March 25, 2020 / 5:20 AM / 10 hours ago更新

コラム:コロナ後の世界、パラダイムシフトか=上野泰也氏

[東京 25日] - ダウ工業株30種平均.DJIの前営業日比変動幅を見ると、3月に入ってから200ドルを超える幅で上昇したのは6日、200ドルを超える幅で下落したのは10日である(24日現在)。

ふだんは大勢の人でにぎわうニューヨークのタイムズスクエア。3月23日撮影(2020年 ロイターCarlo Allegri)

日経平均株価.N225についても同様にカウントしてみると、200円を超える上昇は4日、200円を超える下落は8日である(同)。

新型コロナウイルス感染拡大という全く新しいタイプの危機に直面して、世界中の金融市場が動揺している。値動きは連日大きなものになっており、ボラティリティーの上昇がリスク量の半強制的圧縮につながる場面も見られた。

現金化ニーズを背景とする株式と債券の同時安、金利動向とは無関係に進むドル高など、金融市場のコンディションは平時とは大きく異なっている。市場が正常化するまでには、まだ、時間がかかりそうである。

感染拡大を防ぐための大都市圏、または全土のロックダウン(封鎖)など、中国だけでなく西側民主主義諸国やインドでも、ウイルス感染封じ込めのための果断な対応策が取られつつある。

今回の新型ウイルスは、気温がかなり高い中でも感染力を維持している可能性があり、封じ込めにはまだ、かなりの時間が必要だろう。とはいえ、将来のいずれかの時点で感染拡大が峠を越えて終息に向かうとみておくことに、そう大きな無理はない。

<ウイルスに耐性>

問題は、その先にどのような世界が待っているのかだ。少し気が早いのかもしれないが、「コロナ後」のイメージを描いておくことは無駄ではあるまい。

まず、考えなければならないのは、今回のウイルスに有効な治療薬やワクチンが治験を経て実用化されたとして、それで「コロナは一件落着」という話になるのかという点である。

ウイルス感染症の一種であるインフルエンザの治療薬には、タミフルとゾフルーザがある。毎年きちんと予防注射をしていたものの、筆者は年末年始にA型にかかってしまった。仕事始めが近かったので医師にゾフルーザの処方を希望したものの、あっさり断られてしまった。

ゾフルーザは確かに即効性があるが、これを乗り越える力のある耐性ウイルスができて広がってしまうと困るので、医師間の申し合わせで、ゾフルーザはできるだけ処方を避けているという。

調べてみると、河岡義裕東大教授らのチームが昨年11月、英科学誌で発表した内容が報道されていた。ゾフルーザを服用した際に体内に生じ、薬が効きにくくなる耐性ウイルスに、耐性のない通常のウイルスと同程度の感染力や症状を引き起こす力があることを動物実験で確認したという。

新型コロナウイルスについても、仮に治療薬が迅速に開発されたとしても、上記のインフルエンザと同じような話になってしまうリスクがあるように思う。インフルエンザのウイルスと予防注射するワクチンの関係はいたちごっこで、ワクチンは年を追うごとに強いものになっているとも聞く。ウイルスは進化する。

<ライフスタイル、大変化か>

次に考えるべきは、ライフスタイルの変化の有無だろう。新型コロナウイルスにより、欧州で最も深刻な事態に陥った国は、現時点ではイタリアである。財政緊縮を背景とする医療体制の不十分さを指摘する声もあるが、感染者が激増した背景として、キスやハグなど身体的接触が濃密であることの影響を指摘する向きも少なくない。

「コロナ後」には、ラテン的な気質からの一種の割り切りで、すっかり元に戻るのか。それとも、トラウマのようなものが残り、これまでとは変わってくるのか。現時点では結論を出しにくいが、少なくとも若年層は後者ではないかと、筆者は考えている。

これは1つの例だが、ライフスタイルの変化が世界のさまざまなところで、大なり小なり生じてくるのではないか。

<消費は戻るのか>

日本では、今回の件をきっかけにテレワークによる在宅勤務という新しい勤務形態の普及が加速するなど、人々の働き方に影響が出てくる部分があろう。

また、「巣ごもり消費」をよしとする人々の増加を想定することもできる。政府は状況が落ち着いた段階で、ウイルスの件でダメージを受けた旅行や外食といった分野における消費を喚起すべく、金銭的な支援を経済対策の中で行う方向と報じられている。蓄積した需要が表に出てくること(ペントアップデマンド)もあり、これらの分野が一時的に活況を呈することが十分考えられる。  

けれども、その後はどうだろうか。インバウンドを含め、「コロナ前」の状況まで完全に戻るのは、なかなか難しいのではないか。

<下がったままの金利、運用難深刻に>

金融市場はどうか。株価への配慮が強く感じられる米連邦準備理事会(FRB)をはじめとする各国中央銀行が、大幅な利下げや量的緩和の導入・再開・拡充に動いている。FRBのバランスシートの規模は、未曾有の大きさへと膨らみつつある。

緊急対応策と位置付けられるべきこうした措置は、新型コロナウイルスの問題が終息した後、淡々と撤回され得るのだろうか。金融危機後の経緯も念頭に置きつつ考えると、「逆戻り」は極めて困難だと言わざるを得ない。米国のゼロ金利やFRBの膨張したバランスシートは「常態」と化し、市場参加者はそれを前提にして動くことになるだろう。

短期金融市場に厚みがある米国が、マイナス金利を導入するのは難しい。すでに導入している日欧との対比では、米国(ドル)の金利面での優位性がわずかながらも保たれるだろうと筆者はみている。 

もっとも、ドル金利の位置が以前に比べると、はるかに低いところにとどまり続けることは、資金運用担当者にとっては「パラダイムシフト」と言えそうな、非常に大きな状況の変化と言える。

事態は時々刻々動いており、どうしてもそれに目を奪われがちではあるものの、「コロナ後」についても、折に触れて考えを巡らせておく必要がある。

*本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*上野泰也氏は、みずほ証券のチーフマーケットエコノミスト。会計検査院を経て、1988年富士銀行に入行。為替ディーラーとして勤務した後、為替、資金、債券各セクションにてマーケットエコノミストを歴任。2000年から現職。

(編集:田巻一彦)

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