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コラム

コラム:イエレン氏、G7でプレッシャーに直面か ドル独り勝ちで

[オーランド(米フロリダ州) 18日 ロイター] - イエレン米財務長官は昨年1月の就任以来、公の場でドル相場についてほとんど言及してこなかったが、そろそろ発言せざるを得なくなるかもしれない。

 イエレン米財務長官は昨年1月の就任以来、公の場でドル相場についてほとんど言及してこなかったが、そろそろ発言せざるを得なくなるかもしれない。写真はイエレン氏。ワシントンで12日代表撮影(2022年 ロイター)

イエレン氏は19日にドイツのボンで開幕する主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議に出席するが、折しも世界経済はこの10年間で最も厳しい状況にあり、その中心に位置するのが、万能であるかに見えるドルの役割だ。

ドルは主要通貨バスケットに対して過去20年間で最も強い水準にある。日本の政府関係者は円安に不快感を示し、ユーロ圏の政府関係者も今ではユーロが対ドルで20年来の底値と1ユーロ=1ドルに近づいていることが引き起こすインフレの影響に頭を悩ませている。

欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのビルロワドガロー仏中銀総裁は今週、ECBは為替レートの動向を「注意深く監視する」と述べ、「ユーロが弱すぎるのは、われわれの物価安定目標に反する」と指摘した。

イエレン氏はドル高に満足しているはずだ。ドルは輸入物価の上昇を抑える効果があるからだ。インフレ率は現在、40年ぶりの高水準にあり、消費者、企業、政策立案者にとって最も緊急な課題となっている。

米財務省は1995年に当時のロバート・ルービン財務長官が「強いドルは米国の国益にかなう」と宣言した方針をほぼ守っており、ルービン氏を含め後継の財務長官はその後、この文言を何年にもわたり繰り返し口にした。

この政策は相場の具体的な水準には言及していない。しかし、政府が貿易を促進する自国通貨安に傾くという憶測を市場に与えず、しかも米国債利回りとインフレ予想をもコントロールするのに役立つように設計されていた。

トランプ前大統領は保護主義への広範なシフトの一環として、こうした政策の一切合切を投げ捨て、たびたびドル安への支持を表明した。トランプ政権下で財務長官を務めたムニューシン氏もドル安を歓迎する発言をしたが、恥ずかしいことに、その後撤回を余儀なくされた。

もちろん、イエレン氏は民主党の政治家だ。しかしムニューシン氏から財務長官職を引き継いでから、これまでほとんど為替レートの問題に触れていない。

上院で行われた指名承認の公聴会では、市場で決定される為替レートを信じており、商業的利益を得るために通貨安を狙うことは「容認できない」と述べた。

最近も米紙ウォールストリート・ジャーナルが主催するウェブキャストでこの発言を繰り返し、世界の他の国々と比較して米国の金利が上昇していることがドル高を助長していると指摘。「ある意味で、それは金融引き締め政策の機能の一部だ」とも述べ、これまでのドル高に満足していることを示唆した。

<2方向のリスク>

ことがそのように単純であれば、イエレン氏やG7諸国の財務相は、金利差が解消すればいずれドル高も収まると考えるだろう。

しかし、世界市場をさらに不安にさせかねない、行き過ぎたドル高に対して、「口撃」を発したくなる人がいるかもしれない。

バークレイズとゴールドマン・サックスのアナリストはドル相場がそろそろ頭打ちになりつつあると見ており、ゴールドマンはドルが既に18%割高な水準にあると推定しているが、それでも相場反転宣言には慎重な姿勢だ。

ECBの利上げ余地は米連邦準備理事会(FRB)より小さいかもしれない。日銀は10年物利回りを0.25%以下に抑えるという超低金利政策をいまだに堅守している。

スタンダードチャータードのFX戦略部長で年季の入ったG7ウォッチャーでもあるスティーブン・エングランダー氏は、日本の金融政策は円安と完全に一致しており、今回のG7の共同声明にドル高に対する日本政府の抗議が盛り込まれる可能性は低いと指摘している。

世界の主要先進国がドルの独歩高に対処するために協調行動をとったのは、1985年のプラザ合意が最後だ。

米国でインフレが高まり、FRBがタカ派化し、世界の主要中銀間で金融政策の方向性が異なる今の状況は、1980年代初頭やプラザ合意までの期間と類似しているが、今回も同じ対応が取られるとの見方はほとんどない。

しかし会議の議題を決めるのは議長国であり、フランスの当局者から既にユーロを巡って不満が出ている以上、議長国ドイツがユーロの低迷とそれに伴うインフレ圧力についてもっと神経質になっているのは間違いないだろう。

ナティクシスの米州担当チーフエコノミストでトランプ大統領の元顧問であるジョー・ラボルニャ氏は、イエレン氏がこの問題をできれば取り上げたいと思っているとは考えていないが、近い将来、取り上げることはあり得るとみている。

「米政権はドル安を望まないだろうし、確かに現時点ではそうだ。ドル安は金融環境を緩和するが、米国は金融の引き締めを望んでいる。しかし夏にかけてドル高が行き過ぎて、ユーロ圏でスタグフレーションが起きれば、考え方が変わるかもしれない」と述べた。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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