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コラム

コラム:米国民が不適格と思う「トランプ大統領」を選んだ訳

[9日 ロイター] - 「支配階級を倒せ」──。これは次期大統領に共和党のドナルド・トランプ候補を選んだ米国の有権者が送ったメッセージだ。怒りと不満、そして反逆がこのメッセージに込められている。

 11月9日、各出口調査によると、トランプ氏(写真)が大統領にふさわしいと答えた有権者はわずか38%。一方、クリントン氏の場合は52%だった。それでもトランプ氏が勝った。米国民は大統領にふさわしいとは思わない候補者を選んだのだ。NY市で撮影(2016年 ロイター/Carlo Allegri)

米大統領選におけるトランプ氏の勝利は、従来のあらゆる政治支配を拒否することを意味している。

各出口調査によると、有権者の60%がトランプ氏に対して批判的な意見をもっていた。これは、民主党ヒラリー・クリントン候補の54%よりも高い。それでもトランプ氏が勝った。また、63%がトランプ氏は誠実でなく信頼できないと答え、クリントン氏の61%を上回っていながら、それでもトランプ氏が勝った。

トランプ氏が大統領にふさわしいと答えた有権者はわずか38%。一方、クリントン氏の場合は52%だった。それでもトランプ氏が勝った。米国民は大統領にふさわしいとは思わない候補者を選んだのだ。

米国民の心理

米国民の心理

大接戦となった今回の大統領選では、有権者の半数が現状に激しい拒絶反応を示した。一般投票で両候補は接戦を演じた。

トランプ氏に一票を投じた有権者の多くは、オバマ政権のリベラリズムに怒りを感じる共和党支持者だった。トランプ氏に対し、多くの共和党支持者は不安を抱いており、真の保守主義とは認めていなかった。だが最終的には、クリントン氏率いる新たなリベラル政権の誕生を警戒し、トランプ氏に票を投じた。結局、共和党支持者の9割がトランプ氏に投票したのだ。

トランプ氏はまた、白人労働者階級に属する人々を大勢引きつけた。彼らの多くはかつて民主党に投票していたが、グローバル化、失業、移民、政治的な公正さといった、自分の国で起きている変化を脅威と感じた。トランプ氏の支持者は、同氏が米政府やメディア、共和党指導部に反抗を示したことに感銘を受け、考えを受け入れた。例えば、トランプ氏は気候変動を「でっち上げの、金もうけのための業界」だとし、科学にまで食ってかかった。

「アメリカを再び偉大にする」というトランプ氏のスローガンは支持者の心に響いた。賃金は高く、移民はほとんどおらず、白人男性が社会を回し、世界における米国の地位が揺るぎなかった古き良きアメリカを取り戻したいと望んでいるからだ。同氏が勝利宣言を行おうと会場に姿を現すと、支持者は勝利に酔いしれながら「USA! USA!」と叫んだ。

白人有権者の学歴による投票行動の違いは、今回の大統領選ではとりわけ大きかった。2012年の大統領選では、共和党のミット・ロムニー候補への投票は、大卒の白人有権者よりも、非大卒の白人有権者の方が5ポイント多かった。それに対し今年の選挙では、その差は18ポイントに拡大し、トランプ氏に投票した非大卒者と大卒者の割合は3対1(67%対28%)となった。

今年の大統領選で何が起きたかは地図を見れば一目瞭然だ。民主党は北東部と西海岸の州を制したが、オハイオ、ペンシルベニア、ウィスコンシン、アイオワの4州では、今回は共和党のトランプ氏が勝利した。これら「ラストベルト(さびついた工業地帯)」と呼ばれる中西部・北東部地域の州には、労働者階級の白人有権者が多い。

トランプ氏の勝利は、まさにポピュリズムだと言える。その中核には反エリート意識がある。クリントン氏がトランプ氏の支持者を「みじめな人たちの集まり」と呼ぶと、彼らは立ち上がり、怒りを表した。

トランプ氏の勝利を衝撃をもって受け止めた他国に対しても、彼らは同様の態度を示した。ある英国のラジオコメンテーターは、母国でのトランプ評を聞かれると「むかつく」と答えた。

大統領選の各世論調査はなぜ外れたのか。その主な原因として、トランプ氏の支持者はクリントン氏の支持者よりも熱心であったことが挙げられる。

トランプ氏の支持者を駆り立てたのは変化への渇望だった。大統領候補に何を望むかについての調査では、39%の有権者が「変化をもたらすことができる人」と答え、最も多かった。そして、変化を望むとした有権者の実に83%がトランプ氏に一票を投じたのだ。

トランプ氏が変化の象徴である理由はいたってシンプルだ。同氏がオバマ大統領と正反対であるからだ。トランプ氏ほど、オバマ大統領と異なる人物を他に思いつくのは難しい。オバマ氏は慎重で、熟考し、知識豊かで、政治的公正さを兼ね備えている。一方のトランプ氏は品位に欠け、自慢好き、無知で、傲慢(ごうまん)である。

オバマ氏は多方面から称賛を集めている。だが同時に、無力だと見られてもいる。支持者の多くは、同氏が約束した「希望と変化」をもたらすことに失敗したことを不満に思っている。故に、現行の体制側の候補と見なされたクリントン氏に熱狂するのは困難であった。スキャンダルに悩まされたことも痛手だった。トランプ氏の支持者にとって、同氏は実行力のある強いリーダーとして映る。

あまりに予想外の勝利であったため、トランプ氏は議会から多くを引き出せるかもしれない。同氏のおかげで、共和党は上院・下院の両方で過半数を死守することができたのだ。その結果、ある負託が生まれた。どのような負託かというと、オバマ大統領が行ってきた、医療保険制度改革法(オバマケア)や移民制度改革、環境規制やイランとの核合意といった数々の政策を全て廃止するという約束を、トランプ氏が果たすことである。

有権者は「反オバマ」を選択した。そしてそれはオバマ氏を取り消してそれ以前に戻すための負託として受け取られることになるだろう。

*筆者は米ジョージ・メイソン大学政治学部の教授、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のコミュニケーション研究分野の客員教授を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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