for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

コラム:膠着のドル/円、米大統領選後に円安か=亀岡裕次氏

[東京 18日] - 11月3日の米大統領・議会選挙は、ドル/円JPY=EBS相場にどのような影響を与えるのだろうか。まず、1973年から2019年までの47年間を振り返り、米国の議会多数政党や政権政党別の為替動向を確認してみる。

 11月3日の米大統領・議会選挙は、ドル/円相場にどのような影響を与えるのだろうか。写真は13日、ネバダ州ヘンダーソンで開催された選挙集会でのトランプ大統領(2020年 ロイター/Jonathan Ernst)

<米議会の民主党多数、ドル/円は下落しやすい>

米議会選の結果を基準にみると、ドル/円が上昇した年の割合は、議会多数政党が上院・下院とも共和党では50%、民主党では30%、両院で異なる「ねじれ」では55%である。議会が民主党多数の時にドル/円の下落確率が高いことになる。

両党を比較した場合、「小さな政府」を志向する共和党は自由貿易主義、「大きな政府」を容認する民主党は保護貿易主義とされることが多い。保護主義が強いと、米国の輸出を有利にするためにドル安を志向しやすくなるはずだ。例えば、民主党クリントン政権1期目の1993年─94年には、上下両院とも民主党多数だったが、米国は貿易不均衡是正のために保護主義政策をとり、日本に円高圧力をかけ、ドル安の進行を容認した。

議会が民主党多数の時にドル/円の下落確率が高いことには、保護貿易主義とドル安志向を反映した面があると思われる。

<共和党大統領の方がドル円は下落しやすい>

ところが、大統領選の結果を基準に見ると別の結果が判明する。ドル/円が上昇した年の割合は、大統領が共和党で37%、民主党で50%となり、共和党政権の時の下落確率が高い。

これは、共和党政権時に議会で民主党多数のケースが多かったからではない。上下両院ともに共和党多数の時のドル/円上昇確率は、共和党政権で38%、民主党政権で63%。議会がねじれた時は、共和党政権で43%、民主党政権で75%である。つまり、議会の多数政党にかかわらず、共和党政権時の方が、ドル/円の下落確率が高いのだ。

例えば、1981─84年の共和党レーガン政権1期目には、減税・高金利・ドル高政策が採られ、ドル/円が上昇した。だが、米経常収支が大幅に悪化したため、2期目の1985よこ88年には貿易不均衡是正を目指してドル安政策が採られ、ドル/円が下落した。

2001─2008年の共和党ジョージ・W・ブッシュ政権時には、ITバブル崩壊やリーマンショックによる米景気後退と金利低下があったため、ドル/円が下落した。そして、2017年以降の共和党トランプ政権では、保護主義政策を採用してドル高をけん制し、利下げ圧力をかけたことが影響し、ドル/円が下落した。

一方、1993─2000年の民主党クリントン政権や2008─16年の民主党オバマ政権では、そのほとんどの時期に米景気拡大と株高が進んだため、ドル/円が上昇した。

つまり、共和党政権では、保護主義政策が採られたり、経済環境が悪化したりしたことにより、ドル/円が下落するケースが多かった。一方、民主党政権では、経済環境が改善したことにより、ドル/円が上昇するケースが多かったのである。

実は、議会が民主党多数の場合にドル/円の下落確率が高いのも、保護主義政策がドル安に働いたことだけが原因ではなく、1990─92年や2008─10年のように米景気が悪化してドル安に働いたことも原因である。政権や議会の政策だけではなく、経済環境によっても為替の動きは左右されやすいと言える。

<政権・議会の民主党支配ならドル安とは限らない>

様々な政策で対立する共和党と民主党も、近年は中国に対して圧力をかける姿勢で共通している。したがって、今年11月の議会選挙で下院だけでなく上院も民主党が過半数を占めることになったとしても、保護主義が強まるとの見方からドル安に傾くとは限らないだろう。

共和党のトランプ大統領は中国に対する関税を引き上げたが、民主党バイデン大統領になれば、関税を維持することはあっても関税を引き上げることはないとの見方が市場で多い。大統領選でトランプ氏が再選された場合に、米中対立の激化を懸念して円高・ドル安に傾く可能性もある。一方で、バイデン氏が勝利した場合には、米中対立の緩和を期待して円安・ドル高に傾く可能性もある。

こうしたことから、たとえ政権と議会が民主党支配となっても、ドル/円が下落するとは限らず、上昇する可能性もあるだろう。次期政権がどんな政策を採るかも重要だが、経済環境の良し悪しによってドル/円の動きは左右されやすいとも考えられる。

<米大統領選後にドル/円は上昇傾向>

今度は時系列のデータを示したい。1973年以降のドル円を4年ごとに平均化すると、大統領選挙年は選挙前の8─11月に下落傾向となる。選挙結果と次期政権の政策が不透明なことが一因と思われる。ただ、選挙後の11─12月には上昇傾向となり、翌年の大統領就任年は、年前半を中心にドル/円が堅調に推移する傾向がある。選挙前よりも選挙後の方が、不透明感が解消して政策期待が盛り上がりやすく、リスクオンの円売り・ドル買いが優勢になっているためではないか。

今年のドル/円も7月末に下落した後は、104─106円台で低迷。先行き不透明感が円売り・ドル買いを慎重にさせていると言えそうだ。今年は新型コロナウイルスの感染抑制がリスクオンの条件となるだろうが、大統領選挙後に不透明感解消からドル/円が上昇する可能性はありそうだ。

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*亀岡裕次氏は、大和アセットマネジメントのチーフ為替ストラテジスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て現職。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

編集 田巻一彦

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up