December 26, 2017 / 6:53 AM / 10 months ago

コラム:民意を反映しない米選挙制度、共和党に有利か

[22日 ロイター] - 12日の米アラバマ州連邦上院補選で民主党のダグ・ジョーンズ候補が勝利したしたことで、共和党が来年の連邦議会中間選挙で議席を失う可能性が、これまでになく意識されている。共和党の不人気な大統領と、極めて不人気な政策のなせる業だ。ところが補選結果を詳しく読み解くと、米国の民主主義がいかに民意を反映しなくなっているかが分かる。

 12月22日、米アラバマ州連邦上院補選で民主党のダグ・ジョーンズ候補(写真)が勝利したしたことで、共和党が来年の連邦議会中間選挙で議席を失う可能性が、これまでになく意識されている。ところが補選結果を詳しく読み解くと、米国の民主主義がいかに民意を反映しなくなっているかが分かる。アラバマ州で13日撮影(2017年 ロイター/Marvin Gentry)

アラバマ州補選の得票を地区ごとに見ると、ジョーンズ氏は7選挙区中、6区で負けているにもかかわらず、州全体の得票数は多かった。これは、自党に有利になるよう選挙区を区割りする「ゲリマンダー」が行われている兆候。民主党の勝利を非常に難しくしている選挙制度の特徴の1つだ。

通常の民主主義の枠組みであれば、共和党は来年の中間選挙で確実に敗れるところだ。大統領の政党は通常、中間選挙で敗れており、特に大統領の1期目にはそうした傾向が強い。

大統領が分断をあおる人物で、野党支持者の投票率が上がる場合にはなおさらそうなる。トランプ大統領の支持率は何カ月間も40%を下回っており、任期1年目としては前代未聞の低さだ。このほど共和党が成立させた減税法案は、史上2番目に不人気な法案であり、この春に共和党が提案していた医療保険制度(オバマケア)の撤廃法案は、史上最も不人気だった。

つまり有権者は今、共和党に対して非常に敵対的になっている。次の選挙に向けた支持率を見ると、民主党が共和党を11%ポイントリードしている。それなのに、共和党が上下いずれかの議会で過半数を失うかどうかは今なおまったく定かでない。

下院に関しては、人口分布が一部影響している。民主党支持者は都市部に集中する傾向があるのに対し、共和党支持者は郊外から農村部に均等に散らばっている。このことは、党派色のない選挙区割りであったとしても共和党に有利になることを意味する。

しかし大半の州では、両党が自党に有利な選挙区割りを試みる。その結果が、共和党が選挙区の見直しを担っているアラバマ州の選挙結果である。

2010年の選挙で共和党が圧勝して以来、多くの州議会を共和党が制した。これにより、10年毎に行われる選挙区割り見直しでは、共和党が主導権を握った。つまり民主党は、来年の中間選挙で得票数が共和党を大幅に上回ったとしても、下院を制することができない可能性があるのだ。

上院ではこのようなゲリマンダーが通用しないが、民主党が非常に不利なことは変わらない。なぜなら、来年改選される上院議席の3分の1は、圧倒的に民主党の議席なのだ。民主党の現有議席は23なのに対し、共和党は10。しかもこの10州は強力な保守王国が多い。

10州のうち、民主党にとって最も勝ち目があるのは浮動票の多いネバダ州だ。また、アリゾナ州は歴史的に保守だが、中南米系住民が増えている上、共和党はアラバマ州で負けたロイ・ムーア氏のような癖の強い候補者を据える可能性が高い。

もちろん、アラバマ州補選での民主党勝利で情勢は一変した。民主党はアリゾナ、ネバダ両州で議席を奪い、現有議席23を死守するだけで上院を制することができるかもしれない。補選後、上院100議席の内訳は共和党51、民主党49となっている。

ニューヨーク・タイムズのデータアナリスト、ネート・コーン氏によると、アラバマ州補選結果を受けて、上院での民主党の勝算は「大穴」レベルから「五分五分」に上がった。とはいえ、民主党の支持率が圧倒的に高い中、アラバマで勝つという信じ難い出来事が起こってやっと「五分五分」程度、という事実は注目に値する。民主党の得票率が共和党をわずかに上回る程度ではとても上下両院を制することはできず、  在野にとどまるだろう。

このことは、米国の民主主義が抱えるもう1つの問題を浮かび上がらせる。政権を握った政党が、最高裁判事を選ぶという形で数十年にわたってその権力を具現化できるのだ。共和党はオバマ前大統領が判事に指名したメリック・ガーランド氏の承認を拒み、その後トランプ大統領が強硬な保守派のニール・ゴーサッチ判事を任命した。次に共和党判事が任命されれば、最高裁の思想的バランスは一変する。

つまり、共和党が中間選挙で上院を制すれば、世論調査では不人気なのに農村部に偏った「選挙人団」の票を勝ち取ったトランプ氏が、数十年にわたって最高裁の支配権を確立することになる。そしてこの共和党最高裁は、代表制民主主義を犠牲にしてでも共和党に有利な行動をとり、米国の反民主主義的体制に拍車をかける恐れがある。

ダグ・ジョーンズ氏の驚きの勝利により、こうしたことが起こる確率は下がったが、あり得なくなったと言うにはほど遠い。米国の政治体制が、次第に民意を反映しなくなっていることの証左である。

*筆者はワシントン大政治科学部の講師です。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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