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コラム:FRBに5カ月先行、ポーランド中銀から占う米金融政策=上野泰也氏

[東京 26日] - 昨年に続いて今年も、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策が世界の金融市場で最も大きな注目点になっている。昨年12月の利上げ幅は0.5%ポイントにペースダウン。今年2月はさらにペースダウンして0.25%ポイントにとどまる公算が大きい。

 1月26日、昨年に続いて今年も、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策が世界の金融市場で最も大きな注目点になっている。写真は2022年9月、ワルシャワのポーランド中銀前で撮影(2023年 ロイター/Kacper Pempel)

3月以降に1─2回の追加利上げを見込む向きは市場で少なくないものの、いずれにせよ米国の利上げは近い将来停止されるだろう。そこからは、台形の上底部分にあたる期間をできるだけ長くして金融引き締め効果を十分浸透させたいFRBと、秋以降の利下げ転換を見込む市場とが対決する構図になる。

では、今回の局面でFRBに先行して動く形になる中央銀行は、どこだろうか。

<カナダ中銀とFRBの連動性>

米国の「お隣さん」であり、政策金利がリンクして動く傾向があるカナダ銀行(BOC)は有力候補と言える。

BOCはFRBよりも2週間早い昨年3月2日に利上げを開始した後、4月と6月に0.5%ポイント、7月には1.0%ポイントの追加利上げを実施した。しかし、その後は徐々にペースダウン。利上げ幅は9月に0.75%ポイント、10月と12月は0.5%ポイントになった。

今年は1月25日にさらに圧縮して0.25%ポイントの利上げを実施し、主要政策金利である翌日物金利誘導水準は4.5%になった。利上げはここで停止したとみられている。

BOCの声明文では「われわれは急速に金利を引き上げてきたが、今はいったん停止し、インフレ率を目標の2%に戻すために金融政策が十分に制限的かどうかを評価する時だ」「正確には、これは条件付きの一時停止だ」「(インフレ率の)上振れリスクが顕在化すれば、さらに利上げを行う用意がある」とした。こうした姿勢は、FRBが近い将来に取るだろうと市場がみているスタンスと合致する。

短期金融市場はBOCが今秋に利下げに転じる可能性を織り込んでいる。だが、BOCのマックレム総裁は、利下げについて語るのは時期尚早だとしており、パウエルFRB議長の現時点での見解と大差ない。ただ、FRBの先行指標としてのBOCには物足りない面もある。

<注目すべきポーランド中銀>

地理的には米国から遠く離れており、経済的なつながりが強いわけでもないのだが、筆者が個人的に注目しているのはポーランドの中央銀行であるポーランド国立銀行(NBP)である。

NBPがサプライズ的に利上げを開始したのは、21年10月6日。22年3月16日のFRBによる利上げ開始よりも、5カ月以上早いタイミングである。主要政策金利であるレファレンスレートは0.4%ポイント引き上げられて0.5%になった。インフレ率の加速は一時的なものにはとどまらず、想定を超えて長期化する恐れがあるとの判断からの政策変更である。

それまでハト派とみられていたNBPのグラピンスキー総裁は、人が変わったように急ピッチの利上げを主導した。中東欧の周辺国の中央銀行が利上げを積み重ねたことも、同総裁の背中を押したとみられる。

NBPの追加利上げ実施は、21年11月に0.75%ポイント、同年12月と22年1月、2月に0.5%ポイント、3月に0.75%ポイント、4月に1.0%ポイント、5月と6月に0.75%ポイント、7月に0.5%ポイント、9月に0.25%ポイントである。

その結果、22年9月にNBPのレファレンスレートは6.75%まで上昇した。そして、この水準で、NBPは様子見据え置き姿勢に転じた。

市場は、22年10月5日の会合で0.25%ポイントの追加利上げが行われて政策金利は切りの良い7.0%になるとみていたのだが、そうはならなかった。

<利上げ停止も同間隔なら、FRBは今年2月>

仮に、FRBがFF(フェデラルファンド)レート誘導レンジの中央値を節目の5%を上回るところまでは持ち上げず、現在の4.375%から4.625%、あるいは4.875%までの引き上げにとどめれば、NBPのケースと似通ってくる。

NBPは、22年10月の政策金利据え置き決定後の声明文で「これまでのかなりの金融引き締めが今後、国内需要を抑制し続けていくとの判断に至った」と表明した。金融政策が実体経済に効果を発揮するまでの時間差(ラグ)と累積的な効果を考慮し、状況の推移を注視する姿勢をとるという意志表示である。

その後、今年1月の会合に至るまで、ポーランドの政策金利は4カ月連続で据え置かれている。1月4日の声明文は、世界経済の成長が22年第4四半期に減速したこと、ロシアのウクライナ侵攻による影響が引き続き影を落としていること、インフレ率は多くの国で引き続き高止まりしているものの、価格上昇圧力はいくつかの面で弱まりつつあり、多くの国で卸売物価の伸びが鈍化していることなどに言及。海外の経済状況悪化やNBPによる金融引き締めの効果から、緩やかではあるものの、ポーランドのインフレ率は目標(2.5%)に向かって鈍化していくだろうとした。

もっとも、今後の政策決定は物価・景気見通しに関するデータ次第であり、ロシアのウクライナ侵攻がポーランド経済に及ぼす影響もそこに含まれるとした(ポーランドはウクライナの隣国である)。

さらにNBPのグラピンスキー総裁は翌5日の記者会見で、年末に利下げを実施する可能性があるとの認識を示した。ロイターの報道では「できる限り早期に金利を引き下げる。今年末にそれが可能だろうか。そうなることをなお期待している」「インフレ率は年末に1ケタになる見通しだ。11月の予測では8%だったが、8%を下回るだろう」といった発言があった。

FRBはこれまでのところ、年内の利下げについては全否定の姿勢である。一方、NBPは、総裁が年内に利下げする可能性を明言している。そのNBPは、昨年9月の利上げを最後に様子見に転じており、FRBより先を走っている。

このところの動きをあらためて整理すると、NBPが利上げを開始したのは21年10月で、FRBよりも5カ月早かった。

NBPが利上げ幅を0.5%ポイントにペースダウンしたのは22年7月で、FRBよりも5カ月早かった。

NBPの0.25%ポイントへの利上げペースダウンは同年9月なので、FRBが今年2月にそうすると、ラグはやはり5カ月である。

そして、NBPの利上げ停止(最後の利上げ)は22年9月である。上記と同じ5カ月のインターバルをあてはめると、FRBの利上げ停止は今年2月ということになる。筆者の予想と見事に合致するのだが、果たして実際はどうなるだろうか。

ドル/円相場のメインドライバーは今年もFRBの動き方だろう。米国の利下げが濃厚になれば、ドル安・円高が促される可能性が高い。そのタイミングを考えていく上では、ここで取り上げたポーランドを含めて、他の中央銀行の行動パターンも注視していくことが有用だろう。

編集:田巻一彦

*本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*上野泰也氏は、みずほ証券のチーフマーケットエコノミスト。会計検査院を経て、1988年富士銀行に入行。為替ディーラーとして勤務した後、為替、資金、債券各セクションにてマーケットエコノミストを歴任。2000年から現職。

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