろうが、重要なのは、その先に何が米国務省を待ち受けているか、である。

ティラーソン長官が失敗した国務省で、ポンペオ氏が成功できるかは不明だ。ワシントンの政治任用は現在、すでにレームダック化した大統領下のような様相を呈している。

おなじみ候補の多くは、短期間で終わるかもしれない仕事に応募することに関心がない。ポンペオ氏は、国務省内の空いている多くのポストを埋めるのに人材不足に陥ることになる。同氏のCIA在任期間は短いため、連れてこようにも自身の支持者はそう多くはいない。そもそもバージニア州にあるCIA本部職員の大半は、国務省のために働くことを下に見ている向きがある。(CIAの多くは自分たちを国務省の職員よりも上だと考えている。)

文化的な問題もある。CIAにおけるポンペオ氏の強硬姿勢は、多くの職員の感情を逆なでし、同氏が優れた意思決定を駆り立てるような微妙なニュアンスを感じ取れるのか、彼らのなかに不安を生じさせた。議論と熟慮を重ねる文化を持ち、仮説と可能性を好む国務省で、それがいかに問題となるかは想像に難くない。

ポンペオ氏には「実績」がある。同氏の対イラン強硬姿勢は、トランプ大統領の目にとまった一因でもある。国務省内において、イラン核合意は、同省が現代で成し遂げた大きな功績の1つと見られている。ポンペオ氏が保守的であるのに対し、国務省は貿易と民主主義において国際社会の一員として尽力し、最も「リベラル」な姿勢を常に貫いてきた。多少なりとも国務省の思想と一致するティラーソン氏は、北朝鮮との対話路線を貫き、イラン核合意を支持している。一方、ポンペオ氏はそのどちらにも反対している。

だが、ティラーソン氏がポンペオ氏に取って代わられようが、他の誰かに代わられようが、移行の基本部分に変わりはない。国務省は海外と国内に拠点を構えるハイブリッドな機関である。外交官とそれ以外の職員とのユニークな関係は、国務長官の交代を複雑にする。異なる既得権益をもつ双方に気を配ることは生易しいことではない。命令や内部手続きが文書化されている軍とは異なり、国務省の組織はもっと流動的で、縦割り社会である。

ティラーソン氏の失敗は主に、この最後のポイントを外したことにある。新しい国務長官が同省でまず行うべきは、主要なポジションを政治任用制に基づいて埋めることだった。ティラーソン氏はあまりに長いあいだ、あまりに多くのポジションを放置した結果、省内で支持を広げることができなかった。自己裁量に任された外交官たちは、子ども兵士に対する同省の方針やイスラム圏からの渡航を禁止するトランプ氏の大統領令のような問題に関する内部の「反対メモ」の公開といったトラブルを引き起こすようになった。こうしたメモは以前なら極秘扱いされていた。

 12月4日、トランプ米大統領は否定するかもしれないが、ティラーソン国務長官(右)が目を付けられていることはほぼ間違いないように思われる。写真左は、後任に目されるポンペオCIA長官。ワシントンで5月(左)と11月(右)に撮影(2017年 ロイター/Eric Thayer/Yuri Gripas)

独自の組織をつくり上げると同時に、国務省を何らかの大局的な目標に向かわせることは、新しい国務長官の義務である。同省は、最優先すべき一定の目標を定めてはおらず、ある政権下では軍縮に重点を置き、また別の政権下ではイラクとアフガニスタンを復興しようとする。最近では、女性の権利向上やソーシャルメディアの活用、民主主義の促進や 性的少数者(LGBTQ)の世界的な権利向上など「ソフトパワー」に力を入れている。

ティラーソン氏は、2度と日の目を見ることはないであろう構造改革に関するまとまりのない意見にとどまり、目標と呼べるようなものを明確に語ることはしなかった。同氏に現代における最悪の国務長官というレッテルを貼るのが流行だが、実際には最も無意味な国務長官として思い出されることになるだろう。

外交官として24年間勤務した筆者が国務省時代の元同僚と話したところ、ティラーソン氏の後任者は、虐待されたと感じて新たな人間を警戒する犬の保護施設のような雰囲気を、同省で感じるだろう。

すべてを諦めた窓際族もいる。手厚い年金欲しさに在籍しているが、新しい上司の役にはほとんど立たない。職員の大半はオープンで、何が起きるか見守っている。だが、新たに権限を得たように感じるごく一部や悪い国務長官を追い出すのに一役買ったと思っている人たちには気を付けなければならない。またかみついてくるかもしれないからだ。

 12月4日、トランプ米大統領は否定するかもしれないが、ティラーソン国務長官が目を付けられていることはほぼ間違いないように思われる。写真は、後任と目されるポンペオCIA長官。ワシントンで5月撮影(2017年 ロイター/Eric Thayer)

結局のところ、ミスマッチは国務長官ではなく、大統領なのだ。ティラーソン氏に向けられる怒りの多くは、トランプ大統領の身代わりとして同氏を利用している。

外交政策の主なけん引役はホワイトハウスであり続けている。そしてホワイトハウスには、外交官への愛情はほとんどないようだ。

トランプ大統領は、国務省の予算を大幅に削減することに同意している。空きポジションの多さは、同省を機能不全に陥らせようとするトランプ大統領主導の取り組みの結果だと、多くが考えている。

外交政策において、トランプ氏自身も重要なのは自分以外のほかはないと述べ、北朝鮮問題の解決策の1つとして外交手段を却下しているように見える。同氏は軍や側近として軍人を好んでいるようだ。あるコメンテーターは国務省について、「大統領が価値を置かず、敬意を表さず、理解しない機関」と評した。

社会的地位のある共和党支持者のティラーソン氏は、イランや北朝鮮などの問題を巡り、トランプ大統領とはやや異なる意見を内に秘めていた。ポンペオ氏はタカ派でトランプ大統領を支持している。もし本当に大統領が国務省をぶっ壊すつもりなら、ポンペオ氏のような支持者以外に適した人物は考えられない。

もし数カ月後に、ティラーソン氏を追い出したかった職員の中から、同氏の下で働いていた方がましだったかもしれないと考え始める人が現れたら、それは皮肉な話だ。

*筆者は米国務省に24年間勤務。著書に「We Meant Well: How I Helped Lose the Battle for the Hearts and Minds of the Iraqi People」など。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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