July 1, 2020 / 7:22 AM / 9 days ago

コラム:ドル円の変動には規則性、短期的な下落に警戒必要=亀岡裕次氏

[東京 1日] - 最近は、リスクオンでドル円が上昇する局面もあれば、下落する局面もある。一見するとドル円の動きは不規則のようにも思えるが、規則性がなくなっているわけではなさそうだ。為替変動の規則性を確認することにより、為替がどの方向に向かうのか理解しやすくなるだろう。

7月1日、最近は、リスクオンでドル円が上昇する局面もあれば、下落する局面もある。写真は米ドルと日本円の紙幣。2017年6月撮影(2020年 ロイター/Thomas White)

<株価と金利で4パターン>

世界的な株価と金利の動きにより、ドル円の変動パターンは4つに分類できる。

株高・金利上昇の場合、リスクオンのドル安を金利上昇のドル高が相殺するので、リスクオンのドル安より「円安」が優勢となり、ドル円は上昇しやすくなる。

株高・金利低下の場合、リスクオンのドル安に金利低下のドル安が加わるので、リスクオンの円安より「ドル安」が優勢となり、ドル円は下落しやすくなる。

株安・金利上昇の場合、リスクオフのドル高に金利上昇のドル高が加わるので、リスクオフの円高より「ドル高」が優勢となり、ドル円は上昇しやすくなる。

そして、株安・金利低下の場合、リスクオフのドル高を金利低下のドル安が相殺するので、リスクオフのドル高より「円高」が優勢となり、ドル円は下落しやすくなる。

つまり、株価と金利が逆方向に動くと、ドルの動きがドル円を左右し、株価とドル円が逆方向に動きやすくなる。一方、株価と金利が同じ方向に動くと、円の動きがドル円を左右し、株価とドル円が同じ方向に動きやすくなる。

<流動性需給の安定化で相関に変化>

では、実際に株価と金利はどのように動いてきたのか、米国を例に整理しておこう。

新型コロナウイルス対応で米連邦準備理事会(FRB)が利下げや量的緩和を発動した今年3月は、長短金利が大幅に低下した。金利低下によって相対的に株式益回りが押し上げられ、裁定関係から株式買いが誘発され、株価が反発した。中央銀行の資金供給によって市場の流動性不足が解消に向かうなかで、金利低下・株高など株価と金利が逆方向に動くケースが多かった。

ただ、FRBの資金供給は需要に応じたものであり、4月以降は流動性需要の減少にともない資金供給ペースが鈍化した。市場の流動性需給が安定化していくなかで、金融緩和による金利低下を受けて株価が上昇するケースや、金利上昇を受けて株価が下落するケースは減少した。その代わり、株価と金利が景気見通しやリスク要因などに応じて同じ方向に動くケースが増えるようになった。

<ドル円の決定要因は>

次に、そうした金融環境のなかで、為替がどのように動いてきたのかを整理しておこう。

ドル、円、他通貨の為替を見ると、株価と金利が逆方向に動くケースが多かった3月から4月のドル円は、他通貨に対する「ドル」の動きに連動していた。一方、株価と金利が同じ方向に動くケースが多くなった5月以降のドル円は、円に対する他通貨の動き、つまり「クロス円」の動きに連動しやすくなっている。前述の通り、株価と金利が逆方向に動くと、ドル相場がドル円を左右しやすく、株価と金利が同方向に動くと、円相場がドル円を左右しやすいことがわかる。

金利低下で株高、金利上昇で株安というように、株価と金利が逆相関のケースが多かった3月は、株価とドル円も逆相関だった。しかし、市場の流動性が安定化するようになった4月以降は、株価と金利が順相関となり、それが影響して5月以降は株価とドル円も順相関となっている。やはり、株価と金利が逆方向に動くと、株価とドル円は逆方向に動きやすく、株価と金利が同じ方向に動くと、株価とドル円は同じ方向に動きやすいことがわかる。

<短期と中長期で異なる方向性>

現状は株価と金利が同方向に動きやすくなっているので、ドル円はドルよりも「クロス円」と連動しやすく、株価・金利と同方向に動きやすくなっている。世界的に中銀が金融緩和を長期化するなかで金利変動が小幅になると、為替変動を抑制する一因にはなるが、株価と金利が同方向に動くことでクロス円やドル円は変動しやすくなる。つまり、基本的に、リスクオン局面では「円安」によりドル円が上昇しやすく、リスクオフ局面では「円高」によりドル円が下落しやすい状況にあると考えられる。

11月に米大統領選を控え、米国政府は中国との対立が景気に悪影響を及ぼさないように配慮するだろうし、中国関連の材料はしばらくはリスクオフの円高要因とはなりにくいだろう。また、米国の景気指標が市場予想を上回る改善を示した場合には、リスクオンの円安でドル円が上昇するだろうし、そうなる余地は十分に残っていると考えられる。

ただ、米国における新型コロナウイルスの感染拡大が加速すれば、経済活動が抑制されて景気見通しを悪化させるので、リスクオフの円高でドル円が下落する可能性もある。

ドル円は、中長期的にはリスクオンで上昇傾向、短期的にはリスクオフによる下落局面も出てくると考えている。

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*亀岡裕次氏は、大和アセットマネジメントのチーフ為替ストラテジスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て現職。

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編集 橋本浩

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