July 10, 2019 / 6:36 AM / a month ago

コラム:米国にもじわじわと押し寄せる貿易戦争の悪影響

[ロンドン 9日 ロイター] - 「1つの完全な孤島として存在する人間など1人もいない(人は1人では生きていない)」──。17世紀の英国の詩人ジョン・ダン氏はこう吟じた。

 7月9日、「1つの完全な孤島として存在する人間など1人もいない(人は1人では生きていない)」──。17世紀の英国の詩人ジョン・ダン氏はこう吟じた。写真は、ジョージア州ウッドストックのスーパー。2018年6月28日撮影(2019年 ロイター/Nandita Bose)

そのダンならば、21世紀の高度に統合された世界経済、つまり景気の減速が国際的な商取引を通じて世界中に広がっていくような構図についても、何の苦もなく巧みに描写してくれるだろう。

実際、米中貿易摩擦をはじめとする経済活動にとっての不確実性の源がもたらす影響は、欧州とアジアの間の幾層にも重なる貿易・投資関係をつたって拡大し、新興国市場にまで波及しつつある。

直近のデータからは、大半の先進国とアフリカ、中南米、中東の資源輸出国で製造業と貿易の活動が鈍化したり、縮小している流れが読み取れる。

これに対して今のところ、不確実性要素のほとんどを生み出している米国自体は他地域が見舞われている逆風とは無縁だ。そのため政策担当者は意を強くして、貿易戦争において彼らが優位とみなす状況をさらに推し進めようとしている。

米国がある程度「守られている」のは1つの大陸として閉鎖的な経済構造を持っているからだ。つまり米経済は他の主要な貿易国よりも規模がずっと大きく、内向き志向という特徴を持つ。

世界銀行によると、米国は2017年の国内総生産(GDP)に占める輸出額入合計の割合がわずか27%と、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均の半分未満にとどまった。

他の先進国を見ると日本が35%、オーストラリアが43%、英国が61%、韓国が63%、ドイツに至っては87%といずれも米国を大きく上回っている。主要新興国でも中国は38%、インドは43%、サウジアラビアは67%、メキシコは80%とやはり米国をしのぐ。

ただ、米経済は完全に閉鎖的なわけではなく、内外の成長格差が貿易赤字の急増と国内製造業の減速を助長している。

<因果応報>

大半の指標は、米国の製造業と建設業が昨年に比べて急減速し、それに伴って新規雇用が伸び悩んでいることを示唆している。

同時に米国の輸出業者は海外市場の景気悪化で打撃を受け、輸入品と競合する企業は、行き場をなくした外国の輸入製品が殺到してくる事態に直面。米経済が相対的に堅調で、金利も高いため、ドルが上昇して米輸出業者の競争力や、輸入品と競合する企業はさらなる打撃を受けつつある。

その結果、3─5月の貿易赤字の平均は、前年同期の470億ドルから530億ドルに悪化した。2016年の同期間は390億ドルにすぎなかった。

米政府が輸入品の流入を抑えようと中国や他の貿易相手に幅広く関税を課しているにもかかわらず、貿易赤字の拡大は続いている。

以前に米国の成長率が貿易相手を上回った局面では、やはり貿易赤字が膨らむのが一般的だったので、赤字拡大は予想可能だったし、その通りになったということだ。

米国の政策担当者にとって、適切な対応策の選択肢は乏しい。より広範囲の輸入関税を導入すれば、仕入れ価格を押し上げて米製造業のコストを増大させ、消費者の実質所得を減らしてしまう。

ドル安を狙った金利引き下げは、輸入物価を押し上げて既に完全雇用状態で推移する米経済にインフレを引き起こしたり、新たな金融バブルを発生させかねない。

そういうわけで、貿易戦争が主な貿易相手の成長に痛手を与えることで、米国にも対外ポジションの悪化や企業競争力の低下という形で徐々に悪影響が跳ね返ってきている。

米国の政策担当者は、長い目で見て貿易戦争が中国に対する米国の優位を定着させてくれるならばコストに見合うと考えるかもしれない。だが目先の話としては、貿易戦争は外国と同じように米国の成長の足も引っ張っている。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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