March 1, 2018 / 3:50 AM / 7 months ago

コラム:中国に皇帝復活か、習主席「任期撤廃」の意味

[27日 ロイター] - 中国清王朝の最盛期に君臨した第6皇帝の乾隆帝は、1796年2月9日、61年に及んだ権力の座から退位し、35歳の息子に譲位した。

 2月27日、国家主席の任期撤廃を首尾よく進めようとしている習近平国家主席(写真)が、生涯にわたり支配を継続しようと決めたことは明らかだが、より重要なのは、毛沢東後の共産党指導層コンセンサスの残滓(ざんし)を粉々に打ち砕いたことだ。北京の土産店で26日撮影(2018年 ロイター/Thomas Peter)

それから3年後に亡くなるまで背後から権力を行使し続けたとはいえ、乾隆帝が退位したという事実は、王朝の正当性を臣民が理解する上で極めて重要だった。

乾隆帝は、祖父で偉大な皇帝だった康熙帝の在位期間に並ぶ1日前に退位することを選んだ。康熙帝の前例のない長期にわたる支配は黄金時代と見なされ、敬意が払われていた。そのような祖父の在位を上回ってしまうことは慎みがないことであり、王位そのものだけでなく、愛新覚羅一族に悪影響を及ぼすと考えたのだろう。乾隆帝の退位は、王族への臣民の尊敬を保つのに役立った。たとえ皇帝であろうとも、政治に妥協が必要なこともある。

2018年2月25日、習近平国家主席は明らかに異なるアプローチを取った。国家主席の任期撤廃を首尾よく進めようとしている64歳の習氏は、主に2つのことを成し遂げた。

最も明らかなのは、習氏が生涯にわたり、支配を継続しようと決めたことだ(「支配」という言葉がぴったりだと筆者は考える)。だがより重要なのは、1970年代後半から1980年代前半に構築された毛沢東後の共産党指導層コンセンサスの残滓(ざんし)を粉々に打ち砕いたことだ。

そうすることにより、習氏は、中国政治の機能やインセンティブについての、世界の理解の残された部分を破壊。中国を明らかに独裁的な何かへと変貌させ、同国エリート政界に危険をはらんだ亀裂を新たに生じさせた。これが意味するものの大きさは計り知れない。

毛主席時代の経済的、社会的、人道的な惨事により、1人の人間にあまりに長期間、過剰な権力を集中させることに党指導部が慎重になったことは理解できる。毛主席の死後、最終的に毛氏の選んだ後継者の華国鋒氏よりも党内でうまく立ち回り、権力闘争に勝利したトウ小平氏は、国家主席の任期を定める必要性と「集団指導」と呼ばれる指導体制を特徴とする経済改革を支える政治的コンセンサスを確立した。

後者の集団指導という考え方は、党最高幹部の間のさまざまな派閥による正式な代表制、あるいは派閥間の正式な交渉の重要性を重んじている。とりわけそれは、党中央政治局常務委員会(PSC)に表れており、PSCはトウ氏の改革期において執行委員会のような役割を果たすようになった。独裁体制においてさえ、統治の方向性を巡って競合する利益や考えが存在し、中国がトウ氏の政策下で力強く成長する中、同氏の集団指導モデルは何十年も党内に平和を保ってきた。

習氏は2008年に国家副主席に指名され、特に2012年に党中央委員会の総書記となって以降、このようなモデルの転換に関心を示してきた。名目上はまだ胡錦濤氏や温家宝氏より下の地位にいながらも、習氏が彼らから国際的な注目をさらうことも珍しくなかった。

国家主席になると、習氏はPSCの構成を変え、メンバーを9人から7人に縮小。委員会のバランスを重視するこれまでの規律を破り、自身の派閥で固めた。昨年10月には、党規約に自身の名と指導理念を盛り込むことにも成功。前任者の胡錦濤氏も江沢民氏も成し遂げることがなかった名誉だ。また、どちらかというと毛氏に近い称号となる、党の「中核」とも呼ばれることになった。国家主席の任期撤廃への動きは、単にこの流れの一環にすぎない。

この影響はすぐに、外部からの中国政治の分析が一段と難しくなるということに表れるだろう。旧ソ連時代の「クレムリノロジー(ソ連研究)」と同じく、中国の意図と目的を評価するための「ペキノロジー(中国研究)」は、中国指導層による政治の機能についての理解や想定というフィルターを通した、又聞きの間接情報に頼らざるを得なかった。

だがこうした分析は全て、トウ氏によって構築された党幹部のコンセンサスの理解を起点としていた。そしてそのコンセンサスは、指導部をまとめる一方で、彼らの行動や関心を分かりやすく縛っていた。習氏は指導部におけるこうした一連のルールを廃止することで、既存のシステムで出世してきた人は誰もが、もはやそれに守られることはないだろうというメッセージを送っている。

派閥や利権のネットワークは、外部から分かりにくい理屈で修正されたり、再編されたりする可能性がある。専門家は近い将来において、直近の過去より暗中に立たされるかもしれない。

このことはまた、全体として、中国の政治的方向性が一段と極端な行動へと向かう可能性を意味している。これは、極めて個人色の強い支配体制の一要素でもある。

対外的には洗練された一枚岩の政治体制に見え、汚職撲滅運動などの成果で習氏は実際に人気があるにもかかわらず、党内にはいまだに同氏の政策の方向性に不満を抱く人も相当数いる。こうしたグループには現在、習氏への抵抗を組織する余地はほとんどないだろうが、新たなルールによって、ほんの最近まであり得なかったような再編や粛清、あるいは弾圧が起きる可能性がある。独裁は安定せず、新たなコンセンサスは下位にいる者の態度に変化をもたらす。安定は望めないだろう。

こうした変化において非常に重要なのは、習氏が指導部内で複数のポジションにあることを思い出すことだ。そして、国家主席の任期撤廃が、中国政府における同氏のポジションにのみ影響するということだ。政治権力の究極的な源である党総書記という同氏の地位には適用されない。

このことは、昨年の党大会での権力固めが十分だったと習氏が考えており、任期撤廃はそのフォローアップにすぎないと解釈することもできる。

いずれにせよ、こうした変化の累積効果により、習氏が生きている限り、そして党が権力を握っている限り、同氏がこの国を支配し続けることは保証されたも同然だ。

これまでの同氏の支配は、世界、そして中国国内に対し、かつてのやり方はもう終わったという一連のシグナルを発するものだった。

中国は回帰した。再び皇帝を頂いて。

*筆者は、ニューヨークのシンクタンク「The Metropolitan Society for International Affairs」の創設者。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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 2月27日、国家主席の任期撤廃を首尾よく進めようとしている習近平国家主席(写真)が、生涯にわたり支配を継続しようと決めたことは明らかだが、より重要なのは、毛沢東後の共産党指導層コンセンサスの残滓(ざんし)を粉々に打ち砕いたことだ。韓国・平昌で25日撮影(2018年 ロイター/Damir Sagolj)

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